__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[03.09.16] 

〜海月の放流〜 043

□前回までのあらすじ:
気に入った釧路離れ、東へ。/予報聞くと僕が歩いてる地域だけが寒い。/
日没後も寝場所がなければ歩くしかない。暗闇に車線の白だけが唯一の道標。/
ラジオから様々なニュース。批評めいたことあれこれ考えてても。
延々と続く牧草はあおく広がり雲は悠々と流るる。
路上では皆平等に死んでる。/
オホーツク海。ノサップ岬。間近に北方領土。「最東端」か。
たどりついたら歩く気力低下。


●『空と大地 - 北海道・根室→知床→網走→サロマ→北見→阿寒の巻 -』

北海道のイメージ。広大な大自然。牛馬熊。うまい食べ物。寒い・・・。
とりあえずはこんなところか。はずれてはいないと思う、たぶん。
自然も人もスケールがデカい。こっちに来てから直接巡り会って実感。
うんざりするくらい広いし。豪快な人っているもんだ。

広大な農場には巨大なトラクター。車は一人一台。ちょっと回覧板回すのにエ ンジンキーをひねる。10kmも続く直線道路。一般道路でもみんな当たり前に80 キロ以上で走る。

雄大な土地で悠久の時をのんびり過ごす、という悠長なこと言ってる人はほと んどいない。短い夏はあっと言う間に過ぎ去りすぐに1年の半分を占める冬が やってくる。

余裕なくせかせかしてるわけでもないけれど。「生活」は常に何かに追われて いるようだった。金に。時間に。季節に。年老いることに。
(しかしまさか自分も死ぬなんてことはほとんど誰も考えてない)

これは北海道に限ったことではないだろう。
僕が生活というものとは違うレイヤーで動いている無責任な位置にいるから感 じることなのだろう。

地平線・水平線まで広がる大地・大海原。それが広大であればあるほど。
空の広さを感じた。空はもっともっと大きく果てしない。
ましてや人間がどんなに巨大なものをつくったところで空にはかなわない。
どこに行っても空が一番大きい。

地べたを這うような徒歩の道。ちっぽけだ。足下しか見てない。
生活とは無縁ではないが生活にはなってない最小単位の僕が一人歩いている。
けれども時々。僕は空の高みから鳥瞰する。空をも見下ろす高みへゆく。

あぁ。空の下ではなく、空の中にいるんだ。僕らは空の住人だったんだ。


・(040)08/26/2003/北海道・根室市--初田牛駅/
どんより曇り空時々霧雨。黙々とただただ歩くあるく。
10kmも歩けばすぐに足裏痛くなる。

50m先に二羽のタンチョウ発見!こんな時期にいるのかぁ。

100m先にはシカ。牧場のウシは歩いてる人間が珍しいのか一斉に寄ってきて柵 をはさんで横を併走(牛歩どころではなく距離が離れると闘牛ばりに爆走)。 イヌは僕を発見すると(姿が見えないうちから?)なぜか十中八九吠える。

日没後の薄暗がりをへろへろになりがらなんとか無人駅に到着。旅ノートなる ものが置いてあり、この駅を訪れた他の旅人の様子が興味深い(以前泊まった 糸魚沢駅にもノート置いてあったな)。
まだ直接出会ったことはないけれど、歩いてる旅人もいるようだ。書き込みを 読む限り僕なんかよりもかなりハイスピード&タフ。すごいなぁ。

終電19:45。寝床セッティングして晩メシ喰って強い酒を流し込む。
この駅には周りに民家や店などまったくなく、利用客なんかいるのか?っつう くらいの秘境駅の様相を呈している。20:50突然自動消灯。うおっと。
そろそろ寝るか。酔いが回るまでロウソク灯してもうちょっと呑む。

真夜中1時頃、突然目覚める。別に危険を察知したわけでもない。酔いがさめ てしまって寒くなったからだろうか。しばしラジオを聞きながら目を閉じて横 になり続ける。


・(041)08/27/2003/北海道・根室市・初田牛駅--別海町・奥行臼/
寝起きは体温下がってるし朝の気温も下がってるので寒さでカラダが硬くなっ てる。なにか甘いものを口に放り込んでやらねば。そして水分補給。こうして ようやく立ち上がれる。まるで儀式のような体温上げ行動。

駅舎は窓ドアが閉められるので雨風が直接吹き込むこともないが、窓の外の木 々を見るとずいぶん強い風が吹いてる。どんよりとした曇り空。予報によれば かろうじて雨は降らないらしい。
雨はつらいが雨の時にはしのげる場所でじっとしてることが多いのでまだいい。 強風しかも向かい風ってのが一番厄介なのだった。風おさまらないかなぁ。

始発7:01。車で送ってきてもらった女子高生が二人乗り込む。この駅利用する 人はちゃんといるんだなぁ。でも。汽車に乗るにも車で駅に来なきゃならない とは。
次の汽車は9:00。ローカル中のローカル駅なんだなぁ、初田牛駅。でも小綺麗 にしてあるしコンセント生きてるし居心地は悪くない。次の汽車来るまで日記 でも書いてようっと。

ラジオCM「旅をしない日常生活は水を補給しないマラソンのようなもの」
・・・か?水を補給しない旅はなんだろう?マラソンのような日常生活。(笑)

左足裏の水ぶくれをかばって歩いてたら右足首が痛くなる。こまめに休憩して、 今日は午後5時には歩くのおーしまいっと。レンガづくり温室のようなあった かいバス停を発見したから。
近くに文化財になってる昔の駅施設などがあり、公園やトイレ、水道もある。 今夜はここで早めに寝よう。

今夜は火星が地球に最接近する日らしいが・・・空はくもってきてしまった。 まぁまだこれから一ヶ月くらいは明るく見られるからあわてることもないな。


・(042)08/28/2003/北海道・別海町・奥行--野付半島/
4時台5時台と目覚めるが6時までは寝直す。水道で手足顔頭洗ってさっぱり する。8時歩きだす。

歩いてたら。「移動回転寿司ポルシェ」と車体に書かれたバスが駐車場にあっ た。お座敷列車みたいな感じなのかなぁ?窓には障子がはまってた。それにし てもなぜポルシェ?

