__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[03.11.01] 

〜海月の放流〜 046

□前回のあらすじ:
天候の目まぐるしい変化に気分は振り回され精神的にまいる。/
寒すぎて真夜中。月光の下。
眠れなくなるととりとめもなく思考の連鎖ゲーム。/
突然カラダが軽くなる。じゃんじゃか歩けて疲れも少ない。
周りの景色も色彩も広く遠く鮮やかになる。重心位置をちょっと変えただけ。
すごい!安定でも不安定でもなく“非安定”。
これだ!これこそが理想的な歩き方、生き方、在り方、居方。/
自炊温泉宿でのんびり湯治。/
賢治さんを感じにゆく。月が銀河鉄道と同じ速度を保って併走。/
イーハトーブでは精神的にも肉体的にも大きな変化。


●『フリダシニモドル - 岩手県→宮城県→東京→神奈川の巻 -』

(※)前回の最後に「次は仙台からの発信だぁ」と書いたけど。
今、仙台ではありませぬ。(別に気にしてるヒトもいないだろうけどね)

さて。

僕は。自然Natureはこわいものだと思う。海も山もこわい。津波、落雷、台風、 地震、噴火ばかりがこわいのではなく。日々の天気の変化、雨風。抵抗するこ ともできず翻弄されるばかりの自然Natureがこわい。
(ただし。こわいからといって嫌いなわけではない)

「自然体」で生きるなんてのも思うほど簡単なことでもなかった。
自然Natureの中で自然体でいられるにはあらゆることに瞬時に対応できるだけ の反射神経(と度胸?笑)が必要。意識的にやろうと思うと途端に疲れる。

そのような気を使わずに済む状態(人に守られて安心して寝てられる環境)に なると。自然Natureの中でどれだけ気を巡らし気を放っていたか、時には気配 を消すことを試みたりしてたかに気付く。意識的にしていたことと無意識にし ていたことと・・・。

漁師は海がこわいだろうか?・・・ 猟師は山がこわいだろうか?・・・

ヒトの視点はしばしば自然Natureを“対象/対照”として見る。
それは暗に「人間(人工)と自然」という対比の中でNatureを捉えている。
切り離して捉えている。

だから。人間の予想や期待に反した挙動は脅威/驚異となる。あるいはそれを もって“悠久の”“偉大なる”との冠がつくことになる。

自然Natureが刻一刻と変化し続けるのに呼応するように僕は精神的にも肉体的 にも反応し揺さぶられ順応していった。そして疲弊しきって脱力しきった時に。 気付く。
少なくとも僕のカラダは自然だ。僕が自然Natureそのものだったのだ。

僕は自然Natureの中に身を投じているのではなく僕自身が自然Natureなのだ。 僕のカラダにはあらゆる自然Natureが形を変え練り込まれていた。

海のように満ち干し山のように座し魚のように跳ね獣のように喰らい樹木のよ うに循環し雲のように流れ嵐のように叫び風のようにうたい太陽のように熱く 月のように変化(へんげ)し。そして。クラゲのように丸見え。(笑)

自然Natureに対して、秩序や法則や均質を当てはめようとするのは人間の勝手 ではあるが。
自然Natureは無秩序で偶発的で偏っていることこそが自然なのだ。
整列された川や森など、ない。自然Natureに直線や直角は似合わない。

僕は旅を通して、カラダから自然を学んだ。
僕が自然をこわいと思うのは。僕自身の未知と無知に対する武者ぶるいなのか もしれない。ならば。ゆけばいい。

いったん自転車の乗り方を覚えてしまえば何年たっても忘れることはない。
カラダが覚えている。

街を離れ山にこもる必要はなかった。(必要とか不必要とかとは関係ないか)
自然は僕の内にある。僕はどこに居ても何をしていようとも、自然だ。

・・・という訳で街に帰ってきた。

次回からしばらくは街での気付きについて、まただらりら書くことにしよう。


・(089)10/14/2003/岩手県・一関市--宮城県・東和町(運動公園)/
宿チェックアウトしたら歩き出してはみるものの。どの道を行こうか?まっす ぐ内陸を進んで仙台に行くのもつまらんかな。芭蕉も訪れた松島に寄る方向で 進もうか。

