__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[02.12.28] 

〜海月の放流〜 026

□前回までのあらすじ:
瀬戸内海沿岸を月光に導かれてぐるぐるゆるゆる漂う。/
海月の居場所をピンポイントで推理されて
平日にも関わらず2組に発見される。ぎゃふん。/
冬本番で野宿は泣き入りまくり。
友人や発見者たちの支援でなんとかしのいでる。


●『名前の由来 - 兵庫、和歌山、大阪の巻 -』

地名人名には名付け者のそれなりの想いが込められ、なるほど納得な名前にな ってる(ことが多い)。

当てもなく漂う日々、魅力的な地名に出会うとわくわくする。歩きながらそん な地名と同時に目に飛び込んでくるものと言えば。看板の文字だ。
それが店名であれば何屋かわかるようなダイレクトなネーミングになってるか、 添え書きがある。

しかし。店名にはミョーなものも少なくない。その意味不明度が高い程、僕は うれしくなっちゃって足取りも軽くなるのだった。

それにしても、だ。
「ラーメン てくにかるしょっぷ」ってのはどうなんでしょ。(笑)
コシのある麺は三つから選択。
太麺なら通信ケーブル、細麺ならワイヤー、ちぢれ麺なら電話コード。
この風味、うーん、ダシは皮手袋と安全靴をじっくり煮込んでる。
トッピング具材はパーツ箱から好きなだけどうぞ。
背脂かと思ったらマシン油がうっすらと・・・。
出前注文はネットでも受け付けます。配達はメールで添付。

いや、待てよ。もしかしたら。ラーメンづくりの技術相談とか成分分析とかの 事務所だったりして。科学的にいろいろ診断/調査してたりして。
麺の断面形状を調べたり顕微鏡で観察したり硬さを硬度計にかけたり引張試験 したり。温度、塩分濃度、ph、各種栄養素・・・、分析対象は多岐に渡る。
その上でおいしいラーメンにするための指導/コンサルタントしたりして。

わははははは。妄想が膨らむ店名歓迎!スキップスキップ。


・(342)12/20/2002/兵庫県・宝塚市++月見山-須磨-明石-淡路島・絵島/
日記の入稿は結局、昨夜も朝方までかかる。
短時間寝たら、ぶちまけていた荷物をまとめ再び歩きだす準備。のんびりして たらもう日が暮れる頃。そろそろゆこう。

電車で宝塚から須磨方面へ。駅名にひかれて月見山で下車。そこから歩き始め る。須磨の海浜公園でしばしぼやぼやと地図を眺めて月の出を待つがまだ早い ようだ。歩きながら待つとしよう。

月が昇ってきた。休憩。寒いので軽く酒もひっかける。今年最後の満月。やぁ やぁお月さん。今夜は長い夜になりそうだ。

海岸がとぎれたら国道を歩く。途中の酒屋でズブロッカ(草入り)を入手。休 憩のたびにちびちび飲る。酒の所為か月光の所為かすごくふわふらとご機嫌な 気分。わははは。ひとりで陽気なルナティック・ウォーク。

垂水の辺りでは明石海峡大橋のイルミナシオンと月を交互に見てはラッパ飲み。 そうか。冬はズブロッカがうまい!

月に背中を押されて明石港までたどり着く。と。ちょうどフェリーが出港寸前。 あたわたとチケット買って駆け込む。

デッキで月を仰ぎ見ながら淡路島まで20分の航海。

島に上陸。港からほど近い絵島。砂岩の小島はライトアップされ暗い海に幻想 的に浮かび上がる。和歌や平家物語にも登場する月の名所。
今夜の月は・・・あれ?雲間に見え隠れ。

橋がかかってる。渡る。今夜はここで寝よう。荷物を降ろして寝床をつくった ら、もう日付も変わる11:50pm。ふぅ。さすがに疲れたな。きゅっと飲んだら ぱっと寝る。


・(343)12/21/2002/兵庫県・淡路島・淡路町・岩屋-北淡町・江崎/
真夜中から雨が降りはじめる(泣)。なかったことにして寝続ける。屋根もな い所なのでビニールシートかぶってふて寝。びしょびしょ。

朝。まだまだ降ってる。砂地に寝てたのですべてびしょびしょどろどろ。ふぅ。 スローモーに泥水をぬぐいとりあえず、雨宿りできる所まで移動するためにパ ッキング。焼けっぱち気分ではあるが、何もあきらめてない。なぜか負けず嫌 い気質始動。頭の中ではブルーハーツが♪生まれたからには生きてやるっ!と 叫んでる。

港の待合室で荷物をパッキングし直してしばらく雨の様子見。今後の放心(笑 ・もとい)方針検討。さぁてここからどっちにゆこうか?