車にひろってもらってワープ。野付半島に渡る船乗り場で降ろしてもらったら、 勢いですぐにこれから出航するという船に乗ってしまう。

お客は僕、お一人様。貸切状態。海上をハイスピードで飛ばしても曇天模様で 寒すぎて爽快感はないが。なんか船っていいな。船員が妙なジェスチャーで海 上を指差す。あ、アザラシだ!泳いでる浮かんでる。こんな近くで。船は速度 を落とししばしエンジンを切って見物させてくれる。

野付半島に上陸したら観光客がうじゃうじゃいて、なんかちょっとうんざり。 皆、足早。ウォーキング大会かよ。

寒いなぁ。ここはトドマツが立ち枯れ白骨のように横たわり殺伐としてて荒涼 感高し。天気もそれをある意味ものすごく演出してる。

ネイチャーセンターという自然観光レストハウスで展示物ゆっくり見学。あ、 国後島見えた!ここからわずか16kmしか離れてないんだって。

あったかいシーフードラーメン喰って(うまかった)早めの晩メシにする。

ここの閉館までのんびり数時間過ごす。近くの展望台で寝られそうなのを確認 した。しかし屋根はあるが吹きっさらしで寒い。ので。暖房入っててあったか いここでぎりぎりまでねばる。

寝床セットしたはいいが。海風強く冷たくむっちゃ寒い。アルコホールで暖と って19時に一気に寝る。

真夜中、雨降り出す。強風のため屋根あっても意味なし。びしょぬれ。逃げ場 なし。ビニールシートにくるまってふて寝するしかない。早く朝が来てほしい。


・(043)08/29/2003/北海道・別海町・野付半島--標津町/
9時半まで雨続く。なんもかんもイヤになる。降り込む雨に濡れたものをタオ ルで一つひとつ拭いてザックに詰めてく。はぁ。こんなとこでまったく何して んだか。やるせなさ満点。ほんの一瞬、リストカットなんぞという言葉が浮か んだ。やべえ。いかんいかん。

雨少し弱まり霧雨状態に。動くなら今だ。カッパ着込んで野付半島の砂州を歩 きだす。付け根まで15km。長い。

2時間歩いてようやく雨もおさまる。左足の筋が痛む。足ひきずり気味に標津 の街めざす。今夜は宿に泊まろう。

夕方やっと街に入り食料調達。また雨降り出す。観光案内所で安宿2600円を紹 介してもらって、なんとかたどりつく。

すぐに風呂に浸かってようやくホッとする。一晩で疲れと痛みがひいてくれな いものか。

TVで世界陸上見始めたら寝られないぃ。とりあえず照明は消してTVだけつけて フトンに入る。

うわっ寝ちった。ライブ映像でその瞬間を見るの逃したぁ。リプレイで5amに 見た。男子200m決勝。スエツグ銀メダル!すげぇ。


・(044)08/30/2003/北海道・標津町--古多糠/
5amにTVに夢中になってる頃。窓が妙に光ってる。何?朝日!海から昇る太陽。 おおっ。久しぶりにいい天気になりそう。安心していったん2時間ほど寝直す。

窓解放。まぶしい青空。うれすぃ。昨日濡れたものを出発までの束の間干して おく。

9時出発。Tシャツ一枚でも清々しく気持ちいい。海の向こうにくっきりと国 後島が見える。歩き始めてすぐ標津川。川原が気持ちいいので濡れたもの干し がてらのんびり景色眺めてる。知床の山々、雄阿寒岳、雌阿寒岳もくっきり見 える。
順調に歩けば二日でラウスまで行けるだろうが。せっかくの天気、あわてるこ ともないや。

もはや目や耳はただのフシ穴でしかなかった。何も見てない何も聞いてない。 もちろん音や映像は絶え間なく容赦なく飛び込んでくる。しかしそれは脳で処 理されるにはいたっていない。時々思い出したように感想を“言葉”で変換し 脳は仕事を終える。
感動など、ない。言葉にした時点で全てが陳腐化し終わっているのだ。そして 言葉にすることだけが突出し感動を強要脅迫する。ただ切迫感だけで、「感動 せねばならぬ」という自己正当化の強迫観念だけで物事を処理してる。ウツロ だった。ヌケガラだった。カラッポだった。

しかし。中身はないが器ではあった。皮一枚残してかろうじて立っていた。 すべての事物はこの皮膚の内と外とで起こっている。確かなものは皮膚感覚、 ただそれだけだと言っていい。寒暖、湿気、風そして痛み。
ほんの1mm角の砂利粒を踏み込んだだけで全神経はそれに集中し脊髄から脳天へ と衝撃が貫く。太陽に焼かれた熱も運動による熱の蓄積も一瞬の突風がうばい 去る。触覚、皮膚の振動だけが唯一のものだった。内と外とを隔てる唯一の壁。 しかし。どちらが内なのか外なのか。もはやどちらであろうとどうでもよくな っている。壁=皮の内側が私なのではなく皮こそが私なのだった。