金に余裕がもうない。メシは食パン。100円あれば一日は喰える。まだ常備食 と酒はあるのでなんとかなる。

カラダの重心の最適な位置をなかなか再現できない。バックパックをその位置 にキープできない。このザックももう14年くらい使っててあちこち壊れてきた。

なんだか旅を継続するのが厳しくなってきたなぁ。いろんなところに終わりの 暗示。

今夜はまた雨か。寝所を探して歩くのもなんだかもう疲れたなぁ。

日が暮れる。地図を頼りに運動公園を目指す。暗闇に野球場。三塁側ベンチで 今日は寝る。


・(090)10/15/2003/宮城県・東和町--河北町(河川敷公園)/
夜明けとともに起きる。あぁ、日の出も日没も早くなったもんだなぁ。北海道 の道東よりも西へ進んで来たってことと季節の変化と。

北上川に沿って南下してゆく。雨が降ったり止んだり。道端にへたりこめず休 憩もままならない。歩道のない狭い道。ダンプが数センチ先をすり抜けてゆく。 もう疲れた。

夕焼け。今夜は雨は降らないみたい。河川敷公園の屋根付ベンチで寝ることに する。


・(091)10/16/2003/宮城県・河北町--石巻--松島海岸→利府町/
今日は天気がいい。
歩道もあるしサイクリングロードもあるし。ダンプの恐怖を感じずに歩ける。

地図では細かいところまで道がわからなくて、光ケーブル埋設設置工事をやっ てるおじさんに道を訊く。おじさんとおばさん、夫婦だった(後で知ったがそ の工事会社の経営者だった)。休憩待機中だったようでしばし立ち話。今日は どこまで行く?泊まるとこ決めてないなら家に泊まるか?もし松島海岸までた どり着いたら電話しろ。近くだから迎えに行ってやるよ。と、電話番号教えて もらう。おおっ、ありがたい。

実際に泊めてもらうかどうかは歩きながら考える。気をつかわれるのも恐縮し すぎて居心地悪いし。それより松島までたどりつけるのかなぁ。もし早めに松 島にたどり着けたら船で塩竃まで渡るってのも考えてるんだが。

日暮れ間際。雨降り出した。そして。松島。
観光客たちが突然の雨に駆け出す。芭蕉の時代はどんなだったのかな。
松島だ うわっ松島だ 松島だ
海!青森以来3週間ぶりの海なんだなぁ。だいたいまっすぐ南下してきたけど なんか長い道のりだったなぁ。海を見た安堵感とともに急激に疲れが襲う。
もう暗くなっちゃったし、あのおじさんとこ電話して泊めてもらおう。

駅で電話すると15分ほどで迎えに来てくれた。家は利府町。利府町は去年ワー ルドカップの会場にもなったとこ。仙台も充分通勤圏にあるため近年急激に人 口が増え全国的にも珍しいくらい今時新たに学校も増えてる。・・・などと教 えてもらううちに到着。

まずはお風呂へご案内!(笑)
さっぱりしたら、おじさんの馴染みの店へ呑みに繰り出す。
おじさんの友人たちの輪に混じって生ビールで乾杯!牛たんをつまみうまい日 本酒へも移行。
うひゃあ、うれしいなぁ。しかし。僕はここで何してんだろなぁ。まぁいいか。

酔っぱらって帰ればあったかい布団。極楽ごくらく。


・(092)10/17/2003/宮城県・利府町→仙台市/
おじさんおばさんがまた早朝から現場に出るので途中まで車に乗せてもらう。 途中どころか仙台市内に入っちゃった。
別れぎわ餞別までもらっちゃった。ほんとにありがとうございましたぁ。

さてと。仙台に来ちゃったよ。市街中心地までは2時間もあれば行けるなぁ。 といってもまだ朝早い。仙台駅まで行ったところでそれからどうするか?
あっけなく到着しちゃったもんでそれからどうしようかまったく考えてない。

