__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[03.08.26] 

〜海月の放流〜 042

□前回までのあらすじ:
公園か無人駅で野宿だと北海道の今頃は既に寒い。
雨の日は歩かない動かない。台風もなんとかやり過ごす。/
起きた後もちゃんと覚えてる夢をよく見る。
本を読んでも人と出会っても強烈なシンクロニシティ。/
疲れピーク、足痛い。釧路で静養。
昼間は図書館。夜は気に入った店に毎晩通って呑んだくれ。


●『ナンノタメニ - 北海道・釧路→根室の巻 -』

山田花子は一体何のために110kmも走ったのか?理由(わけ)・・・。
・・・強くなりたい。自分の居場所を探し続ける寡黙な人。

「がんばれがんばれ」そう叫ぶ無邪気なほど他人事の声援。決してそんな人の ために走ってるんじゃない。
いやそうじゃない。その声がなかったら到達できなかったかもしれない。
結局。一人じゃないんだ。孤独な自分自身との闘いの先にあったのは一人じゃ ないということなのだった。

僕はどうか?僕には課せられた距離も時間枠もそしてゴールも、ない。中継カ メラも回ってはいない。感動を与えるようなエピソードもなければ、根性もな く、いつも泣き入ってる。

ヒーローからはほど遠く、誰かの声援、激励を欲してるわけじゃない。ただ自 分勝手に彷徨ってるだけだ。一体何のために歩いてるのか?

たまにこうして心地いい宿に泊まって酒呑みながらテレビなんか見てると、自 分のバカさ加減に笑える。窓の外ではバタバタと音をたてて雨が降っている。

いつ終わるんだ。いつやめたって誰にも文句は言われないし誰の迷惑にもなら ないのに。
どこに行こうというのだ。何をしたいんだ。・・・

それでも。明日はまた歩きだす。理由は・・・今のところ、ない。


・(030)08/16/2003/北海道・釧路市--東釧路・貝塚公園/
10時に起きて朝メシいただき荷物まとめて宿を出る。いい天気。自前 HP の更新 をしておきたかったのでまだ街を離れずフィッシャーマンズワーフMOOで更新 作業。

もう午後2時。今から歩いてもたいして進まないな。ここでうだうだ過ごして また夜ぼんくらに顔出そうかなぁ。うーむ沈没ムード(笑)。
釧路はすっかり気に入ったなぁ。と言っても観光客が行きそうな所は何も見て ないんだが。
3-5pm生涯学習センター・まなぼっとで無料インターネット。

東釧路駅は無人駅と聞いてたので今夜の寝所にどうかと行ってみる。近くに大 きいスーパーがあったので食料調達してメシ喰ってから駅をのぞく。20時。
駅前にはまだ数台の自転車。まだ何人も下車してくる利用客がいる模様。そし ておっちゃんが一人待合室で待ってる。ちょっとこの状況で寝場所確保しづら い。貝塚公園なるものが近くにあるようなので移動。

水道、トイレ、ベンチあり。夜、雨が降ったらしのげる屋根はないが今夜は大 丈夫だろうとタカをくくってここに決定。

霧深い夜。冷気にふるえる。バーボンで暖をとってムリヤリ寝る。


・(031)08/17/2003/北海道・釧路市・東釧路--釧路町・深山/
寒みー。着られるものは全部着てるのに。コンビニで朝メシにカップラーメン。

左目奥から左こめかみにかけてズキズキと痛い。睡眠不足もある。2時間ほど ゆっくり歩いた先に広い森林公園のような所があったのでちょっと寝直すこと にする。

子どもらのはしゃぐ声で起きると親子連れがたくさん集まってきてて遊具施設 で遊んでる。もう昼になるのか。頭痛はまだおさまってない。まいったなぁ。

巷ではWinのウィルスが“また”猛威をふるってるらしい。MSサイドのコメント が笑える。このウィルスはさほど複雑な構造でもなく特に高度な知識を持った 者による犯行ではなく幼稚な若者による犯行だろう云々。わはははは。そんな 犯人に簡単にあっけなく攻撃されてる高度な知識を持った企業ってわけかい。

国道はつまらんので林道で別ルートを進もうと思ったら。道違った。同じ道を 引き返すってのはなんかすごく悔しい。

また森林公園。なかなか気持ちいい散策路。しかし最後は行き止まり。ぐるっ とスタート地点まで戻るのはもうヤなので封鎖されてる古い林道を進む。いつ 熊が出てきても不思議じゃないムード。ビビリまくり。