多くのモノを見、様々な音を聞いた。あまりにも膨大な量であり、即時に処理 などできていない。一手間も二手間もかけて“言葉”に変換などしていられな い。皮膚は常に熱をやりとりし痛みを伝え瞬時に反応反射を要求してくるため に手一杯なのだ。皮膚は外界と内部を隔てると同時に常に生と死の間に置かれ ている。

目と耳がフシ穴だからと言って、全てが右から左へ流れ去ってしまったかと言 えばそうではなかった。
皮膚を休ませ安全安心の内に緊張を解いた時、具体的には宿を得て風呂に浸か り適度なアルコホールとゆったりとしたフトンが確保された束の間の一夜。 夢などの形となってこれまで見聞きしたものが再構成されつつフラッシュバッ クするのだ。フラッシュバックする映像や音に秩序などなかった。むちゃくち ゃだ。意味など求めたくもなくなる。もし仮にたった一つだけそこに意味が込 められているとするならば。世界は混沌だということだけだ。要するに意味な んてないってことを突きつけてるにすぎない。

突き詰めて想う。“私”に意味は存在するのか?ない!存在るものは意味や理 由や原因ではなく、ただ今ここに居る一枚の皮。それだけだ。今日までのとこ ろはまだ「生きてる皮」である。それだけで充分。けれどそれで満足しきって る訳でもない。まだその先の段階が待っている。まだたどりつけないが。 たどりつけるかどうかは今日は問題ではない。たどりつくべく振動しているベ クトルであればいい。

空腹はいつも思考と歩行にブレーキをかけやがる。満腹は全ての停止を命じて くる。その挾間で常に揺らぐ。
おいしいものを食べてしあわせになることもある。それは生の実感なのだろう か?僕はむしろ空腹感にこそ生きてる証があるように思える。生きてる、とい うより「生きたい!」という切実なパッション。

などとほざいてるうちにもう昼か。今日はほんとにいい天気。ザックにしのば せたパンでもかじってから、歩いてみるか。

Tシャツ一枚でも暑い。今頃になって夏気分。もう8月も終わるがバイクや自 転車のツーリストはまだ目に付く。雨が降っても歩きたくないが天気良くても 歩く気になれない。こんないい天気に無闇にがんばったりしたくない。
のんびりゆこう。どこか雨風しのげる場所さえ見つかれば距離に関係なく今日 はおしまいにしよう。

で。午後4時。今日は3時間7kmくらいしか歩いてないがログハウスのバス停 があったのでもう今夜の寝所に決定!近くに民家もなく人が来る気配もない。 クモの巣、砂まみれだが小型ほうき(釧路の100円ショップで購入)でちょちょ いと掃除したらほらっ綺麗。ここはドアがないので夜は寒いかもしれないが屋 根、壁あるしなんとかなるっしょ。それよりこのログハウス(四畳半くらい) が居心地がいい。国道を爆走する車の音がなければサイコーなんだがなぁ。

日が落ちて19時にはもう寝る。

寒さとケモノの気配で夜中何度も目が覚める。が。とにかく寝るしかない。


・(045)08/31/2003/北海道・標津町・古多糠--羅臼町/
4:47am起床。いつもなら二度寝三度寝するところだが寝不足感もないので飛び 起きる。いつでも動ける準備して軽く朝メシ喰って一服。今日から知床半島に 進む。どこまで行けるか。ラウスまで36km。ムリムリ。途中、野宿できそうな 所があれば距離に関わらず歩くのやめてもいい。

オンコ公園。公園と言っても施設らしきものはなく林間にちょっとした緑の広 場があるだけだった。森の中のちょっとひらけた所って感じ。あっ、ベンチは あるのか。朽ちて土に還える直前って感じだけど(笑)。
誰もいない。空以外には閉ざされた空間。水と食料とテントがあればキャンプ するのにちょうどいいんだが。あいにく水も食料も底つきそうで、テントは元 から、ない。

日の当たる所は暑いねぇ。今日は裸でもいいくらいだ。残りわずかの食料かじ ってパンツ一丁でヒルネ。

街まではたどりつけそうにないがもうちょっと進もうか。羅臼峠を越えたら無 料の「自然と緑の村キャンプ場」があった。テントはなくても水は補給できる。 今日はここで落ち着こう。

BBQコーナーには屋根がある。そこで寝られるか。近づくと先客。おっちゃん が一人酒飲んでる。がそのうち多数の人間が集まってくる。聞くともなく耳に 入ってくる話によるとどうやらシャケバイ(シャケの捕獲・加工のバイト)の 仲間同士のようだ。宴会が始まってしまう。こりゃここはだめだ。退散。少し 離れて本読んだり日記書いて過ごす。

集団とか仲間同士の集まりは部外者の僕にとっては最も近付けない人達だ。
共通の話題もないのに作り笑いするだろう自分が一番イヤだから。

ラウスの街まで12km。明日は街で宿に泊まろう。

夕焼け雲に三日月!空が広いなぁ。日が落ちたら一気に寒くなる。ううぅ。
今晩耐えられるかなぁ。

21時。宴会は終わり騒々しい連中は去った。夜露に濡れた荷物をかかえて屋根 の下に入る。これでなんとかしのげそうだ。


・(046)09/01/2003/北海道・羅臼町/
4時半。カラス達が屋根に集まってきてやかましさに目覚める。あっ今から日 の出だ。これを報せてくれたのか。3Q。国後島の向こうから太陽が昇り始める。 思わず手を合わせる。おはよう。冷え込む朝だが太陽見たら血が熱くなりぐっ と体温が上昇してゆく。今日もいい天気になりそうだ。朝日を浴びながらキャ ンプ場内をぶらぶら散歩。顔洗ってさっぱり。清々しい朝。今日から9月か。 夏休みの旅行者は少なくなるだろう、か?