駅近くにネット屋があったのでそこでコーヒーでも飲みながら情報集めてみる か。

仙台の街は大き過ぎてとても歩いて全体を把握しきれない。それは例えば「東 京」と一括りで特徴を言い表せないのと同じだ。
あまりにもデカすぎて人が多過ぎてなんだか人酔いしちゃいそうだ。

この街には何日か滞在して街を散策する気でいたけど。他の選択肢もあるなぁ。 山形に抜けてもいいし。福島、茨城には親戚や友人いるし。

船で名古屋に渡ることも可能なんだよなぁ。そしたら去年お世話になった三重 県の上野屋さんとこでまた寺田町さんのライブも観られるんだよなぁ。

迷うぅ。・・・仙台駅で4、5時間もうろうろしながら散々悩んで。残りの金 の問題と旅を続けるモチベーションと寒さや疲れやあれやこれや。

もう帰ろう、東京へ。電車、新幹線ってのもあるけど(ここは駅!)、高速バ スってのもある。夜行もある!そうかそうだ。仙台にはまた来ることもありそ うだし、もう今日泊まることもなく今夜の夜行バスで帰ろう。宿泊費は高いし。

バスは24:10発。まだまだ何時間もある。逆に期限付きだから動き回る気にな ってきた。よし。街を歩こう。大荷物はコインロッカーに突っ込んで。路地か ら路地へあてもなくうろうろ。身軽になってみるとなかなかおもしろそうな街 だな。

街を楽しみつつも心は東京に移行しつつある。戻ったらあれやこれややりたい こと山盛り。そして。戻ったその日は東京で寺田町さんのライブもある!
なんかわくわくしてきた。
呼び込みの声も聞こえないくらい浮かれ気分。あ、メシ喰ってないや。仙台と 言えばやっぱり牛たん?でも。昨日ごちそうになったしいいや今日は。路地裏 の安食堂に飛び込む。
ライス中150円、味噌汁70円、おかず60円、焼魚200円、刺身200円など。 よっしゃあ、ビールも頼んでひとまず今回の旅最後の晩餐。ぷはぁ。いろいろ あったなぁ。

外は寒い。バスの時間までまだある。歩道橋の上から街の灯りと車や人の流れ を眺めてる。と。ビルの谷間から月!いつもありがとう。


・(093)10/18/2003/宮城県・仙台→東京/
東京駅--(日比谷公園)--新宿駅++西荻窪--吉祥寺(井の頭公園)++豪徳寺++荻窪
日付がかわった直後、バスに乗り込む。酒の酔いとともに眠気もやってくる。

道中、何度か高速のパーキングに寄って休憩。ほとんど寝てたが。最後の休憩 の時だけ外に出た。もう埼玉だった。あと30分もすれば東京駅に到着か。

東京八重洲口。まだ昨夜からの酔っぱらいがうろうろしてるような午前5時。 無事到着はいいけれど。これからどうしたものか。途方に暮れつつ駅構内を行 ったり来たり。
とりあえず今、着てるもの全部洗濯したいなぁ。

駅ではのんびり座り込んでもいられないし早朝すぎるし。ヒマだし。東京の真 ん中って歩いたことなかったなぁ。っつうわけで。新宿まで歩いてみることに する。
有楽町から日比谷公園、国会議事堂、首相官邸初めて生で見た!、警備が厳し いなぁ。僕の格好むっちゃあやしいしやばいやばい(笑)。
(そういえばブッシュさん来てんだっけ?)

皇居のお堀横目に市ヶ谷、四谷。ビルがびっしりと立ち並ぶ街にひっそりと時 間の流れが違う古くからの瓦屋根の家がぽつりぽつり。なんだかおもしろいな。

そんな裏道を楽しみながら気ままに歩いてるともう新宿。距離にしたら10km に満たない。そうかぁ。東京サイズってこんなだったか。

新宿に着いたら電車に乗る。中央線は馴染みの路線。かつてのホームタウン・ 西荻窪に行ってみるか。銭湯やコインランドリーのことならよく知ってる。

あ、西荻、駅がずいぶん変わってる。あれま。ピンクの象はまだいるね。
銭湯のぞくが開店までまだまだ時間がある。もう一軒行ってみるがこっちは臨 時休業。うーむ。

吉祥寺の井の頭公園で以前のようにぼけぼけしてるかな。
池を眺めながらコンビニで買った缶チューハイをぐびり。そうか、今日は土曜 だったか。家族連れなどでにぎやか。

雨降りそう。デパートに避難、雨宿り。あったかいなぁ。ベンチでうとうと。 雨上がる。そういや吉祥寺にも銭湯あったな。行ってみるとちょうど開店した ばっかり。よかったぁ。コインランドリーもあるし。向かいには酒屋もある。

