__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[02.11.30] 

〜海月の放流〜 023

□前回までのあらすじ:
紀伊長島のゴトーさんとこに居候させてもらいつつ、
頼まれたHP作成をゼロから勉強してなんとかする。
寒くなってきた。もう冬がはじまる。


●『それだけでうれしい - 三重、和歌山の巻 -』

ラジオの気象予報官はうれしそうに言い放ったんだ。「この冬一番の寒さです」
おいおい。いつから冬になったの?

まぁいいさ。確かにもうとっくに冬さ。そりゃあもう泣くほど寒いさ。
野宿なんかしてたら冷蔵庫の中より寒いんだもん。
どうしたら寒さを防いで寝られるか試行錯誤してるうちに朝になっちゃって
自分のバカさ加減にまた泣きたくなるさ。

冬将軍に連戦連敗の旅で若干投げやり風だね(笑)。

そんな今日この頃だけどね。木枯らし吹き荒れる日に。例えば。
歩いてく先に伸び上がる虹。
風の吹きこまないひだまり。
一日一本のゼイタクにあったかい缶コーヒー。
新たな地域に入って飛び込んできた新たなラジオ局の放送。
全部食べっちゃったと思ってたのに袋の底に残ってたピーナツチョコ。
登下校中のこどもたちにかけられる挨拶。
冴々と煌々と輝く白い月。
ふとした拍子に思い出したうた。

こういうのが同時にではなくてもたった一つでもあるとね。
それだけでうれしい。

たったそれだけのこと。その後にまた泣きが入っても。でもね。
それだけでもうれしいんだよ。それだけでうれしい。
そういううたも思い出したよ。


・(308)11/16/2002/三重県・紀伊長島町(ゴトー宅)/
ゴトーさんに頼まれた新聞整理。気が付いたら6時間も休憩もとらずに熱中し てた。ふぅ。なんとか片付いた。

昨夜奥さんと意見衝突?してしまった(HP制作に対する僕のモチベーションが 低下してしまったことを告げた)ので顔をあわせ辛かった。が。
晩メシのときにはなんとか今まで通りに話しができるようになってた。はぁ。 よかった。

さあ、いろんなことも片付いた。いよいよ明日からまた動きだそう。


・(309)11/17/2002/三重県・紀伊長島町(ゴトー宅)--海山町(始神峠)/
昨日までよりちょっとだけ早起きして。散乱してた旅道具をまとめて。部屋を 片付けて。
最後にHP運営上の話をして。そろそろゆこうか。ずいぶん長居させてもらいま した。ありがとう。すぐに喰えるものをいろいろいただいたりもして。
ぢゃ、行って来ます。

久しぶりの荷物が重く、よろよろよたた。

今夜の寝る場所どうしよう。そればかり考えて歩いてる。以前も歩いた国道を 歩くのは親近感がありつつも「確かこの先に・・・」と期待してる場所になか なかたどりつけなくて気が滅入る。未知の道の不安より、期待や先行知識が心 に厄介な反動をもたらすことって時にある。

アクセスルートを変えて始神峠へ。およそ一ヶ月ぶりに山道を歩く。
キツイにゃあ。
月の通り道が前回来た時と違うが、月を見上げながら初寝袋野宿。さっむーい。


・(310)11/18/2002/三重県・海山町(始神峠)--尾鷲市/
さぶいぃ。寝袋からなかなか抜け出せない。
屋根のない所での野宿は雨が降ってなくても夜露でびっしょりになる。対策を 考えねば。

20日の満月を百夜月で眺めようと思ったらもうかなり急がねば。でも途中の尾 鷲で津村さんちを素通りしたくもないし。やっぱりちょっと寄ってこ。

偶然、道でマモさんの車とすれちがう。ちょっとだけ話しをする。あ、そう言 えば選挙どうなったのかな?

釜場に上ってみると誰もいない。ありゃりゃ。一服してたら津村父がやってき た。なんにも連絡せずに突然やってきたからびっくりしたみたい。この一週間、 マモさんの選挙で仕事にならなかったという。選挙は昨日投票及び開票。で。 マモさんは当選!めでたい。

家に連れてってもらうと津村母は選挙のお礼や祝いの電話対応、挨拶回りで大 変そう。家にも続々と祝いの品が届き、家中ごたごた。
そんな中アポなしでやってきたけれどこころよく迎え入れてもらって、もらい ものの残り物で悪いけどと言いつつごちそうをふるまってもらう。

たらふくごちそうになった後。少しでも百夜月に近付くために前に進みたい、 距離をかせぎたい、ので、夜中ちょっと歩くことにする。
今回は何も仕事もしなかったのに旅の資金にとカンパまでもらっちゃった。 途中まで車で送ってもらう。

