__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[03.08.16] 

〜海月の放流〜 041

□前回までのあらすじ:
またたびを再開。出発の直前までばたばたしていたが
船に乗ってしまえば否応無しに北海道が待つ。/
うんざりするほどの直線道路。予想以上に寒い。
歩くということそして野宿にもまだまだカラダが馴染むには時間がかかりそう。


●『オスイラズ - 北海道・帯広→釧路の巻 -』

クローン馬誕生のニュース。クローン自体の是非は置いとくとして。今回驚愕 するポイントは。メスの体細胞をまた同じ個体の卵子と結びつけて母と全く同 じ娘ができたってことなのだ。母=娘。
これまでのクローン動物は生命の成長誕生プロセスを育む母胎を別の個体に依 存していたのだが。今度のは母自体が単体で複製されてしまったのだ。

一人旅や野宿の放浪のようなことしてると女の人によく言われる。「男はいい よね」「私も男に生まれたかったよ」「もし私が男だったら同じようなことや りたい」と。

こう言わしめる理由というのはつまり女一人でいることの危険性ってことに尽 きるだろう。
じゃあ何が危険かと言えば、男女の肉体的及び社会的な力の強弱による男たち からの暴力・圧力ということだろう。

また極論をひとつ言えば。この世界の争い事(大小に関わらず)の根本原因は 何かと考えると。女をめぐっての男たちの攻防だったりしないか?

んで。もしも世界から男というものを完全に排除してしまったならば。その女 だけの世界には危険も争いもなくとてつもなく理想的な平和状態が築かれはし ないか?

急に明日から男を一掃してしまうというとトラブルはあるだろうが。自分が生 まれたときから女しかいない(男女という概念すらない)という状況で生きて たなら。男なんか存在してなくても充分に成立してしまうんじゃなかろうか。

子を残すという点が唯一の課題なわけだが。上述のクローン技術が導入されれ ばその課題すら解消されてしまう。
男は女からしか生まれないが。女は男なしでも女から生まれ続ける。

もう男というものが存在する価値なんてものはなくなってしまうかもしれない。 こんな極論をわざわざ持ち出さなくてもぢつは既にうすうす感じてたりするの だった。

それを推し進める研究、思考を男がしてるというパラドクス。
厄介なこと考える厄介者な男たち。敗戦記念日に平和を祈りつつ合掌。


・(014)07/31/2003/北海道・帯広市/
昨夜は日記の編集を午前1時までやっていたが眠気に勝てずにダウン。
今朝は10時過ぎに起床。日記編集が終わるまでは街に出られないなぁ。
宿に缶詰の作家気分???

午後2時。ようやく日記編集終了。さらに3時。HP更新完了。
さて。街に繰り出してみるか。

繁華街を歩いてはみるものの特に興味をひくようなものはない。目につくのは 飲み屋くらいだが、一人では外で飲まないのであまりおもしろくない。

世界一長かった400mものベンチが緑が丘公園にあるらしい。コンビニで遅い昼 メシとビール調達して行ってみる。だだっ広い芝生の広場があり裸足で駆け回 りたくなる。空が広いなぁ。
のんびりほろ酔いになったらネット屋に行ってみる。

15分100円。自分のHPの具合をチェックし友人たちのHPを散歩。
調べ物もしてたら3時間くらい経ってた。メシ調達して帰るか。

TV見ながらメシ喰いビール呑みつつ、僕が旅を再開したことを友人知人に(今 さらながら)メールで報せる。夜中の送信ながらちらほらとレスポンスがある。 おおっ、繋がってるんだなぁ。
おかみからも電話。帯広に居るなら是非立ち寄ってみてくれ、と喫茶店を紹介 してもらう。コガシワコーボー?どんな字?なんか難しい字らしいので後ほど メールもらう。

結局今夜も3時回り夜更かし。明朝すぐ出発できるように、ぶちまけた荷物を まとめてから寝る。


・(015)08/01/2003/北海道・帯広市--幕別町・明野ヶ丘公園/
ラジオのナビゲーターが泣きながら曲紹介してる。オクモトミユキ「キレイ」。 アーティスト名も曲名も初めて聞く。曲自体も聴きそびれた。・・・という夢 を見て、目覚めた朝7時半。

