__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[02.12.19] 

〜海月の放流〜 025

□前回までのあらすじ:
後回しにしようと思ってた四国に渡ってみる。/
雨風天候の変化と体調・精神状態が同調。
体調・精神状態の変化が天気まで変える?/
海月捜索ゲームはじまる。


●『漢字な感じ - 香川、兵庫の巻 -』

「今年一年を漢字一字で表すと・・・」というのが毎年発表される。FM香川の ラジオCMでもおもしろいこと言ってた。まんじゅうのじゅう、ぎょうざのざ。 饅頭、餃子、・・・(笑)。

僕の今年は丸々旅をしていたので、ずばり「旅」とも言える、が。もっとぴっ たりくる表現はないかな。酒?歩?漂?流?あ、「游」がいいな!


・(332)12/10/2002/香川県・高松市--/
ばたばたとチェックアウト。天気は悪くないが風強く寒い。
今日一日は次の町に移動するつもりはないので、邪魔な大荷物は駅のコインロ ッカーに突っ込んでしまう。

駅ビルの本屋で立ち読みした後、さて、どこか風が防げるとこはないか?
街ではどこに行っても金がかかる。逆に言えば金さえ払えば(たとえコーヒー 一杯でも)快適が手に入る。街はビンボー人には快適をわけてくれないのか。

中央公園で寝られそうな所を物色しつつ陽だまりベンチでしばし思案。ここで 夜寝るのはちょっと厳しいそうだな。

移動。香川大学の学生に友達でもいれば学内で寝るところなんてたくさんある のになぁ。(かつて僕は学校にこたつ、ふとん、自炊道具一切持ち込んで学校 に棲んでたからなぁ。ふふ)

電器店があったので赤い鳥HPをのぞく。もうとっくに僕が高松市内にいること はバレてる。さぁ来るか?

図書館に行ってみる。あぁここに一日中いられたらあったかくていいなぁ。
わくわくする本たちが手招き。おっこれはおもしろそう、あっこれも。まずは 1冊手にして手近なイスに座って読みはじめる。

一瞬、すっと殺気(?)を感じた。男女3人組がひそひそと僕を見ながら「あ の人じゃないの?」と言ってるような気がした。辺りをゆっくり見渡してもそ んな3人組なんかいなかった。気のせいか?自意識過剰か?(笑)

改めて本に没入しようとしてるところに、「海月さん?」と屈みこんで小声で ささやく人。えっ?えー!あ、はい。一瞬なにが起ったのかわからなかった。 あーあ、見つかちゃったぁ。
図書館内では話しもできないので二人で外に出る。

しばしもらい煙草で立ち話しをして、メシでも喰いましょうのお誘いにのって 車で移動。

たらふくうまいもの喰わせてもらいビールまで飲んで(彼は運転があるので、 僕だけ)しばしゆっくりといろんな話しをする。

僕の居場所を朝、HPで知った直後、「急に腹が痛くなって」(笑)会社を抜け 出してきたのだという。すげー、本気だ。しかもここにたどりつくまでにはあ らゆる推理を重ねてピンポイントを狙ったのだという。

いやー、やられたぁ。おみごと!としか言いようがない。僕がどの辺に出没す るかはわかってもタイミングが合わなければ出会えないんだからね。

最初はすっごく悔しくもあったが、こうしてゆっくり話しをしてるうちに出会 えてよかったと思えてきた。うれしい。

いままでの食生活から換算すれば3食分以上のメシを喰わせてもらって大満足 の時間を過ごした後、今夜の野宿場をさがすのを手伝ってもらう。地図で検討 つけてクルマで移動。あぁラクチン。しかし。実際、野宿するとなるとどこも びゅーびゅー風が吹き荒れてて厳しそう。まいったなぁ。

僕があまりにもすごいとこで寝ようとしてるのを見た発見者は実際の僕の旅の 様子を垣間見られたことだろう。

天気予報では今晩の最低気温は1度と聞いていたので、ほんとに迷った。で。 結局、今夜は健康ランドで過ごすことにした。発見者がご好意で少しカンパし てくれた。

駅で荷物をピックアップしてから移動。
楽しい日になりました。記念写真など撮って握手して「もう誰にも見つからな いでくださいね(笑)」と冗談半分に言われながら、別れる。
見つけてくれてほんとにありがとうございました。

健康ランドではいろんな風呂を体験しつつゆったりのんびり過ごす。今夜、や らなければならないことはまったくない。徹夜する必要もない。あぁ快適。

露天風呂から月!あぁいい一日。


・(333)12/11/2002/香川県・高松市--/
でっかいショッピングセンターがあった。電器店にネットコーナーもあった。 衣料品売場にはあたたかそうなダウンジャケット。指くわえて見てる。
百円ショップも物色。食料、酒も調達。
休憩コーナーで日記つけてぼやぼや。