重い荷物背負って冷たい雨風の中を歩くのは“苦行/修行”くらいの気持ちじ ゃないと、やっとれんわ。
 ・天はニモツを与えた ずっしり

道の駅の休憩所で雨宿り。日記書いたりして数時間居座る。雨が止む気配は微 塵もない。

「三体月観月会」なるもののイベント情報を入手。魅力的。興味津津。

この道の駅では野宿はできそうにないので雨の中、移動。
車通りは多いが人家もなく寂しい道に打ち捨てられた廃屋発見。不法投棄場に なってるが雨風防げるし、割りときれいな服が山ほどあるので敷き詰めれば寝 床になる。よーし、今夜はここに決定。明日も雨が続くようなら止むまでここ に居てもいいな。

あっ!ビニールシート、絵島に忘れてきた。あれがないと今後大変だ。幸い今 日の移動距離は4、5kmだから取りに戻るか。ここに荷物置いて身軽にゆけば大 したことない。ついでにここに2、3日篭城できるだけの食料も調達しておこう。

買い物時間含めて往復2時間。戻ったら快適な寝床つくってロウソク灯して。 雨のこんちくしょうに乾杯!(笑)


・(344)12/22/2002/兵庫県・淡路島・北淡町江崎--一宮町(尾崎海水浴場)/
朝、がたがた音がした。不法投棄人かもしれない。寝袋で固まってた僕のこと は気付いたかどうか?

起きたら空がなんだか明るい。青空?おおー、予想外。ここに居座るつもりで いたけど。晴れたなら歩こう。ゆっくりメシ喰ってから荷物まとめて出発。

首輪はしてるけど繋がれてはいない犬が道路を縦横無尽に走り回り立ち止まり やってくる。車たちは犬の挙動にうろたえ徐行し止まる。
だらしなく長い舌べろでろりと垂らし、なんとも汚い奴だ。が。好きになれそ うな奴だ。
老いぼれだけど身は軽く足の向くまま気のむくまま、あっちのぞいたりガード に前足かけて海見てたり空見渡したり。道路のど真ん中を走る姿がなんともか っこいい。僕の後ろをしばらくついて歩いたり。
なんだか自分自身を眺めてるような気分。

仮にネコが自由の象徴だとすれば、イヌは服従なんて言葉が浮かんでくるが。 奴はまったく自由だった。首輪がかつての服従をひきずってはいるが既に解放 の世界に飛び出していた。奴もアウトサイダーだった。
 ・野良ほどに自由か 野ざらし

ノラさん元気かなぁ。山梨に棲む僕の心の師匠。僕の帽子はノラさんから引き 継いだもの。この旅でだいぶ僕に馴染んできましたよ。

海沿いに歩くと県道31号沿いに「緑の道しるべ」なる道の駅のような公園が点 々とあることを知る。お、これはいいぞ。これをたどりながらゆけば野宿場に も困らないかも。

酒がちょうど切れている。酒激安、が目に止まりふらふらと立ち寄ると。ズブ ロッカ安い!先日買った時よりもっと。520円。即買。

さて、日も落ちて。寝場所を探す。そう都合よく「緑の道しるべ」は、ない。 海水浴場の看板に誘われ横道に入っていくと。ひと気のないシーズンオフの浜。 しかし、トイレ清潔だし、その軒先も綺麗で、さらに電気まである。雨風防げ るし、今夜はここに決定!
海水浴場かぁ、今後そのテもあるな。


・(345)12/23/2002/兵庫県・淡路島・一宮町尾崎-五色町(慶野松原)/
天気よく風ぬるくご機嫌な一日。世間では連休最終日、だから僕を捜索してる 人が必死に動き回ってるかもしれない。なぜかくしゃみ連発。

午後を回って「緑の道しるべ」角川公園でのんびり海を見ながら休憩してる。 もうこの時間になってしまっては誰も僕のことなんかあきらめてるかもしれな いな。今日はとても気分がいいし今夜の寝場所の当てもついてもう少し、って 所だったので。ラジオのクリスマス特番聴きながらズブロッカ開封。

ほろ酔いに浮かれ足で再び歩きだす。スキップでもしかねない勢いのところに。 反対車線を走る車が突然ブレーキ。そして満面の笑みで手をブンブン振り回し ながら駆け寄ってくる。海月さーん!