出発の準備が整ってから30分程TV見てぼけぼけ。今すぐ出発しても昨夜おかみ が紹介してくれた店はまだ開店してないだろう。ネット屋に行こうか。

時間料金固定の“朝パック”で600円で昼12時まで過ごす。

小槲工房(こがしわこうぼう)にはすぐ着いた。すぐわかった。おかみの彼女 の母上の店と聞いていたが、店には若い人しかいなくてちょっと困惑。とりあ えず腹減ってるので昼メシにカレーとアイスベトナム風コーヒーを頼む。うま い!汗ふきふきゆっくり味わう。こちらからなかなか話すキッカケを見つけら れずにいたら店のネーさんが、歩いてるんですか?と声をかけられる。それを キッカケにおかみの紹介で来たと告げるとびっくりして喜んでくれた。ネーさ んはおかみの彼女の実の姉さんだったのだ。

すると2階で織物教室をしている母上が耳ざとく聞き付けて降りてくる。私の おごりで何か食べてと言われるが既にカレー完食。じゃあ、後で何か食べに行 きましょ。まだ教室の時間だからちょっと待っててゆっくりしてって、と言わ れ、母上の勢いに圧倒されつつおとなしくのぼのぼ日記書いたり本読んで過ご す。やっと余裕が出てきて店内を見回すとなんともいいムードの店。どうせこ の先当ても予定もないしのんびりしよっと。

母上にジンギスカン食べに行こ!と誘われ車で出掛ける。母上の友人のおばさ まも合流して3人分とは思えない量を次々と平らげていく。さっきカレー喰っ たばかりで腹は満たされてるのだが、どんどん食べてさぁさぁ食べてとワンコ ソバ状態。もうその勢いに圧倒されてただ喰うのみ。ろくに話もしてない。
今日突然店にやってきた風来坊にどうしてこんなに良くしてくれるんだろ。娘 達もよく旅先でいろんな人に世話になってるからと言うが。あぁ有難や感謝。

喰いきれなかった物は包んでお持ち帰り。あぁうれしい。ほんとにありがとう。

今度はおばさまの車で幕別町と十勝のプチ観光。そして今夜の寝所になりそう な丘の上の明野ヶ丘公園へ連れてってもらう。
おおっほおー。緑あふれる森林公園に十勝平野を見下ろす見晴らし台。これが またガウディのドエル公園風にしゃれてる。おもしろい。もうここにしますこ こに決めました。ありがとうございました。感謝多謝。

日が暮れると寒くなってくる。風は冷たい。着込んで雨風しのげる場所を探す。 最終的にはログハウス風のキレイな身障者用トイレに決定。ゆったり広いし水 道あるしトイレもあるし(笑)ここに住んでもいいくらい。木の香りがまたい い。

寝床セッティングしてちびちび飲りはじめるとバチンと公園内の全照明がタイ マー消灯。ありゃまっ暗。あわてることもなく手探りでローソク出して、より 快適ムード。


・(016)08/02/2003/北海道・幕別町・明野ヶ丘公園/
6時に起きて外に出ると何も見えないまっ白な霧。一応、撤収はするがモーレ ツに眠い。あ、もしかしたら雨降るかも。トイレ横の東屋で朝メシ喰ったらま たベンチで寝る。

あーやっぱり雨降ってきたぁ。こりゃもう今日動くのやーめた。一日ここでぼ けぼけすることに決定。


・(017)08/03/2003/北海道・幕別町・明野ヶ丘公園/
昨日以上に激しく雨。トイレは出てまたベンチで寝て過ごす。
半径3m以内の一日。しかし明日は動かないと食料がない。

6pmを回ったらまたトイレ小屋に閉じこもる。


・(018)08/04/2003/北海道・幕別町--(池田町)--浦幌町・新吉野駅/
朝は深い霧。軽く喰っていざ出発。小一時間も霧の中を彷徨い、やっとコンビ ニ発見。あたためてもらった弁当をむさぼりかき込む。

ワインで有名らしい池田町に入る。この町のワインをぜひ呑んでみたいとは思 うが、あまりにも観光ムードが強いので気が引ける。結局素通り。

9amを回る頃から急速に青空が広がり強烈な日射し。暑っ。Tシャツ1枚になっ ても体温調節が厳しい程。汗あせだらだら。昨日までの寒さとの差が大き過ぎ。 しかし日陰で涼める場所がなかなかない。炎天下を延々と歩くあるく。
あっセミ。北海道で初めて聞いた。でも変な声。何のリズムもなくただジーッ と鳴いてるだけ。