昨日は一日ずいぶん粗食だった。その反動からか、歩き始めてやっと見つけた コンビニでどっさり喰らう。朝から夏の暑さのためビールなんかも呑んじゃう。 うひひ。

羅臼に来たら是非とオススメされてた宿があったのだが。そのすぐ近くに「夕 食食べ放題」と看板掲げてるライダーハウス発見。うー迷う。まだ午前中。羅 臼の街や展望塔、キャンプ場など見てから考えるか。望郷展望台からは羅臼の 街と海そして国後島もよく見渡せる。日陰の芝生を見つけて昼メシ&ヒルネ。 のーんびりの一日。

明日は知床峠越えてウトロまで行けたらいいな。しかし。距離33km。それだけ でもキツイのに海抜0mから740mまでうねうねと上って下りてというハードロ ード。できるか?夜明けとともに出発じゃないと峠道で野宿そして熊出現とい う事態になりかねない。知床は北海道でも最も多く熊がいるところらしいし。 今日はのんびり体力温存して体調整えて早く寝るべ。

宿泊500円+ジンギスカン食い放題1000円のライダーハウス「いっぺん来て見 なが」に行ってみる。一応フトンはあるのかぁ。今日は客少ないのかなぁ。 16時半の時点では誰もいない(宿主すらいないが勝手に上がって休んでてと紙 が貼ってあった)。

夜になって最終的にはバイク3人自転車1人そして徒歩僕1人。いろんな種類 の人が集まったなぁ。すぐ隣のセイコーマートでビール調達(&ついでに会員 証もつくっちゃう)してきてジンギスカンとタラのフライをたらふくいただく。 うまいぃ。うれすぃ。んもう腹はちきれそう。

食後は旅人同士、話がはずむ。そのうちの自転車ボーイと妙に盛り上がり真夜 中まで二人で呑み語る。

1:38am寝る。明朝は夜明け前に起きなきゃならんのになぁ。てへ。


・(047)09/02/2003/北海道・羅臼町--(知床峠)--小清水町・浜小清水駅/
3時間しか寝てないが。しかも酒残ってる感じでホゲホゲだが。なんとか起き る。二度寝しないうちに出発。海から朝日。今日もいい天気になりそう。

昨夜調子に乗って喰いすぎて腹の調子悪し。

さぁいよいよ峠道ってところでデカいムク犬を乗せた車からおっちゃんが声か けてくる。「おいっ!どこまで行く?乗ってけ」うほっ。こりゃ助かったぁ。 へたすりゃ今日一日で峠越えは厳しいかと思ってたから。モコモコのムク犬に は最初散々吠えられたが走り出したら馴れたのかすごくおとなしくなって、か わいいやつ。

所々観光見どころでは車を停めてくれたりしながら快走。
このおっちゃんは山岳会員であり美幌辺りでホテルや居酒屋を経営してるとい う。ほぉ。地元の名士みたいな人なのか?しかしざっくばらんでぶっきらぼう だけどかっちょいいテンガロンハットかぶってイカスおやぢだった。

あっちゅう間に峠越えてウトロからさらにオホーツク海沿岸を走り斜里町に入 る。ここで降ろしてもらう。

羅臼から一気になんと68kmもの大ワープ。歩きだったら確実に三日はかかっ てたところだ。しかもまだ朝7時。すげぇ。
ちょうどセイコーマートがあったので昨日つくった会員証を早速使って朝メシ 調達。

さてと。網走まで40kmかぁ。今からならその中間地点まで20kmくらいは歩け そうだな。よしっ。

歩き始めたはいいが天気良すぎて熱い路面。延々と続く直線道路。寝不足。そ して腹の調子は悪い。んもうフラフラ。

昼頃バス停で一時間睡眠とってなんとか体調復調。ちょうどいいタイミングで 無人駅と道の駅が合体した施設に16時半到着。終電行っても多少人の出入りは あるかもしれないけど、充分寝られそうだ。隣接のスーパーで晩メシとビール 調達して。今日一日の大移動と夕焼けに乾杯!

あっそうか北海道の家って窓は二重サッシになってるのが標準だけど「雨戸」 ってもんがないなぁ。もう一つ異文化なのはどんな家にも「煙突」はデフォル ト。

ササガワミワ「ワライ」。いいうただなぁ。
ハナレグミ・ナガズミタカシがラジオに出てる。いい!


・(048)09/03/2003/北海道・小清水町・浜小清水--網走市/
4時半起床。知床から昇る朝日を駅のホームで浴びる。今日もいい天気。
メシ喰って6時前には出発。ひんやりする朝だが。山なみ越えてオホーツク海 側はあったかいようだ。

幅もたっぷりある歩道をずっと歩ける。夏の陽気。Tシャツ一枚。

街に近付きやっと電波通じる。メールが大量にたまってた。

あと数kmで網走の街中心。宿にチェックインには早すぎるし海辺でヒルネ。

網走駅の観光案内の人はとても親切。宿確保。15時宿入り。即洗濯&風呂。さ っぱりしたら。街をブラつきスーパーで食料調達。イカの塩辛売りのおっちゃ んに声かけられる。歩いて旅してることを話すと1000円で売ってる塩辛パック をタダでくれた。うれしい。ありがと。

部屋に戻ったらゆっくりメシ&ビールそして塩辛味わいながらテレビに釘づけ。


・(049)09/04/2003/北海道・網走市/
ゆっくり起きてあちこちにメール返信。

午後。無料でネット検索ができると聞いたので図書館に行ってみる。自前HP更 新などの作業はプロテクトされててログインできなかった。調べ物を小一時間 して。本棚を物色。うとうとしながら近現代哲学総覧みたいな本を一冊読む。

