__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__ [03.07.15] ■ 〜海月の放流〜 039
□前回までのあらすじ: ●『見送り - send-off -』 今回からは旅先からの送信になるかも、と前回書いてはみたが。まだだった。 雨も止まず。ずえんぜん準備できちゃいない。別にあわててもいないが。 気が付くと2週間経ってた。この間についに自前のHPが誕生した。 そして。まだここでやるべきことが残っていたようだ。 旅立つ前に友人のおばあちゃんが亡くなった。その前日に友人とは会っていた のだった。急きょ葬式の受付をお手伝いさせてもらうことになった。おばあち ゃんとはそこで初めて出会いそして別れた。先達の新たな旅立ちに立ち会った。 僕は何を言ったらいいのか言葉を失いかけていたが。 僕の旅の最中にかけてもらったうれしい言葉をおばあちゃんにも伝えた。 「いってらっしゃい。よい旅を」 出会うというのはほんとに不思議。 「人はひとりでは生きてゆけない」 とよく言われるが。 「人は出会わずには生きてゆけない」 と言い換えた方がいいのかもしれん。 旅の途中の束の間の居候暮らしの間に、この友人と出会い、おばあちゃんの旅 立ちに立ち会えたことはつくづく不思議だった。 けれども。「人生が旅」であるなら、みんな旅の途中な訳で。旅の途中だから こそいろんな物事に遭遇し、出会えるのだろう。 東に結婚式あれば飛んでゆき、西にお葬式あれば立ち会い、北に南に旅立ちあ れば、いってらっしゃいと声をかけにゆく。そんなケンジの夢のようなフット ワークの軽みをいつも持っていたいと思うのだ。 「呼ばれる」ままに耳をすまして。 ・(B170)07/01/2003/神奈川県・相模原市/ HP制作作業黙々着々と進める。 気分転換には風呂場で一時間もかけてヒゲを切り揃える。 ・(B171)07/02/2003/神奈川県・相模原市(++東京・品川区)/ 年金免除願届出。運転免許更新。 友と合流し、原美術館に行ってみる。素敵な建物。 夜はもちろん呑む。 ・(B172)07/03/2003/神奈川県・相模原市/ 朝帰りで寝てるとこに友から電話。深刻そうな、泣き疲れて放心してるような 妙に落ち着いた声。おばあちゃんが息を引き取った、と。 僕はなんと声をかければいいのだろう。慰めの言葉の一つも出てきやしない。 つくづく自分のやさしさの無さ、無力さを感じずにはいられない。 改まった声で後ほど再び連絡が入り、葬式の受付をやってくれないか?と。 他に頼める人はいないのかと念を押すがぜひとのことなのでお手伝いさせてい ただくことにする。 僕も今夜は落ち着かないような、何も手に付かなくなるような放心状態に陥る。 ・(B173)07/04/2003/神奈川県・相模原市/ 僕がじたばたしてもしょうがない。 僕は僕のことを片付けておこう。HP制作準備を徐々に前進させる。 ・(B174)07/05/2003/神奈川県・相模原市/ 明日の告別式用にネクタイやら靴下やらを買い揃えておく。スーツはまだ斎藤 から借りっ放しだったので助かった。これももしかしたら単なる偶然ではない のかもしれない。 ・(B175)07/06/2003/神奈川県・相模原市(++東京・大田区)/ 親族内輪だけのひっそりこじんまりとした通夜だった。あらかじめそう言われ ていたのだが。僕だけが異質な部外者なはずなのに、前もって僕のことは皆に 伝えてあったらしく誰も僕を阻害することもなかった。僕は黙々とお手伝いさ せていただく。(僕のことは旅人の海月さんって伝えてあった、らしい) 亡くなってから通夜までに何日か自宅でゆっくりとお別れの準備をしていたた めか、諸々の手続きなどで慌ただしく過ごしていたためか、顔見知りの近親者 はとても気が張っているようで涙を見せはしなかった。 おばあちゃんの顔を拝ませていただく。うっすらと笑みすら感じる安らかな顔 だった。初めまして。