足が痛くなってきた。痛くないように歩き方を変えてみたりするが。それがま た無理を強いて違う所が痛くなる。これはもう足裏水ぶくれ出来てるな。うっ やっぱり。すごい大きさ。後で水抜かないと。

もう意識モーローとするほどの痛みと疲れ。やっと寝所になりそうな無人駅に 到着。疲れ過ぎて座るのさえつらい。しばし放心。

針をライターの火であぶって足の水ぶくれに刺しつぶす。衝撃吸収タイプの靴 の中敷を調達せねば。また繰り返してしまう。

夕暮れ。夕焼けがでっかく綺麗に広がってる。あっお月さん!やぁやぁ。北海 道で初めて会えたね。

22:13の終電を見送ったところで寝る。


・(019)08/05/2003/北海道・浦幌町・新吉野駅--音別町・尺別駅/
5時半起床。霧に包まれた朝。白い太陽。6:45始発の到着とともに出発。
一時間歩いてもうへたる。今日も暑くなりそう。コンビニで食料調達。足痛く てたまらん。まともに歩けないと疲れも激増。

9amにもうダウン。森林公園キャンプ場なるものが近くにある。銭湯も発見。
今日はもうここで足の回復を待とうか。料金を確認。1サイト500円。うーむ。 テント持ってれば高くはないがテント借りるとなると結局高くつくよなぁ。
ちょっと保留。
とりあえず足を休めるために公園内の草っ原の木陰でヒルネ。

もう10年近く首にぶら下げてる“自分の石”。風呂でさえもはずさないお守り のような石。そろそろヒモが切れそうなので一度ほどいて結び直す。今回はヒ モ自体を変えてないのでやたら短くなってしまった。ヒモを切るか首を切り落 とすかしない限りもう首から抜けない。僕に万一のことがあった場合、この石 が僕のIDとなる。

キャンプ場に泊まるか散々迷ったが、暑さのピークも過ぎる頃、歩いてみる。 迷ったら前へ!
どでかい入道雲。今年初めて見るなぁ。あぁ夏らしいねぇ。

なんとか朝よりは歩けてる。ラジオで大雨警報が出た。まだこの辺りは強烈な 日射しと青空が広がってるが雨雲はやってくるかもしれない。早めに寝所を見 つけよう。地図を見ると無人駅もいくつかありそうだ。
そこにたどり着く前に難所のトンネルが三つもある。歩道があればいいのだが。

いざトンネル。と気合い入れたちょうどその時、一台の車が停まる。どこまで 行くの?釧路まで行くけど。とお声がかかる。おおっ!なんちゅうタイミング。 一気に釧路まで行ってしまいたいが予定してた無人駅くらいまで乗せてもらう ことにする。トンネルを一気にワープ。助かったぁ。

車内はエアコン効いてて火照ったカラダがゆっくりクールダウン。
この車で家族6人で四国旅行に行っていたらしい。お父さんや子どもらから質 問責めにあいながらも食い物の差入れもらい和みの一時。

駅が見えた。まだ明るい時間だが今日の寝所はここに決定。礼を言って下車。 ほんと助かった。

駅周辺にはちらほらと寂れた家があるだけで商店すら見えない。なのに駅舎だ けは妙にでかい。昨日のように駅前に酒屋があれば絶対ビールがうまい日なの になぁ。残念。

この駅の終電は20:03、始発6:45か。今日はゆっくり寝られそうだ。


・(020)08/06/2003/北海道・音別町・尺別駅--白糠町・西庶路駅バス停/
霧深い朝7時出発。8時コンビニでカップカレーラーメンすする。ラジオでは 広島平和祈念式典中継。カレーが辛いのかラーメンが熱いのか鼻水と涙があふ れてくる。
今日は一日中「平和」というものを考え続ける。勝ち取ったりもぎ取ったりし なければ得られぬものなのか、平和や自由というものは?被害者と加害者の因 果関係。被害者自慢合戦。

珍しく何台かの車、何人かの人に声をかけられる。でも今日は歩く。足の水ぶ くれを針でつぶしては前に進む。

ラジオはこども電話相談に変わる。最初にどんなに元気にあいさつしたこども も専門家の応えを聞き終わる頃にはふにゃふにゃと意気消沈。質問者の理解力 と回答者の説明力のすれ違い。質問を発するこどもが大人の説明を理解できる 年頃にはもうその質問疑問を発することもなくなってるジレンマ。けれどもう わかってる気がしてるだけで実は何もわかっちゃいないままだったりする。某 国と某国の対立や疑惑の構図もそんな感じ?