網走にはなぜかロシア人たちがやたらにいる。昼間っからズプロッカ片手に公 園でたむろしてたり。スーパーの周辺でうろうろしてる。
僕も昼間っから酒呑んでだらりらしてる浮浪仲間みたいなもんだ?僕は集団に はならんが。

また弁当と酒買って部屋でテレビ見ながらのぼのぼ過ごす。テレビがあるとつ い夜更かし。


・(050)09/05/2003/北海道・網走市--能取湖畔/
網走川に沿って歩き始めると。あっあれが網走刑務所かぁ。赤レンガの塀と青 空と白い雲が川面に映り込み、山の緑、ちらほらと色づき始めた葉っぱが秋の 空気感を思い出させる。そうだそうだった。秋の始まりってこんな感じだった。

網走川から網走湖そして能取(のとろ)湖に沿ってサイクリングロードが続い てる。車やダンプの心配をせずに広い空仰ぎ見ながらのんびり歩く。この道は サロマ湖まで続いてるらしい。いいね、これは。明日もこれを進もう。今夜は サイクルパークなるパーキングエリアで寝ることにするか。野ざらしなので寒 いだろうな。

隣にさびれたドライブイン食堂があったので定食でも喰おうかと入ってみる。 「てっぽう汁(毛ガニ入り味噌汁)定食」は熱々でカニも手間かかるのでのん びりゆっくり黙々と喰らう。もう閉店みたいだけど。
店の人とその知人達が小上がりで飲んでる。「それだけじゃ腹一杯にならんだ ろ」と毛ガニのおすそわけいただく。一皿にカニ脚10本は乗ってた。えっ?す ごい!ビール欲しいな。注文して晩メシ延長。

歩いてること、今夜は隣の公園で野宿するつもり、と話すと。店の小上がりで 寝ていいぞ、とありがたい言葉。

ぢつは明日はこの店の先代マスターの四十九日なのだという。そのおやじさん もかつてよくこうして旅人を招き入れてたもんだと話してくれる。あぁおやじ さんに呼ばれたんだな。

定食喰い終わると小上がりの宴席に交じる。毛ガニ、北海シマエビ、ホタテそ して焼酎をごちそうになる。23時お開き。寝ましょ。

夜中雨。よかった泊めてもらえて。座布団敷き詰めて寝る。おやじさん、夢に 出てきてくれたらいいな。


・(051)09/06/2003/北海道・網走市・能取湖畔--佐呂間町・仁倉林道/
朝まだ少し雨残る。歩きだしたらすぐ止んだ。昨日の続き、サイクリングロー ドを進むとサロマ湖が見えた!ほぉ。くもり空ではパッとしないが、時折日が 射すと「サロマニアン・ブルー」と呼ぶらしい綺麗な青。

長い砂州で有名だがその先端までは徒歩でも行っちゃいけないという。途中ま では(車の乗り入れは禁止だが)レンタサイクルは入っていいらしい。500円。 うーむ。なんか観光かんこうしてて興味なくなっちゃったなぁ。やめとこ。
ネイチャーセンターでパンフ等もらって休憩がてら情報収集してると。ここか ら10数km先に「昆虫の家」という昆虫博物館?みたいなものが廃校を利用して やってるらしい。しかも。無料宿泊所もあることを知る。今まだ正午。行ける かもしれない。

仁倉峠車両通行止の標示。ガーン。徒歩で別ルートに迂回なんて丸一日かかっ てしまう。今日中にはたどりつけない。うーむ。車両じゃなきゃ通れるんじゃ なかろうかと突き進む。土曜だしもう5時だし工事作業はしてなかった。通行 止のゲートをくぐってダート道を行く。と。道が、ない。横に2本林道が走っ てる。この時刻に山林に入るのはこわいが。行く。

日没。かろうじて昇ってきた月明かりに救われる。しかし。いつ熊が出てきて もおかしくないムード。大ピンチ。びびりまくり。大声でうたうたい、ウィス キーひっかけながら歩く。20時。これだけ歩いて峠を越えられないとなると明 らかに道が違うのだろう。

ちょっとした広場に月光が明るく弾けてたのでここで野宿することにする。 月と星を仰ぎ見ながら酒の勢いで寝る。あぁお月さんありがとう。おやすみ。


・(052)09/07/2003/北海道・佐呂間町--(林道彷徨)--浜佐呂間/
朝はかなり冷え込んだ。カラダをおおっていたビニールシートは、外は朝露で びっしょり。内は温度差でびっしょり。4時半に明るくなりだし青空の気配。 シート広げタオルできれいに拭い、残りわずかの食料を一口二口かじって出発。

昼までになんとか山から脱出しなければ。しかし。歩いてもあるいても山を越 えられない。そして。林道も途切れてしまった。かつて人が通った痕跡があり そうだが、もはやこれは道ではない。人間に驚いた鳥が顔に直撃。痛っ。びっ くりしたぁ。
腰より深い草むらをかきわけ道なき道を進む。熊の足跡らしきものがあったり する。鹿が飛び去るように逃げてく。困った困ったこまった。どうする。どう なる。

とりあえず山の尾根まで上がり上から見下ろせる所に立つ。うわー。周り全部 山に包囲されてるぅ。まいった。ここはどこなんだ。どうすりゃいい。

天気がいいのと、まだ昼だということと、サロマ湖がちらっと見えたのでまだ ちょっと気持ちに余裕はある。あまりあてにはならない地図によれば、どの方 角にでも直線距離っで10kmも行けば町がある、少なくとも車の走ってる道路は あるはずなのだ。しかしそこに出るルートがわからん。