うわっ!鹿。同じ道の上に、距離15m以内。すげー立派な角。お互いびっくり しすぎて動けない。しかしいつまでもじっとしてたら日が暮れてしまう。じり じりと近づくと向こうは飛びすさるように林に消えていった。ふぅ。

車の音が聞こえてきた。国道に復帰。よかったぁ。そろそろ日没。暗くなる前 に林道抜けられてよかったぁ。でっかい夕焼け広がる。トワイライトゾーンの 色の変化。

今夜は道端の野菜販売露店で野宿。屋根があるから夜霧、朝霧はしのげる。

夜中、刺すような寒さに目が覚める。寒すぎてふるえながらうとうとを繰り返 すだけ。


・(032)08/18/2003/北海道・釧路町・深山--厚岸町・尾幌駅/
寒さに耐えられず明るくなったら歩きだす。国道沿いに進めば距離は短いが集 落もなくつまらなそうなので遠回りだが海沿いの北太平洋シーサイドラインな る道を進むことにする。

霧雨。たまに太陽が見え隠れ。

ローカル道を選んだが道沿いには結局なーんにもなかった。しまったぁ。寝ら れそうなとこまでかなり遠い。まいったぁ。日も暮れてしまった。真っ暗な道 を一人ずるずると歩く。

夜7時半。疲れ果てた先にようやく国道と合流し駅、コンビニ!食と寝所を確 保して長い一日が終わった。


・(033)08/19/2003/北海道・厚岸町・尾幌駅--厚岸--糸魚沢駅/
明るく晴れてるのに霧で包まれてる。ヒゲに水滴たまる(笑)。

厚岸(あっけし)の街はカキで有名らしい。スーパーで買い出しついでにカキ 弁当(フライ玉子とじ)。午後3時過ぎ、遅い昼メシ。うまいぃ。そしてヒル ネ。

まだまだ歩く。日没になってしまうが寝場所がないので歩くしかない。真っ暗 闇に車線の白だけが唯一の道標。時折、猛スピードで飛び交う車がこわい。

霧はどんどん深くなる。後方から車が来るとヘッドライトの焦点が空中で光の 輪となる。その円の中に僕が居た。

上空から霧が晴れてくると空にはあふれる星々。おおっ。少し元気が出る。

暗闇を1時間半も歩き続けてやっと人工の灯りが見えた。二階建ての民家かと 思ったが。目当ての糸魚沢駅だった。やったぁ。やっと寝られる。疲れたぁ。 疲れ果てたぁ。


・(034)08/20/2003/北海道・厚岸町・糸魚沢駅--浜中町・姉別駅/
2、3日前からラジオでは暖房器具のCM。まだ8月なのに。確かに寒い。天気 予報を聞いてるとどうも僕が今歩いてる地域だけが寒いみたい。選りによって。

北海道ではセイコーマートというコンビニが旅人の見方。チェーン店のコンビ ニなのにいろんな商品を安く提供してくれる。酒も安い!うひひ。
今日もセイコーマートでメシ買って喰ってると同じ様に休憩してる自転車旅人 二人組と出会い言葉を交わし情報もらったり。セイコーマートっていいよねっ て話で盛り上がったり(笑)。

今日もラジオからは様々なニュースが飛び込む。

国連テロ。
またしてもアメリカの仕業か?!アメリカの思惑(推測)(1)国連の同情と結 束を期待(アメリカは現地にて資金兵力とも疲弊している)(2)アメリカ以 外の排除(イラクは危険だからと他国に介入させたくない)
まぁどっちでもアメリカが好き勝手にやりたいがために裏でやった事のように しか見えない。

通り魔衝動殺人。
全国各地でこういうのが広がってるってのは社会の歪みウィルス、ワームのよ うに思えてならない。それを媒介してるのはマスコミであることは間違いない。

殺人あるいは自殺衝動を引き起こすウィルスのようなものがもしかしたら密か に開発され存在してるのかもしれない。

狂牛病BSE、SARSの次の「バイオテロ」はなんだろうか?

権利と義務。納税しなけりゃ文句は言えない。多額納税者だけが国の役に立つ。 大学も法科大学院も政治家も医者も金のある者だけで成立すればいい。国が成 り立つための経済システム。一体「国」は誰のものなのか?