大学検定試験なしでも大学受験資格を得られるようになるとのニュース。少子 化などで大学経営存続自体が危ぶまれてる今、もう入りたいヤツは誰でも入れ ちゃえばいいのに。そうすりゃむちゃな受験勉強とかしなくて済むし。その代 わり進級卒業は厳しくすりゃいい。だいたい勉強を教わってる間は勉強でもな んでもない。学習から調査研究へ自分が動かない限り身につくものではない。

夜7時半まで歩いた。もうすっかりまっ暗。駅で寝ようかと思ったが23時過ぎ まで汽車は動いてるようなので、近くのバス停小屋で寝ることにする。国道沿 いのその小屋は一晩中うるさかった。近くにヒマを持て余してうろうろ俳徊し てる高校生連中も気が気でない。(どうして群れたがる?)

結局キンチョー感が解けなぬままほとんど眠れず朝を迎える。それでも明け方 いくつか断片的な夢を見た。どの夢にも共通して超高層の廃墟ビルの改装場面 があった。つぶして建て替えるのではなく上層部分だけ修理改造してる。レス トランだったり児童図書館だったり、夢の断片によって用途は違ったが。何の 暗示?


・(021)08/07/2003/北海道・白糠町・西庶路--釧路市(パークホテル)/
4時半起床。バス停より広いので駅待合室に移動して朝メシ、日記書き。
昨日は考えてたことがたくさんありすぎて日記にまとめきれない。

近頃日本中あちこちで地震が起きてるようだ。火山はそろそろ危ないかもしれ ん。
沖縄は台風が接近中。北海道に居てもラジオからは全国各地のニュースが飛び 込んでくる。日本や世界のニュースや情報が瞬時に耳に入る。
その一方で。自分の居場所だけが自分では一番わかってない。
僕は違うレイヤー上を歩いてるのかもしれない。

あと2日くらいかけて釧路の街に入るつもりでいたが。野宿できそうな場所が 見当らず、今夜あたり雨、との予報もあり、一日で釧路まで歩いてしまうこと にする。

25kmくらい歩いてへろへろになりながらなんとか釧路駅到着。インフォで市街 地図もらいつつ宿も確保。盆休みに入るためどこも宿は満室が多い様子。

宿にチェックインしたら。とにかくまずは洗濯大会&風呂。改めて買い出し。 TV見ながら晩酌。

もうかなり疲れたまってるみたい。足裏は痛くて立ってるのもつらいくらいだ し。しばらく釧路で静養しようかな。旅の休日。

台風10号接近中。四国近畿と上陸通過してくる。釧路も夜から降り出した。


・(022)08/08/2003/北海道・釧路市(パークホテル)/
台風を遠因とする雨のため、ずーっと部屋にこもってる。TVザッピングであっ と言う間に一日が終わる。なんだかなぁ。


・(023)08/09/2003/北海道・釧路市(休坂)/
台風接近中。北海道も雨あめ激しく雨。そんな中、足下ずぶ濡れにしながら宿 移動。以前から気になってた旅人宿なる安宿・休坂へ。
http://member.nifty.ne.jp/yasumizaka/

宿にチェックインするまではどこかでぼけぼけしてたいが大荷物抱えて歩きた くないので、駅のコインロッカーにあずけておく。
しかしこの雨じゃ動くのもヤだなぁ。ネット屋はすごく遠いし。あ、図書館が ある。

一日図書館ですごす。旅人から声をかけられ久しぶりに自動応答ではない“会 話”をした(笑)。

休坂にチェックイン。おもしろい連中が集まりそうな宿。
そしてなんと。モンゴルで知り合ったハリューさんに7年ぶりの再会。なんで この宿に居るの?お互いびっくり。

再会を祝して呑みに繰り出す。こんな台風の土砂降りの夜でも店はやってるし 呑み歩いてる人がいるもんだな。
赤天狗の特製カクテルすごい!飲み過ぎには絶対注意、だな。ふふ。

宿に戻ってから居間で泊まり客らとまた呑む。かなり酔った。2時就寝。


・(024)08/10/2003/北海道・釧路市/
朝窓からまぶしすぎる光。台風一過のいい天気。窓際は暑いほどで目が覚める。 朝食はサービスということでトーストと目玉焼きをいただく。あ、なんかまだ 酒抜けてない。ふらつく。

