ハートはピンクで描く朝の一コマ ―――――― 青桐侯也
「なぁB今日の予定は?」
「午前中授業午後バイト」

一緒に暮らし始めて2年が過ぎようとしている最早何度目か行ったか解からないやり取りで朝が始まる。
Aはこの上なくダルイ体を起こそうと腕に力を込めるが思ったよりも力が上手く入らない。

「じゃぁバイトの帰りに歯磨き粉とワックスこーてきて…ぅわぁ!!」
喋っている途中で布団の中からAのものではない腕がAの腕を捕らえたかと思ったらそのまま布団の中へ引きずり込んだ
もともと力が入りにくかったAの体は成されるがまま布団の中の自分の物ではない腕の中へ収められた

「買い物やろ?任せとけって!帰り買ってくるけん、俺も薬局用事あるし」

Aを捕らえた腕の持ち主BはAの髪を満足そうにその感触を楽しんだ
面白くなさそうにAはBを睨みながらも満更でなさそうに微笑むが、Bの胸板に顔を埋めBには決してその笑みは見せない
何故って…悔しいから

「お前何買うん?」

顔を埋めたままAは努めて声をいつものようなテンションに保つようにして質問した
つもりだったが、少々甘えたような声になっているのをBは黙っておきAの質問に答える

「昨日のでなくなったけんな、今日困るやろ?」
「…!…あ!!」

Bの含んだ言い方にAは、はっとし胸板から顔を上げ嬉しそうにBを見つめた


(なんやかんや言うてもやっぱこいつ…vv)


その笑顔にBも嬉しそうに言葉を続ける

「な?困るやろ?」
「うん!すげー困る!!」
「やけどなかなか買い置きしてないんよな!」
「そうそう!!Bお前よー覚えとったなぁ!…うん無かったら困るよな」
「やろ!俺って紳士やから中出s…」

少し調子に乗って格好つけたBの言葉をさらっと流してAは

「ラップ!ほうよ!!ラップが切れとったんよ!!サンキューなB!」

相変わらずのDo天然ぶりを発揮し、昨日の残ったおかずの皿をスーパーの袋に入れて冷蔵庫に入れた面倒くささを語っていた
Bは軽くショックを受けながらもAのしっかりしてそうでちょい抜けてるそんな所が可愛い訳で

「…ったく!良い度胸やなぁっ!」
「…!?…うっ…Bっ…ちょ…んんっ!!」

BはAの口を塞ぎながらAを組み伏した。ベットの軋みが大きくなって部屋に響く
だんだんと深くなってくるキスにAは答えながらも、Bの足を蹴って抵抗の意を示した

「はぁっ…なんしょんぞ!…おぃB!起きんと…」
「もー少しえぇやろ?A」

ニヤっと笑みを浮かべながらBはあの首筋に唇をあてる

「ちょ…おい!…B…ふぁっ…」

Aの白い首筋に新たに付けられた跡の周囲には、少し色の薄れた跡が散らばっていた
Bはそれらの色を蘇らせるかのようにA首筋に顔を埋める

「馬鹿…ちょ…もぅ…」
「A可愛い」

何かを企んだような、余裕のある笑みを浮かべBの手がそっとAの腹筋をなぞり、もう一度今度は少し乱暴にキスをした
Aの体温は上がりBからのじゃれるようなキスを幸せと思いながらも…


ゴスッ!!


「!!…っ…あ〜…」
A、Bの腹に渾身の一撃
不意打ちにきたあからの攻撃にBは身悶えながらも体勢を崩さないのが流石と言った所か


「あんな…B!昨日あんだけ…ぁ…ぁんだけ…///」
「ん?何だよ?」
「…あー!!もー!!知らん!知らん!!知らん!!!」
「んだよ〜ちゃんと言えって!」

Aは勢い良く力の入らない体を起こしベッドから降り散らばってる下着や服を拾い上げた
Bは苦笑しながらも洗濯場へ行くのであろうAを追いかける

「なーA」
「んだよシツコイ…」
「お前のパンツ」
「…ありがと」

体のダルイであろうAの代わりに棚の上の方にある洗濯剤を取るBの小さな優しさがAは凄く好きで
大切にされてるなと感じるとくすぐったいような気分になって

「B…」
「ん?」
「…」
「なん?」
「あんな…」

AがBの耳元で囁くとBは思いっきり幸せそうな顔をしてゆっくりAの腰を抱き寄せ耳元に囁き返す
互いの肌の温度が気持ち良くて温かい笑いが込上げる


1日が始まる

好きな人の腕の中から

優しさに包まれて

気持ち良い風

爽やかな日差し

あぁもうすぐ夏が来るね


「そういやB」
「あ?」
「お前買い物何があるん?」
「あー」
「あんまり無駄使いすんなよ?」
「…じゃぁなくてもいい?」
「何が?」

この数秒後真っ赤になったAにもう一発Bは痛撃的な一撃を受ける事になる




fin