おばあちゃんが僕をここに呼んでくれたんですね。あり がとう、旅立ちに立ち会わせていただいて。僕も一つ一つのシーンをしっかり と記憶します。 お清めにと、お酒を少しだけいただいて帰る。雨が降り出した。 ・(B176)07/07/2003/神奈川県・相模原市(++東京・大田区)/ 雨の朝。音をほとんど感じない。街もスローモーションで流れているよう。 身内だけの葬儀なので受付もすぐに終わってしまう。僕も焼香を済ませると参 列者の席で読経を聞く。 おばあちゃんは通りすがりの旅人の僕に何を伝えたかったのかずっと考えてい る。昨日初めて出会ったばかりのおばあちゃんは僕にその生き様そして死に様 をよく観ておきなさいと言っている。僕がそれを実感として「わかる」までに はきっとまだまだ時間がかかるだろう。けれどこの出会いと別れをちゃんと覚 えておこうと思った。 棺が開かれ手むけの花を皆で供える段になって、緊張の糸が切れたようだった。 友が一気に泣き崩れる。僕には何もできなかった。言葉も失う。けれど。僕が 旅の最中にはげまされた言葉を思い出し花とともにおばあちゃんに声をかける。 「いってらっしゃい。よい旅を」 棺が運び出され車に乗せられると親族を乗せたマイクロバスとともに火葬場へ 行ってしまった。突然スローモーションの世界が元に戻り街の音があふれ出す。 親族ではない僕は一人そこに取り残され途方に暮れる。雨の中、帰る。街も電 車も何事もなかったかのようにいつものあわただしさで流れてゆく。 帰りついたらまだ昼過ぎだったけれど、着替えてすぐに寝た。現実のスピード に耐えられなかった。 ・(B177)07/08/2003/神奈川県・相模原市/ 部屋から一歩も出ずにコンピュータに向かう。僕が今できることはやりかけの HP制作作業だけだ。淡々と試行錯誤を繰り返していく。僕がもし今突然死んで も名もなき旅人で終わってしまう。僕が残せるのはこれだけかもしれない。 ・(B178)07/09/2003/神奈川県・相模原市(++東京・品川区)/ 徹夜でHP制作一応終了。今日は僕の誕生日。HPも今日誕生ということになる。 友から連絡入る。先日のお礼も含めて誕生日をお祝いしたいとのことで再び東 京へ。悲しみに暮れているかと心配したが現実的なその後の手続き等でばたば たしてるようでかえって(見かけは)元気そうだった。 そんな状況の中で誕生日を祝ってもらうなんて恐縮するとともに感慨深い。 おばあちゃんが仕組んでくれた縁なのかもしれない。感謝。 ・(B179)07/10/2003/神奈川県・相模原市/ 若干の修正、追加をしてHP公開の最終チェック。また徹夜。 ・(B180)07/11/2003/神奈川県・相模原市/ 自前のHPがなんとか完成Open!一段落ついて昼過ぎに寝る。 起きたのは17時。シャワー浴びて。洗濯。メシ。 HP制作に根つめてたから完成と同時に、ふっ、と突然腑抜けてしまう。 次に何やろう? やるべきことはたくさんあるのだが。何から手を付けるべきか。 ずいぶん部屋を散らかし三昧にしてしまった。片付けよう。 あっちのものをこっちへ移動してるだけでちっとも片付かず。 乱雑に散らばったチラシやパンフや走り書きメモなどをまとめて捨てていると、 あっちにも紙類あったな。とだんだん、範囲がひろがる。 そのうち、捨てるもの残したいものの振り分けがはじまり。 いつのまにか旅の仕度に移行。今度は身軽に行きたいよなぁ。 わたる帰宅後。北海道のツーリングマップを間にわたるが行った当時の話を聞 く。大型バイクでさえもうんざり飽きる程の広さデカさ、らしい。徒歩となる とどうなることやら。そんな話を聞き地図を広げてみて、やっと旅モードの気 分になってきた。 7月に入ったら出発とは公言してたが。日が決まらなかった。節目やキッカケ がないと決めかねる。誕生日というのも考えたがそれどころではなかったし。 14日の満月というのもいいかもしれんが、準備がまだ全然間に合わない。 あとは梅雨の明けるタイミングをねらうか。 