ほろ酔いに浮かれ気分の僕は久しぶりの友人にでも会ったような気になってる。 あ、見つかったのか。

車止めておける場所もない狭い道なのでとりあえず車に乗って移動。
軽い興奮状態、お互い。話せば話すほど興味がつきないことばかり。共感共 鳴。やっぱり前世あたりで出会ってた人だったかな?(笑)

割烹料理屋に連れてってもらって、どぎまぎ。どれもうまそうなものばかり。 選びきれないのでおまかせで。酒も(面倒なので)湯呑みでくいくい。
いやー、なんともうれしいおいしい。
もう今夜はこの座敷で酔っぱらった勢いで寝たい(笑)。

今夜の寝場所として検討つけてた慶野松原まで送ってもらう。真っ暗闇の中、 一緒に寝場所調査。ここだ!ってとこがうまくあったので記念写真。わはは。

どっさりと酒の差入れまでいただいて感謝感謝。ご機嫌な一日だった。


・(346)12/24/2002/兵庫県・淡路島・五色町(慶野松原)-洲本市(平安浦)/
気温も割りと高く清清しい朝!快晴の青空が目の前の海の上に広がる。そして。 白い月がこれから海へ沈みゆく。今日もご機嫌な一日になりそうだぞぉ。

歩きだすと暑いほど。じゃんじゃん脱ぐ。

鳴門大橋の方まで行って淡路島一周でもしようかと思ってたが。
三体月観月会の詳細情報が知人からメールで飛び込んできた。ふむふむ。予定 変更。やはりゆこう再び熊野へ!

となると、日程的、予算的にはどっちがいいんだろう?鳴門大橋渡ってまた徳 島から和歌山のルートか?関空側に抜けるルートか?
やはり通ったことないルートがいいよなぁ。

決定。津名港めざそう。
今日中にはたどり着けないが。

当てにしてた途中の海岸が野宿には不適だったので、がっくり。
ご機嫌な一日ではあったけど日が暮れても寝床が見つからないと、めげる。
世はクリスマスムード満載でサンタはあちこちでピザ運んでる。ラジオもクリ スマスソングばっかり。こっちは真っ暗道でしょげしょげ。

スーパーの灯りだけが煌々としてる。ターキーもケーキも望まないが。ちょっ とゼイタクして惣菜のコロッケでも買うか。閉店間際で弁当半額。250円でチキ ン入りの弁当。店のレンジであつあつにあっためて店の横で大事に喰らう。

あぁ仕合わせ。

さて。もうちょっと歩こうか。浜に出てみる。さらさらの砂地では寝たくない。 後で荷物がすべてじゃりじゃりになってしまうから。海岸沿いをしばし歩くと 防砂林と海の間の堤防がなかなか良さげ。雨が降ったらアウトだが。この満天 の星空の様子なら今夜一晩はなんとかなるだろう。風も防げるし、ここに決定。

ロウソクを灯してみる。クリスマスとはなんの関係もないけど、落ち着ける場 を確保できたことに気をよくして、すっかりご機嫌。どっさりある差入れの酒 を端から味見。

ほろ酔いになってる頃、あっ!海のちょっと上に赤い光。おおっ、月か?
しばらくするとその赤い月からまっすぐ僕に向かって一本の赤い道が伸びる。 月光の道、海にゆれる。

あぁ。誰かに伝えたくて知らせたくて。あちこちにメールを送る。
メリークリスマスのフレーズとともに返信も返ってくる。

今夜も一人だけど孤独ではないな。うれしい夜。久しぶりに大声でうたう。
月を鏡にみんなに届け。僕を取り巻くすべては味方だった。僕を取り巻くすべ ての人達に感謝と、良い夜を。


・(347)12/25/2002/淡路島・洲本市--津名〜大阪・泉佐野++和歌山市/
今朝もいい朝。朝焼けきれい。のんびり出発準備。
ここから津名港までは大した距離ではない。船で大阪に渡ってからの計画はま ったく未定。とりあえず動いてみる。

港には次の出航の一時間前に着いた。三体月観月会を催す中辺路町の観光協会 に電話して参加の申し込みを取り付ける。

ふぅ。一段落。と安心したところに「海月さん?」って、見つかっちゃった。 クリスマスケーキまで携えてる。
船を一本遅らせることにして、車で街まで戻り、昼時なのでたらふくごちそう になる。うわーい、僕にもサンタがやってきた。

今朝もくしゃみ連発があったから見つかる予感はあったんだよなぁ。(笑)

ゆっくり話しをしながらメシ喰ってたら船の時刻が迫ってた。さらにまた一本 遅らせたって僕はかまわないのだが、ぎりぎり乗れそうなので、あたふたと握 手して別れ淡路島を離れる。雨が降り出してる。

さぁ困った。雨風厳しい。泉佐野港から無料送迎バスでりんくうタウン駅まで 送ってもらったのはいいが。これからどうする?
和歌山まで一気に電車に乗るつもりではあるけど。この雨の中で寝床をどうす る?