わずかな食料かじって一服しながら落ち着いて周りを見渡すと人の手が入った 形跡発見。あっ道があった!よーし行こう。

また何度か林道には分岐があり途絶え道なき道をゆく。だんだんあせってくる。 熊なんか気にしてなんかいられず道のカケラをかきわけ進む。山の神様ぁどう か明るいうちに山から出してぇ。

川!これに沿ってちゃんと整備された林道がのびる。やったぁ。どこに出るか まだわからんが下流には何かあるはず。

17時。舗装道路だ!抜けたぁ。脱出。へなへなぁ。助かった。
ん?ここは。昨日の林道の入口。ガーン。24時間山々を巡って彷徨って結局。 「ふりだしにもどる」かぁ。でもいいやもう山から出られただけで充分。もう 疲労困ぱい。

メシ喰えそうなとこまで10km。もうひとふんばりする体力ぎりぎり。気力だけ で進む。

19時。閉店間際の食堂にすべり込みセーフ。なんとか無事にいられたことに感 謝。今夜は奮発してエビホタテカキのミックスフライ定食1000円に瓶ビールも つけちゃう。うぅうまいぃ。

近くのバス停で寝る。戸が閉まるので割とあったかい。足と肩、いや全身、疲 労と痛みのカタマリ。


・(053)09/08/2003/北海道・佐呂間町・浜佐呂間--北見市/
6時出発。北見に向かおう。街で宿に泊まって休息取ろう。

4時間ダンプの風圧にあおられながら歩くがもう疲れ限界。今日は夕方から雨 だというしもうバスに乗ろう。

歩いてたら一日がかりでもたどりつけなかったかもしれない距離だったが。バ スに乗ったら30分で北見の街に到着。あっけない。まだ11am前。とりあえず駅 のinfoで情報収集。電話帳で宿探し、ビジネスホテル確保。チェックインまで 3時間。駅待合所でメシ喰ったり日記書いて過ごすうちに時間。

チェックインしたら即洗濯&風呂。コンビニに晩メシ買いに行って。メシ喰っ てからホテルの無料ネットコーナーで小一時間。それからバスルームで靴洗う。

とにかく疲れてるので休みたくてホテルに泊まってるのに。いざ宿に泊まると やること一杯だぁ。寝る前に一時間ほどぬるめの湯をはり半身浴。寝る時は枕 を脚下に敷いて足を高くして寝る。


・(054)09/09/2003/北海道・北見市--津別町・本岐/
朝食は簡単ながらもバイキング形式で食い放題。もちろん喰い貯め。パンとか おにぎりとか袋に詰めて持っていきたいところだが、やめとく。

チェックアウト時刻ぎりぎりに出発。今日中にはたどりつけないけど阿寒湖を めざす。その途中にある「シゲちゃんランド」という美術館?アート空間?に 行きたいのだが。昨夜ネットで調べたところ、水木金は定休らしい。今日中に 着かなきゃだめじゃん。こまったぁ。歩いてじゃ無理。次回来るときのお楽し みにとっておくしかないかぁ。

車が停まる。乗る?乗せてくださひ!今日着けるかどうかも厳しそうだった津 別町まで一気にワープ。時間に余裕があるからと津別峠の展望台も案内してく れる。晴れてれば屈斜路湖が見えるらしい。が。360度ぐるりと真っ白。雲の 中に居るのだった。うーむ。残念。

峠下りて津別の街に近い国道で降ろしてもらう。

さて。どうするか?シゲちゃんランドまで送ってもらえれば閉館ぎりぎりです べり込めたかもしれないが。無理に頼めないし。
こっから20kmはあるみたい。とりあえずまだ日没まで2時間くらいはあるから 行けるとこまで歩くか。

パトカーが前方で停まって僕を待ってる。まさかパトカーに乗せてもらえる訳 ではなかろう。ニコニコと愛想よくあいさつしてくるのでこっちも返答。職質 かぁ。免許渡すと照会。どうやらこの辺には野生の大麻が生えてるらしく。そ れを目当てにしてる輩がいるらしく。僕も疑われたらしく。でも照会が済むと。 「大丈夫。マジメな旅行者ですね」とのたまう。苦笑。マジメ、ねぇ。葉っぱ やるつもりはないけどマジメかどうかは大いにアヤシイ(笑)。この辺はシカ とかキツネとかクマ出るから注意してと忠告されつつ別れる。

再び歩きだし小一時間するとまたさっきのパト。シゲちゃんランドのある相生 って町まで「あと13kmだよぉ」と声かけてくれる。ふふ。なんか気さくなおま わりさん達だこと。どうせならパトカーに乗せてもらいたかった。パトカーヒ ッチハイク(笑)。

日没。バス停があったので今夜の寝所にしようかと思ったがここはかなり荒れ てて戸もないので、あと一時間くらいは前進してみるか、と立つ。すぐ近くに ライダーハウスらしき「かかしの里・二輪の宿」なるものがあるみたい。看板 があった。国道逸れて行くと本岐の町。おもしろい形の公衆トイレと休憩所発 見。ここで寝てもいいが。隣に酒屋があったのでおばちゃんにライダーハウス のことを尋ねてみる。カギはうちにあるよという。

暗闇で見えなかったが近くに公園がありちっちゃな山小屋風の建物が3棟並ん でた。それぞれ個室。フトンもあった。ちょっとした二階建になっており(階 段3段)下にバイクを駐められるようになってる。
てんとう虫が大量に転がっててお世辞にもきれいではなかったが、野ざらしよ りは寒くはなさそう。
早ければ今夜から雨という予報を聞いていたのでこれは助かる。お世話になろ う。おばちゃんの店でビール買ったらトウキビももらっちゃって宿代は500円 でいいとのこと。もし明日雨ならゆっくりしてればいい、何日でも泊まってて いいからと言ってくれる。(連泊しても最初の500円だけでいいって!)あり がとう。