さて真っ暗道をひとり歩きだす。寒すぎて泣きそう。津村さんちに泊めてもら えばよかったよぉ。でも。今夜はしし座流星群が見えるかも。

夜中に歩道のない国道を歩くのは車が恐すぎるので、あきらめて国道脇で野宿。 月が綺麗。震えながら寝袋にくるまって空を眺めてる。山に切り取られた空の 方角が悪いのか流星は見えない。12時過ぎまでねばるが寒すぎて顔も出してら れない。

ラジオではバンプ・オブ・チキンの特集。この人のうたを聴くといつも思う。 この人はもしかしたら自分の寿命を知ってるんじゃないのか?って。
元気や勇気を感じつつも、ぢっと耳を傾けてるとなぜか切なくなる。

ヴォーカリストは語った。
冬が寒くて良かった。夏が暑くて良かった。
世界がこの形で良かった。この時代に生まれて良かった。
自分が自分で良かった・・・。

寝袋で縮こまりながら涙目になりながら震える手で思わず拍手してた。共鳴。


・(311)11/19/2002/三重県・尾鷲市--熊野市・飛鳥/
寒くてほとんど眠れなかった。夜露でなんもかもびしょぬれ。

熊野市街をめざしてバスに乗るか、それとも未知の山間部の紅葉の様子を見て 歩くか。分岐点のギリギリまで迷い、後者を選ぶことにする。たぶん、これが 海月の習性。

うひょお寒いよぉ。やっぱり海沿いの方がよかったかなぁ。泣き入りまくり。 日が暮れる。どこにもたどりつかない。真っ暗やみの道を歩くのも恐い。

誰にもとがめられずに野宿できそうな廃道に入り込んで寝場所確保。ちょうど 月が昇ってきたらずいぶん明るい空間。また震えながら寝袋で夜空を眺めてる。 今夜も流星は見えなかった。今年は結局見られなかったかぁ、残念。


・(312)11/20/2002/三重県・熊野市・飛鳥--大河原(高倉神社)/
7:30起床。さっむう。白湯の一杯でもあれば助かるんだけどなぁ。動いてあた たかくなるしかない。体温上昇を待って9時出発。

今日、満月。百夜月までワープするためにバスに乗りたかったが、バス路線自 体がない。はぁ。歩くしかない。

七色ダムへと向かう道。紅葉美し。不思議な色の川。乳白色にエメラルドグリ ーンを混ぜたような色。こんな所になら仙人とか伝説の生き物(龍とか麒麟と か)がいてもおかしくない。

七色ダムを見下ろしながら昼メシ。別にどこも七色ではないが。あ、ここまで の道みちの紅葉や川の色たちがそうかぁ。
軽く酒をひっかけてみる。酔ってしまってもう歩けないがあまりにも寒いので あたたまりたい。

午前中は天気がよかったのに空がだんだんかげってきた。寒いよ。気が滅入る。

日没まであと一時間くらい。いつもならこの一時間歩いてから寝場所をさがす がもう動きたくない。ちょうど高倉神社というのがあった。小さな、村の鎮守 風。誰もいないが休憩所のような小屋があったのでここに避難。
屋根があるだけで寒さが全然違う。

夜中、寝ていると鹿や猪の気配。すぐ近くまで来てる。なんだなんだ?誰だ誰 だ?と僕を偵察に来たのかもしれないね。
僕はあやしいものですが(笑)危害を加えたりはしませんよぉ。


・(313)11/21/2002/三重県・熊野市-和歌山県・北山村-熊野川町-本宮町/
橋を渡ると和歌山県・北山村。「全国唯一の飛地の村」らしい。地図を見ると この辺の三重県奈良県和歌山県の境界線はとても複雑に入り組んでる。

かなり疲れがたまってる。寒くてほとんど熟睡できてないことが続いてるため だろうか。でも今日は天気が良く、気分も晴れる。

国道169号と名乗ってはいるもののただの林道だよこりゃってな道が続く。
トンネルこわい。あ、500円みっけ。しばし歩くとまた50円みっけ。

このペースで歩いてたら今夜も百夜月にはたどりつけないな、と思ってるとこ ろに、兄ちゃんどこまで行くの?とトラックが止まってくれる。ほいほい乗せ てもらう。
山道を快調に走りながら百夜月(ももよづき)の話しを聞く。現在は住民夫婦 の二人とも入院中で誰もおらず、今行っても川を渡れないらしい。うー残念。 川越しに眺める。やっぱりとてもいい感じの場所。またいつかチャンスがあれ ば訪ねてみたい。

大きな国道168号まで出た所で下ろしてもらう。ありがとうございました。
さて。新宮に南下しようか本宮に北上しようか?
えいやっで本宮に決定。この道は以前本宮大社から歩いた道なのでつまらない。 バスに乗っちゃう。あったかーい。このままここで眠りたい。