またネット屋で過ごすってテが無難だが。あまり早く行っても金がかかる。
予定が立たないのでとりあえず雨風しのげるりんくうタウンで日記書いて数時 間過ごす。問題の先送りしてるだけだが。モウロク爺、もう6時、か。

そろそろ動くか?ここに座ってると外の様子がまったくわからないが、駅には ずぶ濡れの人もやってきてる。やばし。ここに一晩中居るわけにもいかないし なぁ。

ホームに出たらものすごい風そして雨。さっみぃー。まいったにゃあ。

和歌山市までの電車の中はしばしの快適。

ふりだしにもどる。和歌山市駅。烈風吹き荒ぶ。辛うじて雨は止んでるが、い つ降り出してもおかしくない。
はふぅ。

「勝海舟寓居跡」えっ?ひっそりとこっそりと石碑が立ってた。
また幕末人物か。なんだかいろんなもんに呼ばれてるなぁ。

とりあえず前回来た時に目をつけておいた和歌山城下の公園行くか。
夜明かしはまたネット屋で、と思ってたが。
雨?あられ?もう酒飲んでふて寝するしかない。

寝袋にもぐりこんで縮こまって丸まって。何をどうしたって寒い。


・(348)12/26/2002/和歌山県・和歌山市++田辺市(--中辺路町)/
一睡もできなかった。朝まだ日も昇らぬうちから公園には散歩者たちが続々と 集結。僕は顔さえも出さずに丸まって人々が去るのをじっと待ってる。
きびきびとした号令のもとに早起き老人たちが体操してる風。
選りによっていやな所で寝てたもんだ。

やっと日が昇る。今日は天気が良さそうだ。今後の予定を立て、調べものする ためにネット屋行ってみるか。メールがたまってるし。まとめて返事書きしよ。

昼から移動。紀伊田辺まで電車。自分が歩いた道を車窓から眺めてると。ちょ っと懐かしさもある。が。スピードと見えるものが当然ながら違うことを痛感。

調べておいた安宿に部屋を確保。久しぶりの風呂。すごい垢。

三体月観月会を催す中辺路町観光協会から電話。「大雪のため中止」
なんてこった。和歌山と紀伊田辺の往復運賃と宿泊費がまるまるそっくりムダ になってしまった。それよりなにより。月をみんなで待つって行事自体がまた 来年までおあずけだぁ。はふぅ。脱力。

コンビニでカップラーメン買って帰って部屋でぼそぼそすする。たいしておも しろくもTVを夜中まで眺めてる。あーあ。

電気の明かりがあるといつまで経っても眠くならない。昨日はまったく寝てな いのに。


・(349)12/27/2002/和歌山県・田辺市++大阪府・高槻市/
高槻の友人・タケが仕事納めの後、実家に帰省するという情報をキャッチし、 車に便乗させてもらう交渉を水面下(謎)で進めていた。オッケーが出たので また電車で一気に大移動。

あまり早く行ってもタケの仕事が終わるまではどうしようもないので、田辺の 図書館で昼まで過ごす。なかなかおもしろい本を見つけた。
12/31-1/1年越しをどこで迎えるか考えていたが。ふむふむ、それもいいな。

日本を徒歩で。そういう旅をしたかった。そういう一年になった。
日本はやまとうみの島だとつくづく思った。船も多用した。昔の人の旅が少し だけ垣間見えた気もする。
が。昔人の旅の原点をまだはっきり見てなかった。これからもっと調べてみた い。まだまだもっともっと日本を見たい。

おっと、そろそろ出発しようか。
電車賃を安くあげるための裏技。紀伊田辺から高槻まで通しでチケットを買う のではなく。和歌山、天王寺でいったん改札出て切符を買いなおす作戦。
いつも情報検索を依頼してるMくんから聞いた作戦。
面倒ではあるが200円くらいは安く済んだ。
200円あれば2日分のパンが買える。

乗り継ぎにつぐ乗り継ぎ。待ち時間、乗り換え時間。車内はうとうととあたた かい。がホームで突っ立ってると凍える。
・吹きっさらしのホーム 五分後に発車

7時間もかけてようやく高槻到着。
タケとも真夏以来の再会。あの頃は缶ビールを傾けただけでも汗が流れたもの さ(笑)。ずいぶん大昔の話しのような気分。
晩メシおごってもらいながらお互いの夏から冬の間の近況を語り合う。

明日は早朝4時出発ということなのでタケは早々に寝る。僕は今回運転も交代 しなくていいことになったので、日記をまとめつつ、地図を凝視。

最終地点は決定したがタケんちからどういう経路でそこにゆくか決めかねてる。 大きな街では野宿は厳しいってのが一番やっかい。
海沿いは埋め立て地ばかりになってるし。
友人んちを転々と渡り歩くしかないか?

正月がやってくる。正月に向かって歩く。
・もういくつ野ざらせば正月


・・・(つづく)[02.12.28] 海月
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