雲行きアヤシ。それでも雲間から十三夜の月が!そして月のすぐ下5時の位置 にちょこんと火星が寄り添う。おおっ!缶ビール片手にかかげどこかで同じ月 と火星を見上げてる人々に乾杯。
この辺には猫たちがたくさん集まってる。月夜に猫、がこれまた似合う。


・(055)09/10/2003/北海道・津別町・本岐/
やっぱり朝から雨になった。屋根を打つ音は土砂降り。しょうがない。今日は 一日この小屋で過ごそう。

北海道全域地図(100円ショップで購入)広げ今後の方針?を考えてみる。
うーむ。釧路に戻ったら電車バス利用して大移動連続しようかなぁ。東北に下 っても寒くなってしまうしなぁ。

小屋から一歩も出ずにいたら、おばちゃんが心配して(?)ノック。ははは。 ちゃんと食い物もあるし大丈夫ですよぉ。日記書いてたんすよぉ。

夕方には雨も上がり予報でも明日からいい天気になるらしい。よし。明日は日 の出とともに出発だぁ。阿寒湖まで30km。万全の体勢で明日の十五夜を楽しも。

今夜の月も綺麗。たった一晩で火星がずいぶん離れた。火星を追いかけるよに さざ波のよな雲間を月はぐいぐいとすごい速さで進む。猫も騒ぐ夜。


・(056)09/11/2003/北海道・津別町・本岐--阿寒町・阿寒湖畔/
夜明け前3時半起床。山の向こうに月が沈んだ頃。反対の山の端から白みだし てくる。予報通りいい天気になりそう。阿寒湖まで30km。4時半に出発すれば 到達できる、かな。よしっ。

7時半。相生物産館。まだ開館前。ベンチで朝メシ喰ってると館内で仕込み中 のおばちゃんが、牛乳にハチミツなど入れた特製ドリンクを「あたしがつくっ たんだけど。元気出るよぉ」と差入れしてくれた。ありがたい。うん、おいし い。

ここの隣に廃線になった駅があり客車を利用した無料宿泊所があった。あぁ、 ここらは空広いし居心地良さそうだなぁ。今夜ここに泊まって月見もいいよな ぁ。阿寒湖まであと20kmがんばっちゃうか、ここに留まるか。うーむ迷う。

迷ったら前へ。で結局予定よりもずいぶん早く14時には到着。アイヌの土産物 がやたらに目に付く。それとマリモ関連(便乗)商品。マリモラーメン、マリ モソフト、マリモ豆腐、マリモキティ(?)。節操ないなぁ(笑)。

なんとも場末の温泉街って感じ。それは悪い意味でもないんだが、ちょっと観 光の見せ手と受け取り手とのズレがあるような。まぁそのズレを楽しんじゃう とおもしろくなるのだが。

周辺地図を入手して歩き回る。が、他の観光客と見るとこは違う。今夜の十五 夜を最も楽しめそうな場所探し。そして。酒類の調達できる店探し。

阿寒湖で唯一おもしろい観光施設発見。エコミュージアムセンター。ここは時 間に追われて駆け足で見て回るだけではもったいない。一日いてもいいくらい。

そして。この先の森の小道を抜けると。月見に絶好の場所を見つけた。東に雄 阿寒岳、西に雌阿寒岳に挟まれた阿寒湖に突き出す桟橋。ここだぁ!

しばらくぼーっと座り込んでいたら西に日は傾き、雌阿寒岳の方から夕焼けが 広がってくる。湖面に太陽の残光が道となり、時間を追うごとに湖面全体を黄 金色に染める。うはー。鳥肌立つような夕暮れ。

今夜一晩中でも月見ができるように万全の体勢を整えるべくそろそろ準備に動 くか。まずはおいしいお酒が呑めるように近くの銭湯でさっぱりしとく。それ から酒と喰いもん調達。
夜になり森も真っ暗になって観光客も来なくなってからさっきの桟橋へ。誰も いない。防寒対策をしっかりして。さぁ来い。静かにゆっくり月を待つ。

雲が広がってきた。秋の天気は変わりやすいな。ゆっくり月が昇る。おぼろ月 も悪くない。酒をかかげて山と湖と森と月に乾杯!

温泉にも入ったし酒も入ったしそれほど寒くはなかった。が。お一人様の宴に 広げたモノたちは夜露でびしょびしょ。うまいことシートかぶせて月を愛でる。

一晩中、朝まででも月見の宴をしてるつもりだったが。酒が回ると今日の疲れ がじわじわとしみだしてきた。30km以上歩いてきたんだよなぁ。いやいや。今 日ばかりではない。北海道に来て一体どれくらい歩いただろう。はぁ。こんな 素敵な場所で十五夜の満月を迎えることになるとは予想もしてなかったなぁ。

ふはぁ。眠くなってきちゃった。雲間から切れ切れに降り注ぐ月光を浴びなが ら阿寒湖にたゆたうように眠る。


・(057)09/12/2003/北海道・阿寒町・阿寒湖畔/
夜明けとともに目が覚める。くるまってたビニールシートは朝露でびっしょり。 タオルで拭って簡単に朝メシ。
早朝から観光客たちは散歩にやってくる。おはようございます。人が増えてき たので場所移動。

