__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[07.07.03] 

〜海月の放流〜 122


うつつ抜けた穴憎らし梅雨。
うつつ抜かす穴に暮らし中。


【月に揺さぶり起こされる】
寝ていたら唐突に足がつりそうになり、目が覚める。
カーテン開けてソト見やると、おぼろな月満つ。

部屋の灯りはつけず暗闇に手探る。
冷蔵庫の明かりがまぶしいほどに目が慣れれば
つかの間の月見酒。
よく冷えたチンザノを
ぼんくらな頭と、闇と、月に注ぎ込む。

いよいよ本腰入れて杯を重ねだす頃には
月はもうおらず。
呼び出しておいてそりゃねぇだろうよ。
ただひとり暗闇に取り残されてそのまま眠れずにゐる。



【カマキリのスナップ】
アルコホル過多と寝不足。
風に当たりたくてコンクリ堤防の50cm幅に昼寝している。
トントン起こす者がある。
「ちょいと、おまいさん」
薄目で様子をうかがうと一寸にも満たぬカマキリが
ひょいひょいと手首効かせて手招き。呼び掛けている。
「そんなとこに寝てると落ちちまうよ」
あんたこそそんな華奢なカラダでこんなとこよじ登ってきて危ねぇぞ。
そっとつまんで下に降ろしてやる。
まだ何か言いた気にクイクイ手先をかき寄せる。
なぁにいいのさ、わしは。
ここまで来ればもう落ちることもなかろうよ。



【眠れぬ夜は夢】
眠れずに徘徊。波打ち際を彷徨。
隠し持ったポケット瓶をちびり舐めながら
光の無い暗い浜をざくざく耳で眺めている。
重い空が落ちてくる。
月も星も雲も一緒くたに搾って落ちてくる。
海の舌べろがそれをすすり上げる。

なるほど、そういうことかよ。
独り合点して海に気付かれぬうちにそっとその場を立ち去る。
しとしとと肩をたたかれても決して振り向いてはいけない。



・・・(つづく)[07.07.03]Tue...Qurax2海月(=)彡
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