赤い鳥のスタッフが四国に来ていたので、夜、合流。
メシもがっつり喰わせてもらう。昨日居た健康ランドが今日はサービスデーで 安いのを知っていたので、スタッフに提案すると、じゃあそこ行きましょう、 ってことになる。
ゆっくりゆったり湯に浸かって、今夜も露天風呂には月。

健康ランド的大食堂でアロハ着てあぐらかきながら、生ビールで乾杯!
やっほう!な待遇(笑)。


・(334)12/12/2002/香川県・高松市--小豆島・土庄町/
赤い鳥のスタッフは早朝5時頃には出発したようだ。大忙しだなぁ。
僕はあわてることもなくチェックアウトぎりぎりまでのんびりしてる。

さて。動くか。また船に乗る。小豆島。
フェリーの売店のおねいさんが僕に声をかけてくれて僕の旅のことをしきりに 感心してくれる。がんばってとお遍路さんに対するようなお接待としてみかん とパンをいただく。ありがとうございますぅ。

島に到着したらターミナルで地図入手。さーて、どうしたもんか。相変わらず なんの当てもない。もうすぐ日も暮れる。天気雨がパラパラ。寝場所さがそ。

つぶれたホテルの軒先に寝床確保。ふぅ。


・(335)12/13/2002/香川県・小豆島・土庄町--池田町(池田港近く)/
歩きだしたらすぐ、町立図書館の案内表示。呼ばれるままに足はそっちへ。
ちょうど開館時刻。居座る。山頭火、放哉を初めて読む。昼メシも喰わずに読 み耽ける。読む読むよむ。もう閉館時刻になってしまった。

今夜はどこで寝よう。真っ暗道をさまよう。今夜は雨も風もなさそうだから、 野ざらしで月を見下ろして酒飲んで寝る。


・(336)12/14/2002/香川県・小豆島・池田町--土庄町(道の駅・小海)/
本日ハ晴天ナリ。風ユルク暖カナ日和。快晴ノ空ニ游ブ。犬モ歩ケバ僕モ歩句。
 ・ゆるゆると流れる 歩けば
 ・すとんと座る青空に月
 ・高みから千枚田 地上絵かよ
 ・太陽を右手に月を左手に わははは

でっかい観音さんが僕に微笑む。あ、お月さんにか?

どでかい夕焼け。しまったぁ酒がきれてる。あぁこの高台で一杯やりたかった なぁ。町に下りるしかない。

今夜はなんだか浮かれ気分で。うれしい酒を飲みたい呑みたいのみたい!
太陽の東、月の西を歩くあるく。
やっと酒屋を見つけて。寝床確保して。月に乾杯!


・(337)12/15/2002/香川県・小豆島・土庄町--寒霞渓--内海町(太陽の丘)/
大部港で一服。さぁこれから延々と上り坂。遠い。

寒霞渓と言えば小豆島でも有名な観光スポット、らしいが。僕はむしろ山の上 の寝床になる東屋だとか月を見はらせる空に近い所を求めていただけだった。

かなりすばらしいとこがあったが。まだ日が落ちるまでには時間があったので 地図で見つけた「太陽の丘」ってとこをめざしてみることにする。

裏8景を下るとちょうど月。いい感じ。

しまったぁ。さっきのとこにしとけばよかったか?ってくらい遠かった。
しかも街灯などひとっつもない真っ暗道。下界の夜景は綺麗。
月の光だけを頼りに歩く進む。今日はやたらに歩いたなぁ。
月光吸いすぎたか?だんだんウォーカーズ・ハイ状態。疲れて泣き入ってるの にへらへらしてる。自分のバカさ加減が笑える。

やっと。やっと到着。お月さんお待たせ。さぁ一杯やろう。


・(338)12/16/2002/香川県・小豆島・内海町〜兵庫県・姫路市/
「太陽の丘」って名乗るだけあってすばらしい朝焼けとともに目覚める。
徐々に着々と明るくなる空。太陽の下には海を覆うように雲海。僕は雲より上 に居るのか。あぁ独り占めするにはもったいない光景。

雲の中を通って下界へ。今日は雨降るかもなぁ。

土日にお金を下ろせなかったので、所持金71円。
「神様、人はなぜ腹が減るのでしょう」はダンボールハウス・ガールのセリフ。 僕も何度つぶやいたことか。

自販機の下に100円玉!弘法さんの御加護か?