“足湯”できるとこがあるのでのんびり2時間くらい一人で朝の湖眺めてる。 眠くなってきた(笑)。腹減ったなぁ。コンビニで弁当調達。公園で喰らう。

台風が近づいてる、らしい。明日あたりからこちらも雨とのこと。まだ今日の ところはいい天気。エコミュージアムセンターの芝生広場で夏のような日射し を受けながら目の前には色づき始めた木々。夏と秋の挾間。

ぼやぼやと過ごしているところに。仕事休みだというシュリさんが釧路からバ イクで訪ねてきてくれた。おおっ!一ヶ月ぶりの再会。やぁやぁ。

近くの神社の祭りが昨日から始まってる。御輿がやってくる。わっしょいわっ しょい。

昨晩、僕が月見をしていた場所にシュリさんをご案内。いいでしょ、ここ? とりとめもなく話し込み、ゆるい時間が流れる。本を一冊もらう。おおっ。あ りがとう!文面と写真からイラクに想いを馳てみる。

夕方「また釧路で会いませう」と別れる。さて。今夜から天気危うそうだし、 アイヌコタンにあるライダーハウスに行ってみよう。

システムがよくわからずにとまどったが。常連客に教えてもらいながら自分の 位置をキープ。主にやっと会えて500円払ったら、なんと晩メシまで喰わせて もらえた。すげぇ宿だな。

台風過ぎて天気回復するまでここで沈没していようか。

夜中、ちょっと酒買いに外に出ると月と火星!缶チューハイ1本分の月見をし て宿に帰って、寝る。


・(058)09/13/2003/北海道・阿寒町・阿寒湖畔/
朝から雨。一日中宿に居て地図見たり日記書いたり居間でテレビ見たり。でも。 今夜23時にはライブを観にゆくのだ。この宿のすぐ隣にある、普段はアイヌの 古式舞踏を上演している所でそのライブはある。

阿寒湖に来て最初にそのポスターが目に飛び込んできてびっくりした。
「PICAIAピカイア」なにぃ?!なんと知り合いのユニット(二人組)だった。ピ カイアとしてのライブはこれまで観たことはなかったのだが、メンバーの一人 渡辺さんとは以前から顔を合わせてた。それは寺田町さんのライブで。
テラさんとナベさんはかつて寺田町グループとして同じバンドで演っていた仲 間。東京で出会うならまだしもまさか北海道の阿寒湖で遭遇するとは!

ポスターを発見した瞬間に阿寒湖滞在を延長することにしたのだった。楽しみ だなぁ。

さて。会場に行ってみると。受付にナベさんの奥さん。え?あれ?どうしてこ こにいるのぉ?サプライズ成功。うひひ。僕もまさかここで会えるとは思って ませんでしたよぉ。

キャパ300人の会場ではちょっと空席が目立ったが。地元の主催者たちを中心 に盛り上がってゆく。それにしても23時過ぎから始まるライブでよくこれだけ 客が来たもんだ。しかも今夜は台風の夜だというのに。

パーカッションとトランペットが絡みつきアフリカやブラジルの匂いも漂わせ ながら二回のアンコールとともに夜は更ける。おもしろい夜だった。


・(059)09/14/2003/北海道・阿寒町・阿寒湖畔--上徹別(小学校)/
8時半に起きたら窓の外には陽光があふれ弾けてた。あ!台風去ったのかぁ。 もう一日ここに滞在しようかと思ったけど。もう動こうかな。

その前に。アイヌの古式舞踏を観ておこう。昨夜ライブがあった場所で普段は 一日数回の観光客相手に上演されている。11時の回は客は6人しかいなかった。 出演者の方が多い(苦笑)。
観客も舞台に上って一緒に踊ってみたりもする。30分はあっという間に終わる。 なかなか興味深いものだったが。踊りよりもうた(というかヴォイス)に惹か れた。

そろそろ北海道も離れようかと考えてたから、阿寒湖を去る前にうまいもんで も喰っておくか。行者ニンニクラーメン。昼メシだが生ビールもつけちゃう。 にひひ。

さて。もう昼だが動き出すか。釧路をめざそう。
屈斜路湖、摩周湖方面に立ち寄ってからというルートも考えたが。まぁ今回は もういいや。おたのしみは次回に取っておこう。

釧路まで最短距離で70km以上。普通なら三日はかかるなぁ。天気は安定してる みたいだな。今日は20kmも進めればいいとこ。

歩くあるく。歩道もない山あいの道を延々と歩く。ダンプや観光バスがじゃん じゃん風圧を浴びせかける。ずっと先の方に道の駅があるようだが。真夜中に なっちゃうなぁ。
それでも歩く覚悟でいたのだが。日没後しばらくして屋根付きBBQコーナーみ たいな建物発見。薄暗くてよくわからないのだが、どうも小学校の片隅みたい だ。明日は祝日で学校休みだろうしまぁ誰も来ないだろう。

ところで。どうして北海道の学校って門がないだろ。門柱らしきものだけは2 本立ってるのだが。塀とか柵で囲われてるってこともない。かなりフルオープ ンな敷地。だからつい迷い込んでしまう。

大正8年に植えたと書かれた立派な桜が目の前にある。寝床をセットして晩メ シ喰って酒呑んでたら桜の向こうから月が昇ってきた。やぁやぁ。
あまりにも登りやすそうな枝ぶりだったので樹上で月見。このままここで寝た いくらいだ。

さて。釧路まであと50kmちょっと。明日はどこまで行けるかなぁ。釧路に着い たらまた“ぼんくら”で呑みたいなぁ。

あぁ道東、おもしろかったなぁ。まだまだ行きたい所もあるがここらで一旦離 れよう。紅葉前線を先回りできるかな?


・・・(つづく)[03.09.15] 海月
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