朝食喰い終わったばっかりだが、近くにおいしいラーメン屋があるというので 同宿のみんなと行ってみる。朝9時半開店なのにすでに満席&行列。僕らはラ ッキーなことに行ったらすぐに席につけたのだが。極細麺がイケル。

今夜だけ宿は予約で一杯ということで荷物抱えて出る。明日から5連泊は押さ えたが、まぁ今夜は公園で野宿でもいいか。

近くの米町公園でヒルネ。一日中ぼえぼえと海を見下ろす高台の公園で過ごす。 また顔日焼けしたかも。
ここには観光客もバスや車を乗り付けて来る所のようだ。ここで今夜寝るのは キビシーか?まぁもう一つ目を付けてる公園はある。

コンビニでメシ調達して夕陽を見ながら喰らう。太陽が沈むと交替に月が昇っ てきた!釧路の夕焼けと月に乾杯。

すっかり夜になると少年たちが集まってきて花火が騒々しい。寝場所を替えよ う。より休坂に近い公園で今夜は野宿。


・(025)08/11/2003/北海道・釧路市(休坂)/
一日米町公園でヒルネ&読書。「アウトサイダー」読了。哲学モード全開。

夕方休坂に行く。ちょうどみんなで風呂に行くというので同行。

夜は繁華街に繰り出し贅沢に呑み喰い。
伝説の宿話で盛り上がる。僕は喰いすぎで身動きできないほど(笑)。
それだけが理由じゃないけど話題には乗らず一歩引いて場を見てる。
旅の話に入れない僕が居る。彼らと一緒にいて楽しくないわけではないが旅の スタイルにどうしても違和感がある。僕だけなんか特殊過ぎる。

店をハシゴ。ぼん蔵。ここは一人でも来れそう。マスターも元旅人だったとい う。そして釧路に移住してきて店をかまえたとのこと。なんか落ち着けるいい 店。釧路に居る間毎晩通いそう。
http://member.nifty.ne.jp/yasumizaka/bonkura/bonkura-1.html

宿に帰ってきたらまた居間で呑む。


・(026)08/12/2003/北海道・釧路市(休坂)/
10時起床。図書館で「ホームレス作家」読みはじめる。

煙草を吸いに館外の喫煙スペースでぼわーんとたたずんでたら。77歳になると いうおばあちゃんがスケッチブックかかえながらにこにこと近寄ってきて声を かけてくる。かばんをごそごそあさりながら食べ物を取り出し僕に食べなさい と差入れしてくれる。
一方的に話が展開され僕はただうなずき聞き入る。
おばあちゃんの人生をとくとくと聞かされる。そしてお決まりのように僕への 説教が始まる。何一つ反論はない。最後は親孝行しなさいよと〆て去ってく。

しかし。第一声が「自由人なの?いいわねぇ」だったのにはびっくり。僕は何 も説明してはいないのに。どうして僕をお盆休みの観光客と思わなかったのだ ろう。ああ観光客が図書館に来ることはないか。

お盆だし先祖や親のことを考えてみなさいとナニカがおばあちゃんを使って伝 達してきたのかもしれんなぁ。
あとで久しぶりに手紙でも書いてみようか。

満月の所為なのか、昨日からの哲学モードが加速増幅されてウツモードに入り つつある。
ぼん蔵行って気持ちをゆるめる。長時間居座って呑んでるうちに気分は上向き になってく。
マスターが店を早閉めしてそばでも喰いませんかと近くの店に誘ってくれた。 マスターも経営的経済的には厳しいらしいのになんとおごってもらっちゃった。 (今日は3人の人から食い物を恵んでもらってしまった。どこかで還元せねば)


・(027)08/13/2003/北海道・釧路市(休坂)/
図書館で昨日読みかけの本を読んでたら。4、5歳の男の子がぺたぺたぺたと寄 ってきて、僕にこう言った。
「なにしてんですか?・・・すみません。」
そして去っていった。唐突だった。一瞬ドキッとした。彼が僕から聞きたかっ た応えはどういう類のものかわからない。図書館で本を読んでる。特殊なこと は何もない。彼にだって本を読んでることくらいは一目でわかると思うのだが。

さらに。僕の返答も待たずに、すみません、と言って去ってしまったのも不可 解だ。なんだったんだろ?昨日に引き続きナニカが彼を操って彼に言わせたん じゃないかとさえ思える。「お前、こんなとこでいまこんなことしてていいの か?」と。
しばし呆然と窓の外を眺めながら、今、起こったことを反すうし考えてる。

やっと目線を本に戻してページをめくった瞬間。その文中に展開される状況に また衝撃が走る。
主人公である作者が図書館にいる。幼い女の子が近寄ってきて声をかけてくる。 という記述。強烈なシンクロニシティ。恐いくらいの偶然の一致。なんなんだ これは?!

