土煙の中から勢いよくクリフは起き上がると、躊躇せずに地を蹴った。強化法術のおかげで、スピードもパワーもアップしている。だが、支援は長い時間、保たない。迅速に決着をつけねば。
 走りこみながら、大上段に斬竜刀を構える。
 接近しながら、両腕の黒剣を十字に交差させる。
 お互いがお互いの間合いに入った瞬間、それらは同時に振り下ろされた。
「おおおおおおおお!!」
 今度は、剣同士の拮抗はない。代わりに、数多の斬撃と斬撃がぶつかり合い、ぶつかり合い、ぶつかり合って、両者、またも退かない。
 二本の黒剣で数で攻めるジャスティス。それらを重い一撃一撃で、悉く押し返すクリフ。
 先程の静かな拮抗に比べて、今度の拮抗は嵐のようだ。
 そして、今度の拮抗は、先程に比べると数段、速く決着がついた。
「!」
 黒剣が、音を立てて砕ける。ジャスティスの両目に驚愕の色が浮かんだ。
 無防備な一瞬をクリフは、逃さない。全法力を最高速で練り上げるとそれを斬竜刀に籠めて、地面に突き立てる。
「ソウルサヴァイバー!!!」
 解放された法力が、無数の竜牙となって地面から溢れ出す。そして、ジャスティスに向かって文字通り牙を剥く。
「おのれ、人間!!」
 竜牙に身体を砕かれながらも、ジャスティスの瞳に憎悪と怒りの色が宿る。そして、それらは形を成して襲い掛かった。
 ジャスティスの頭部で瞬いた赤光<しゃっこう>が、地を舐める。
「――ぐおあっ!?」
 赤光は局所重複結界を貫き、クリフの肩と腕側面を焼いた。思わぬ苦痛と熱さに意識が途絶えかかるのを無理やり押し留める。
「(ま…だだ。まだ、負けられん! 死ねん!!)」
 脳裏に家族と仲間達と死んでいった者達が一瞬でよぎる。
 クリフは、斬竜刀を放り出して無意識に駆け出していた。全速力で。


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