ニュースでもスポーツでも解説者なる人物がメディアに登場するが。その発言 をほんとに鵜呑みにしてていいのか?間違いだろうが有り得ない考えだろうが 「異論」をひねってみるというスタンスも必要じゃなかろうか。とにかくマス コミというのは見せたいものしか見せてくれないしそのための情報操作こそ見 せ所という世界なのだから。視聴者もその奥や裏を読まねば。マスコミ、メデ ィアに接するというのはそういう「ゲーム」なのだから。

気をつけねばならないのは、自分の見たいものというのが外部からの暗示や操 作によって思いこませられている可能性があるということだ。

「絵」というものを見たこともない、とある“未開”の部族に西洋人が接触し 彼らの村や風景や人々の絵を見せた。彼らは絵を上下ひっくり返したりいろん な角度から眺めてみる。何が描かれてるかわからない様子。線や点や色だけで 構成されたソレが何を表しているかというのは「教育」という“誘導”があっ て初めて成立する。そういう一例。

“文化的文明人”たる我々が幼児の絵を見ても意味がわからない。コミュニケ ーションとはルールが介在しなければ成立しない(?)。

うた(音声)と笑顔(表情)。もしかしたらこれだけが万能のツールなのかも しれない。それは人対人ばかりか人対動物、人対無機物さえも。

ラジオの入りが悪くなってチューニングダイヤルをぐるぐる。ロシア語が流れ てきた。そうかぁ。北方領土近いもんなぁ。ラジオ番組というのも国や地域の 文化と考えるなら地域ごとの特色特徴はあるように思われる。けれど電波と音 楽に国境はない。こういうユルイ境界っていいと思う。

ひねくれたことあれこれ考えてても。延々と続く牧草地帯に草はあおく広がり 空には雲が悠々と流れる。また路上にはいろんなものたちが死んでいる。皆、 平等に死んでいる。


・(035)08/21/2003/北海道・浜中町・姉別駅--浜中町・琵琶瀬/
初田牛を過ぎた所でピックアップトラックが停まる。根室市内に入ったとは言 え根室市街にはまだ一日はたっぷりかかる距離。どこまで行く?と声がかかり 返答に困る。今日は別当賀の駅で寝るつもりなんだけど。急いでないならまぁ 乗れ、と。後ろから車が来ていたのであわてて乗り込む。後で駅までちゃんと 送ってやるから。といいつつ根室半島やらあちこち案内してもらう。話の種に うちにも寄ってけ、と行ってみると。15万平米とかいう全く実感がわかない広 大な土地。畑や牧場でもなく海岸べりの野山そのままがそのヨネさんの土地だ った。そこには四角いコンテナ状のものが物置や寝所としてゴロゴロ配置され ておりログハウスも一人で製作途中。

鹿が数頭逃げてった。キツネもやってくる。海から昇る日の出が見える位置に 池もつくってある。何もかも一人でコツコツつくり手を入れてるという。海山 川空すべて敷地内にあった。誰にもわずらわされることがない自分の居場所が 欲しくなってここをキャッシュで手に入れ一人で住んでいる。いずれは自給自 足の生活をしたいと言う。52歳になる彼の人生は痛快で言動も豪快だ。

日本中に変わり者ってのはいるもんだなぁ。

夜には無人駅まで送ってもらうつもりだったが人生について話し込み、ビール も出してもらって、泊まってけってことになる。あったかい部屋で過ごす夜。

一人で生きるということを考えながら寝る。


・(036)08/22/2003/北海道・浜中町・琵琶瀬--根室市・納紗布岬--歯舞/
朝霧深い中、煙草と缶コーヒー買いに車で霧多布辺りを散歩。戻ると薪割って 火を焚き朝メシの準備。ジンギスカン喰わせてもらう。霧も晴れると青空に青 い海。湧き水甘くうまし。太陽が射すと夏のキャンプ気分。
アウトドアの達人でここをいずれはキャンプ場にでもしようかと考えてるとい う。
4輪バギーバイクで走り回るヨネさんは子どもがそのまま大人になったような 人だ。僕はうれしくてたのしくてずっとわくわくがとまらない。