福田港。出航までまだ一時間半ある。近くに郵便局があった。
よかったぁ、これで船に乗れるメシ喰える。よーし姫路へ。

船中で地図広げて今後の大雑把なルート検討。とりあえず今夜は姫路市内の公 園にでも寝るか。雨が心配だなぁ。
・・・なんてこと考えてるうちに本州再上陸。

「海月みーっけ!!」ええー!?「海月さんですか?」の前置きさえなしにい きなり。待ち伏せかよ。ぎゃふん。

とりあえずメシでも喰いますか?のお誘いを受け喜びいさんでターミナル内の 茶店でカレーセット。(数日前からちょうどカレーを喰いたかったんだよね)

夫婦で、なんと倉敷からやってきたのだという。恐れ入りました。おとといは 小豆島捜索もしたらしい。それにしても。なぜこの時刻の船ってわかるのさ?

あれこれ話し込んで、酒と煙草の差入れやカンパまでいただいちゃって、うれ すぃー。雨が降り出しているので姫路駅まで車で送ってもらって。ありがとう。 がっちり握手して別れる。

駅の観光案内所で市内地図もらってあれこれ寝場所の検討。そうこうしてるう ちにどうやら雨は上がったようだ。でも。雲行きからすると油断もできない。

とりあえずこんなでかい市街地では野宿なんてできないから、中心地を離れる。 ショッピングセンターがあったのであれこれ買い出し。

あぁ、もうすっかり夜だなぁ。歩いても歩いても良さげな場所がみつからない。 腹減った。疲れた。

途方に暮れて泣きが入ると、あった!小さな鎮守の社。ああ、助かった。呼ん でくれてありがとうございます。ちょうどまた雨も降り出すが、もう大丈夫。

ゆっくり酒飲んで寝る。
真夜中。寒さに目が覚めると雲間に月!眼鏡かけてないと月は大きく見える。 わざわざ起こしてくれてありがとう。安心してまた寝る。


・(339)12/17/2002/兵庫県・姫路市--明石市(魚住)/
海だったものを見ている。昨夜の雨はすっかり上がり太陽はメラメラと水面を ゆらしている。右半身は冷たい冬の風に吹きさらされ左半身はメラメラの光に 照射されている。
両手で缶コーヒーを包み込む。熱い程だった缶はかじかむ手にあたたかさを伝 えきるとHOTとしての使命を終えた。飲み干した缶は急速に冷たく固くなって いく。
いつまでも缶をにぎりしめていた。缶をあたためるチカラは僕にはなかった。

姫路にもはや海はないのか。すぐそこにあるはずなのにコージョーたちはヒト を立ち入らせないのだ。海が失くなったことを隠し通したいのかもしれない。 隠し忘れた隙間をたどるとやっと岸壁にたどり着いた。
テトラポッドたちが累々と横たわっている。キチンキチンと組み合わされ整列 している。その几帳面さがコージョーの警告文のピリオドなのか?

足早に流れる雲に覆われていた太陽が再起をかけて光を投下するとトリたちが 着水した。ヒトが触れることを許されなくなった海にトリたちは漂っている。

左半身がまたあたたかくなったのでもうゆくことにする。僕に許されてるのは 道を歩くことだけなのか。
立ち去ろうとする僕を引き留める声。にゃあにゃあもうちょっと待て。尻尾の 太く長いネコだ。太陽も寄ってくる。ネコとふたりで。海を見ている。
目線を彼方に伸ばせば島々が浮かぶ。

ありがとう名も無きネコ。僕は。海を見たよ。そろそろゆくよ。

歩く歩くひたすら歩く。高砂、播磨。おそらくかつては海岸線沿いだったであ ろう道だ。今や埋め立て拡張された陸地によって海は遠ざけられてしまったが。 きっとここらの海から月を眺めては歌が読まれたことだろうに。

すっかり夜。もう限界。ラジオからThe Tripmeterの「スローダウン」が流れる。
♪そこで曲がりなさい そして 休みなさい
うたと月光に導かれるままに横道に入ってゆくと。あった。海だ。

打ち寄せられ打ち捨てられた廃材の板切れを利用してテトラポッドに寝床をつ くる。案外快適な月見場ができた。今夜は雨が降ることはなかろう。

波音を聴きながら彼方の船の灯と月を見て。さぁ呑もうか。
オリオンのまん中の3つ星の延長線上に月が居る。月がオリオンを牽引してる みたいだ。
月がとっても明るいから夜空に飛行機雲が見えた。