風呂上がりにはビール片手に洗濯待ち。乾燥機が止まると。ちょうどいい時間。 さて。豪徳寺にゆこう。

寺田町ライブ@豪徳寺:にないや
ライブ会場に到着すると顔馴染みたち。やぁやぁ。戻ってきちゃいました。

久しぶりのテラさんの生うたが沁みる。

ライブ後。しばし余韻に浸りながら呑んでると。
「海月くん、頭の後ろどうしたの?」えっ??手で触ってみると髪の毛とは違 う地肌の感触。後頭部、円形脱毛。ごっそり抜け落ちてる。!!!

好き勝手やってた旅なのにどこでそんなにストレスがあったのだろうか?
ヘビーな旅だったのかもしれないな。大きな「変化」についてゆけない時もあ ったからな。
しかし。ショックデカいなぁ。まさか禿げるとは。そう言えばいつからかヒゲ にも白髪が混じってたしなぁ。なんか浦島太郎な気分。

でも。浦島太郎と違うのは。僕の帰りを喜んでくれる人達がいたこと。一緒に また酒を酌み交わすことができること。

終電間際に荻窪へ移動。テラさんたちと打ち上げ、呑み直し。

今日はテラさんちにお泊まり。ありがとう。テラさん&ともえさん。
朝焼けを見て、またちょっと呑んで、眠くなった人から寝る。


・(094)10/19/2003/東京都・荻窪++品川/
今日はもう歩かなくていいのだ。という安心感からか、久しぶりに爆睡。
朝焼けに寝たのに起きたら夕焼けだった。ははは。
そろそろ出ようかな。ぢゃ行きまーす。また呑みましょうね。ありがとう。

品川の事務所では斎藤が待ち構えててくれる。北品川商店街で無事帰還の祝杯 でもあげますか。日曜なので閉まってる店も多いが、一見、寂れたような中華 食堂が開いてた。これ、この感じの食堂って好き!

ビールで乾杯!料理もイケル。あぁ仕合わせ。大満腹。


・(095)10/20/2003/東京都・品川--神奈川県・相模原市・淵野辺/
月曜。社員も全員事務所に勢揃い。やぁ。戻ってきましたぁ。あいさつしたら 奥の部屋に引っ込む。仕事の邪魔しちゃいけないしね。

みんなで昼メシ喰いに出たら僕はそのまま新しくなった品川駅周辺見物。
へぇー、こんなんなったんだぁ。

夜。わたるが仕事上がりに車で相模原から品川まで迎えに来てくれた。わたる は斎藤とは数年ぶりの再会なのでしばし話が盛り上がる。

ぢゃ、そろそろ“帰り”ますか。夜のドライブ。徐々に懐かしい町並み。町田、 相模原。おおっ。帰ってきたよ。ちょうど3ヶ月。
前回丸々一年間だったのに比べれば期間的には短いけれど。濃い時間だったな。 大きな変化もあったな。カラダに変化が起こることに気付いたことは大きな収 穫だったな。

今日からまたわたるんちに居候、よろしく!明日からはしばらく寝所を探し回 らなくていいんだな。寒さに眠れぬ夜を過ごすこともないんだな。雨の心配を しなくていいし。重い荷物背負って歩かなくていいだな。

あぁ。ただいま。

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・・・・・・
それから10日間。
ここでしばらく本腰入れて暮らすために。新しい靴と折りたたみ自転車と中古 ノートパソコンを買った。バイトも探さなきゃならんが。もうちょっと“生活” へのリハビリが必要みたい。とりあえずわたると毎晩大メシ喰らって体重を戻 していく。


・・・(つづく)[03.10.31] 海月
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