のんびり過ごしているうちに昼近くなる。そろそろ動くか。車で道まで送って もらう。予定も時間も気にしなくていいんだろと途中いろいろ寄り道。カヌー で降りたら良さげなとっておきスポットまでつれてってもらう。こんなとこ土 地の人じゃなきゃ入って来れないよなぁ。あぁ風も心地いい。

ノサップ岬まで送ってやるからそっから歩け。と到着するとぢゃあなとぶっき らぼうに言い放って別れる。こんなによくしてもらってお礼もろくに言えなか った。

さて。これからどうすっかなぁ。

オホーツク海を初めて見る。今日はべた凪ででかい湖みたい。

北方領土が間近に見える。記念館で数時間過ごす。領土や国境についてぼんや り考える。
「返せ!」「奪還」などという立て看板があちこちにある。かつての島民は現 在、日本各地で暮らしてるという。故郷に戻りたいという。しかし現在はロシ ア人が暮らしてる。今後四島返還となったとしたらそのロシア人は追い出され る訳だ。かつて日本人がソ連に追い出されたように。また同じことを繰り返す のか?仕返しか?故郷とか土地とかどうしてそんなにこだわるのか僕にはわか らない。

ノサップ岬の灯台回って根室方向へ歩く。「最東端の」って文字、看板が目に 付く。最西端の与那国島、最南端の波照間島を思い出すなぁ。
ここまで来たら最北端の稚内・宗谷岬を目指したいところだがこっから500km もあるという。真冬になってしまうよ。今回はパスだなぁ。となると次はどこ へ?まったく当てがない。疲れちゃったなぁ。
札幌方面に西へ方向転換して東北に南下しようか。

今夜はバス停で寝る。


・(037)08/23/2003/北海道・根室市・歯舞--根室中心部/
夜半から大雨。雨が上がるまでバス停で膝かかえてうとうと。午前10時雨あが る。進むか。

根室にはロシア語の看板が目を引く。キリル文字でレストランと読めた時はな つかしく感じた。(ラーメン屋にその看板があるのには違和感があったけど)

歩くというモチベーションが低下中。歩いててもあまり風景とか見てないし。 ただただいろんなこと考えたり、何も考えずにラジオ寄席の落語に笑ったり。

根室駅到着。インフォで宿確保。ゆっくり風呂にも入りたいし2食付き6000 円の旅館に普通に泊まる。洗濯と風呂。晩メシには花咲カニも付く!ビールも らってゼイタクな晩ご飯。

TVつけて世界陸上見てたら午前3時回る。


・(038)08/24/2003/北海道・根室市/
朝食もたっぷりいただいてゆっくりチェックアウト。近くの図書館行ったら開 館時刻までまだ早かった。公園で日記でも書いて過ごすか。
寝不足気味。ベンチでヒルネ。
地図広げ次に向かう地を検討。方針決まらず。

根室と言えば「エスカロップ」(?)。名物料理らしい。バターライスに豚カ ツが乗っててデミグラスソースがかかってる?喫茶店にもあるメニューらしい。 コンビニにもエスカロップ弁当発見。試しに喰ってみる。ふむ。なかなかイケ ルじゃん。

日記つけてるPSIONにトラブル発生。電池交換の時にデータふっ飛んでしまっ た。バックアップはあるしあわてることもないが、どっか電源とれるとこで腰 落ち着けて修復しないとなぁ。
素泊まりで安い宿探して即電話。中村屋旅館。なんとも歴史ありそうな古い建 物。そこかしこにレトロな細工。お世辞にも綺麗とは言えない宿だが、なんか ちょっとわくわくする。気に入った。

PSIONの復旧完了。日記書き続行。ここにいる間に最新号更新しよう。といい つつコンビニ弁当喰いながらテレビ観てたらちっとも進まない。


・(039)08/25/2003/北海道・根室市/
天気予報では今夜そして明日雨、らしい。日記も進んでないし今晩もう一泊し よう。

部屋にこもってここ数日のことを振り返る。何度もなんども考えるのは僕は何 をしてるのか何がしたいのか何ができるのかってこと。
一人で居る時にはそれほどあせりもしないけれど、人と出会い話をしてると劣 等感のように自問自答を始める。

夢がないわけではない。もう少しまだ少し寄り道をしたいんだ。ゆっくり考え たいんだ。(しかし歩き続けてる時は、目の前のこと、安全、寝所確保で一杯 いっぱいなんだけど)


・・・(つづく)[03.08.25] 海月
<<