ヴェトナム戦争元兵士だったアレン・ネルソンさんとの交流会なるものが行わ れ、戦争と平和に関する彼の講演と後半は地元ミュージシャンとのブルースセ ッションをやる、と昨晩ぼん蔵のマスターから聞いていたのでのぞきに行って みる。(セッションではマスターはドラムを叩くという)

通訳の人のテンポっつうかムードっつうか途中眠くなったりしちゃったが。
腐敗する人肉の臭いや火薬やオイルの焼ける臭いなど“戦争の臭い”はどんな にリアルな戦争映画でも伝えられないことだということが一番印象に残った。

嗅覚はもっともダイレクトに脳に刺激を与え残すからこそこの体験はほんとに 精神をこわすほど痛烈なものだったに違いない。

そしてアレンのさらに特殊な体験として。ある村の家に飛び込んだところ15歳 前後の少女が呆然と立ちつくしていたという。米兵に見つかってしまった恐怖 で逃げることもできずにいるのか。よく見ると少女の股の間からいままさに産 まれかけの赤ん坊の頭が!殺戮しか教わってこなかった若兵アレンは出産に立 ち会ったことすらない。お互いが身動きできずにうろたえあっている。が。ア レンはついに産み落とされた子をとっさに手を差し出し受け止めたという。

累々と死の臭いに満ちた戦場での新たな生の誕生と立ち会ったアレンは初めて 戦争というものを考え直したという。

生と死。生まれてきたということ。生きるということ。人生。老いてゆくとい うこと。そして。死ぬということ。ここ数日、本を読んでも人と出会っても、 そのことを真正面から突きつけられている僕。

夜はまたぼん蔵でだらりら。常連客と話が盛り上がり5、6時間も呑んだくれ。

宿に帰ると宿のおやぢと二人で音楽や芸術などについて語り呑む。


・(028)08/14/2003/北海道・釧路市(休坂)/
朝メシ喰ったらまた寝直す。目の前の火山が突然爆発噴火。ある程度の距離が あるためか周りの人々もそれほど危機感もなく噴火見物の雰囲気。この頃全国 各地で地震が続いてたし火山噴火は予想してたんだよなぁ。まさかこんな身近 なところで体験するとはおもわなかったけど。・・・っつう夢。
相変わらず夢を見てる最中は夢だと気付かない。でもこれは正夢、予知夢だっ たりして。

午後2時に起きて行動開始。そうだ二日風呂に入ってなかったなぁ。銭湯行く か。小ざっぱりしたら街へ。観光客相手の巨大な物産ビルみたいなとこに休憩 スペースがあったのでじっくり日記原稿書き。

7時を回ったらぼん蔵へ出勤(笑)。またまた長時間居座る。マスターが店閉 めたら残った客ともども今夜もちょっと他の店に繰り出す。

旅中というより、この街に引っ越してきて馴染みの店ができてその友達と呑み 歩いてるような気分になってくる。

そして朝帰り。5時半寝床に入る。


・(029)08/15/2003/北海道・釧路市(休坂)/
朝ご飯だよぉの声で起きてメシだけはしっかり喰って再び寝る。
お昼頃に“ぼん蔵”常連客で知り合いになったシュリさんがパソコンとDVD持 って訪ねて来てくれる。昨夜、いい映画があるからとオススメされ、僕も観た いと思ってた映画だったのだ。

その「キャラバン」という映画の内容については説明はしないが。情景や人々 に圧倒された。
ひとつ深く印象に残ったセリフがあった。
女「いつも自分勝手で自分のことしか考えてない」
男「じゃああなたはいつ自分のことを考えるんだ?」
女「・・・」(沈黙後立ち去る)

これはまったく僕の母に何度も突きつけられた言葉だった。そしていつも僕は この男のセリフを言おうとして飲み込んできた言葉だった。

まさかここでこのタイミングでこの状況でこんないい映画に出会えるとは。不 思議なもんだ。シュリさんありがとう。

また今晩もぼん蔵にゆこう。そして明日からまた歩きだそう。



・・・(つづく)[03.08.15] 海月
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