旅仕度にも増していろんな片付け整理手続き連絡、やること山盛りだなぁ。 ToDoリストを思い付くままに書きなぐる。 あぁ、手が腱鞘炎っぽい。マウスクリック、キータイプのし過ぎ。吐き気まで してきた。もう朝か。寝よ。 ・(B181)07/12/2003/神奈川県・相模原市++東京・武蔵境/ かつて勤めていた会社の同期連中(のり、うめ、ささき)と夜、呑むことに。 今日は朝7時に寝たのに。10時に目が覚めた。 天気が良くて、日当たりのいいこの部屋ではすでに暑くて。 んぢゃいっそ、飛び起きちまうか、ってんで。洗濯したり。ふとん干したり。 散らかり三昧だった部屋も片付けて。掃除機かけたり。 旅の準備としても、寝袋の繕いをちくちくやったり。 日中は洗濯ものがカリカリに乾くほどの天気で窓玄関全開だったのに。 夕方になっていざ出発という頃、アヤシイ雲行き。電車に乗った途端に大つぶ の雨がばたばたと落ちてくる。 八王子駅ホームで乗り換えのため電車待ちしてると。キオスクで何かを物色し てる二人のおばちゃん。 服装、髪型、体型がすべて“全く”同じ双子のおばちゃん。ほんの少しだけ靴 のマークが違ってた。後ろ姿しか見えないので顔は未確認だが。回り込んでじ ろじろ見るわけにもいかない。 しかし。すごい。ホームで一人、ニヤリと不敵な笑いを浮かべてしまった。 やぁやぁ。と友人たちと再会。お互い別にちっとも変わっちゃいない。懐かし くもなく久しぶり感もない。結構ブランクはあるはずなのだが。 まぁそういうお互いに放っぱらかしに出来る友というのは貴重でうれしい。 のりが前から気になっていた(がまだ入ったことない)というちょいとアヤシ げな店に入ってみる。のりのセンサーに引っかかるものなら大概オッケー。 実際、入ったら。どうしてればいいのかとまどうような店だったが徐々に居心 地よくなってくる、馴染んでくる。メニューが鉛筆手書きの小さなメモで手渡 されてから、座がこなれてきて、呑みも進む。 常連客が帰り始めたのでうちらも〆ると、なんとも安く上がった。おおっ! のりんちで呑みの続き。夜更け3時も回ると一人二人と座ったまま落ちてく。 僕はこの頃完全夜型生活なのでまだ眠くもない。 一人で珍しげにTVを凝視。 ・(B182)07/13/2003/東京・武蔵境++神奈川県・相模原市/ 明け方映画が始まる。いまさらながら「レナードの朝」を初めて観る。 役者もうまい人たちばかりのおかげですっかり入り込む。 泣く。ぼろぼろ涙が勝手にこぼれ落ちてく。「戻りました」に揺さぶられる。 旅に出る直前にこういう映画に出会うというのも何か縁というかシンクロニシ ティ。考えさせられる。 あぁ。観終わった後の切なさ。朝5時。ベランダで煙草ふかしてると土砂降り。 このまま誰にも何も告げずにこの雨の中、裸足で旅立ってしまいたくなる。 しかし。突然の睡魔強襲。崩れるように寝る。 昼前に起きたら雨は上がっていた。友たちがいる。なんて嬉しいことなんだ! わたるんちに帰えるとわたるが何かメシつくってる。ちょっともらう。うまし。 これも仕合わせなこと。 仕合わせな状況環境からあえて離れてしまうことを考え悩んでたら眠くなって きた。爆睡。長大な夢を見た。たくさんの友人知人たちが出演してくれた。 ・(B183)07/14/2003/神奈川県・相模原市/ 満月の今日旅立ちってのもいいタイミングかとひそかに考えていたが。準備は まだ出来ておらず。日記もまとめておかないと。梅雨明けのタイミングで出発 が理想的。 今日はとても寒い。あわてていろいろ着込む。そしてやたらに眠くてしょうが ない。これからの状況変化に備えていよいよカラダのつくり替えが起こり始め たのかもしれない。起きたら今度はやたらに腹が減る。一日に何回メシ喰って るのかわからない。 ほとんど冬眠前のケモノたちのようだな。夏なのに。(笑) ・・・(つづく)[03.07.14] 海月 |
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