・(340)12/18/2002/兵庫県・明石市(魚住)--明石++宝塚市/
朝焼けに目覚める。今朝も冷え込んだなぁ。屋根がないと冷気の重さは相当な もんだ。

チーズとマヨネーズとともにかたいパンにかじりつきカンパンを噛み砕く。
歩きだせるだけの最小限の体温と体力を確保。ゆこう。

しばらく通学途中の小学生たちとは逆流するように進む。
かじかんだ手にコーヒーが欲しい。コンビニに立ち寄り休憩。

昼前に明石の街まで歩き着く。連絡がとれた友との再会の約束時刻が近いので 電車に乗ってワープ。日本標準時の起点の子午線135度線を通過。

びゅんびゅん大都会に近付いてく。これが電車の速度。そしてどんどん人が増 える。スピードと人口密度には関係があるのだ。

かつて歩いた道の横を電車から眺めてるとなんだかなつかしい気分。あの時は 真夏だったのだ。

4ヶ月ぶりにタカシくんと再会。彼の言葉に甘えて彼の部屋で日記まとめたり 束の間の休養と栄養を摂ることに。

夜はタカシくんも予定があるらしい。僕も珍しく予定がある。これまた4ヶ月 ぶりに尼崎のユカと再会し、メシをおごってもらおうって寸法だ(笑)。

西ノ宮駅構内で待ち合わせ、三ノ宮に移動。ルミナリエを見ようってわけだ。 が。点灯の瞬間を見ようっていう人々の大行列におののき、先にメシ。

中華街で行列してない店をあえて選んで(それでもすっごくおいしかった)喰 いたいものを片っ端から平らげていった。つくづく喰いだめができたらと思う。

おそらくこの中華街広しと言えども僕ほどおいしく味わえた人も少ないだろう。 ハングリーな旅のごほうび。

ルミナリエの行列はまだまだ長く続いていたが。並ぶことにする。これだけの 群衆をなにか利用することはできないものだろうか?なにかエネルギーとして 変換することで、それこそルミナリエの電灯を灯す電気を起せる気もするんだ が。

鎮魂歌が流れる光のアーチ。
ルミナリエが始まったのは1995年で。震災の年で。モンゴルに行った年で。
ユカたちに出会った年で。なんだかとても感慨深く見上げて歩いたよ。

あ、お月さん。ルミナリエの灯もすごいけど。負けてないね。

まだ夜9時。もうちょっと呑もうってことになる。

今年2002年を振り返ってみたりする。
そうだ1月1日!成田空港でユカにメシおごってもらったんだよなぁ。
見送る側がおごってもらうってのも妙な話しだったが。
そこから始まった一年だったんだよなぁ。

ユカにはほんと世話になりっぱなし。ありがとう。
この恩をユカに直接返せる日が来るかわからないけれど。
また、この一年の旅の間に名も無き者として出会った人々には何も直接返すこ とはできないだろう。 でも。
いつか。
何かのカタチで別の誰かに返すことができたら・・・。返したい、返そう。
そうやってもらったタスキを次に伝えることがきっと僕ができること。僕がし たいこと。続けて繋げてゆきたいな。

もう少し。あと一歩あと半歩。歩いてみよう。
「とりあえず、生きてりゃ成功!」これが今の僕の座右の銘(笑)。

大丈夫。弱っちく見えても僕はいろんなモノたちに守られてる、たぶん。

ごちそうさまでした。ありがとう。おいしかったたのしかったうれしかった。

宝塚に戻るとタカシくんとまた呑む。ベランダで煙草くゆらせながら月を仰ぎ 見る。僕が彼に伝えられることはなんだろう。僕が彼から伝えられることはな んだろう。思い付くままにお互い友人として語り合う夜は更けゆく。


・(341)12/19/2002/兵庫県・宝塚市/
一日中一歩たりとも外に出ない日。雨降ってるし日記原稿をまとめなきゃなら んし。

朝7時半には起きたものの頭ぼけぼけ。学校があるタカシくんが出掛けても寝 直すことはなかったがしばしぼやぼや。

午前中は使い物にならない人だった。
久しぶりにTVの2時間ドラマに集中してしまった。水谷豊主演「クリスマスの 逃亡者」。タイトルがなんだかどこかの誰かっぽいぞ(笑)。

泣けた泣いた。ひとりでぼろぼろ涙こぼして感動。まいったにゃあ。何してん だろ午前中から僕は。

勝手に昼メシ喰って、いざ“仕事”するかって頃、急激に睡魔が強襲。豪沈。

いかにも一人暮らしの学生らしく散らかり放題のキッチンの洗いものを片付け て気分転換。(試験勉強中に机の掃除/整理を始める癖は治ってないなぁ・笑)

メールの返事書きを済ませて。夜になってやっと日記をまとめだす。

タカシくんが帰ってくると大量のカレーをつくってくれた。今夜も満腹。ごち そうさま。

よっしゃあ気合い入れなおして日記まとめるぞぉ。いや日記なんてそんな気合 いは必要ないと思いますがね。(笑)

よし。これで今日の分は終わりっと。

さぁ明日の満月はどんなかな。今年最後の満月。天気が心配だなぁ。てるてる 坊主でも吊すか?ふふ。
昼間のんびりしてヒルネでもしといて。夜、月を見ながら歩いてみようかなぁ。 あ、それじゃあ月見酒が楽しめないか。まぁ両方楽しめばいいか。


・・・(つづく)[02.12.19] 海月
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