終点の本宮大社まで直行せずに途中三つの温泉地を経由。あぁ温泉いいなぁ。 こんな温泉街で一泊したいなぁ。金ないなぁ。

本宮大社到着、550円。おおっちょうど今日拾ったお金が役に立った。

さあ辺りはすっかり真っ暗やみ。どうするどうする。ここから4、5km離れた所 に道の駅があるようだ。あと一時間くらい歩くか。

疲れ果てた。あったかい缶コーヒーで冷たく凍える体を解凍。
月が昇ってきて綺麗だ。けれど今夜は風が強くとても吹きっさらしのベンチじ ゃ眠れそうもない。

うろうろ辺りを偵察すると木製小型天体観測ドーム(謎)が放置されてる?? 中に入ると二階もあって人一人真横になれるだけのスペースはあるし、なによ り風が遮られてあたたかい。やったぁ!今夜はここにお邪魔しますぅ。


・(314)11/22/2002/和歌山県・本宮町--中辺路町--大塔村/
夜明け直前の早朝から動きだす。朝焼けが綺麗。
熊野古道の案内板が目に止まったのでそこを歩くことに決定。ここからだと田 辺の海へ抜ける中辺路ルート。道みちに王子がまつってある。

お昼に中世古さんに電話しなければならない約束があるのでかなりのハイスピ ード。下り坂はダッシュで駆け下りる!背中の15kgがズシンドシンと容赦ない。 キツイキツイキツイ。ふーはーふーはー。

12時には山から下りられず、たぶん3時くらいまではムリそう。

2時頃国道に出る。がケータイの時代に公衆電話なんてこの世界から消え失せ てしまったんじゃなかろうかってくらい電話がない。困った。あと一時間くら い歩けば中辺路町の道の駅があるからなんとかそこまでゆこう。

予定通り3時頃、道の駅到着。中世古さんに電話すると話しの途中で切れた。 向こうは圏外になったらしい。
一服してるところへ「海月くんみーつけたっ!」と中世古さん。ドンピシャの タイミング。電話では居場所が最後まで伝わらなかったらしいが言葉の切れ端 から推理してみたらしい。(なんだか「赤い鳥」の企画みたいだな・笑)

中世古さんと今回合流したのは。中世古さんの知り合いの忘年会がおもしろい からと誘ってもらったからだ。会場となるのは墨職人の堀池さんの工房。集う のは熊野修験の行者さんたち、そして、かの高木亮英さんもいらっしゃるかも、 らしい。
忘年会自体は明日本番だが準備などもあるしなにより居心地がいい場所らしい ので前日入り。
と、その前に二人で温泉へ。やっほう!一週間くらいフロに入ってなかったし あったかい湯は夢にまで出てくるほどのあこがれだったので、うれしい。

堀池工房に到着したのはもうすっかり真っ暗になってからだったので敷地の全 体像がまったくわからないが、山の中の工房のすぐ脇には川も流れなんだかい いぞ。
突然、得体の知れない海月と名乗る人間がやってきたにも関わらずこころよく 迎え入れてもらう。こっちは人見知りする性質だから恐縮しきりだが。忘年会 の前夜祭のように飲みはじめるとくだけはしないけど徐々にゆるんでくる。

あったかい部屋で前日入りしてる人々は各々寝袋で雑魚寝。


・(315)11/23/2002/和歌山県・大塔村/
宴準備のため会場の掃除やら支度。ほかほかの日和。ひなたに布団、寝袋干し。 客人が集まりだすまで、あとはのんびりの午後。
中世古さんは大きな紙に書を仕上げる。佐藤さんは恒例好評のそばの試し打ち。 僕はプロセスを全部見ながら話しを聞きながらそれらを傍らでのんびり眺めて すごす。そばもうまし。

日暮れ前から徐々に人が集まりだす。人手が多過ぎて結局何も手伝えず手持ち 不沙汰。食事の準備はもう達者な人にまかせて手の空いた人達でまた昨日の温 泉でさっぱりしてくる。

庭で炭火を囲みながら宴の始まり。海の幸山の幸がじゃんじゃん炭火であぶら れ刺身も鍋もある。
知人がほとんどいないので遠慮がちに隅っこでひとりひっそり酒を飲んでる。 それでもおいしいものはちょっとずつ味わう。

今夜の特別ゲストとしてなんとTHISの二人も呼んでるらしい。
腹が出来上がったちょうどいいタイミングで登場。二人はびっくりしてる。
わははは。まさかここでまた再会するとは思ってもみなかったでしょ。

雨がパラついてきた。特急撤収して室内に座を移す。

ライブ。THISを初めて聴く人々がどんな反応をしどんな印象を持つのか、なぜ かそれが気になってしまってる。僕自身が聴くことに集中してない。ナニカが 僕を解き放ってくれない。

宴はまだまだ続く。夜は始まったばかり。料理も酒も火もまだまだある。

月の出を僕はひとり待ちわびる。幸い雨は止んだ。
早く出てこいお月さん出ないとハサミでちょん切るぞ。
楽しいはずの座に入り込めずひとり外で月待ち。
これは参加者の所為ではなく僕の精神状態の所為。20人近くのたくさんの人に いっぺんに出会って人酔いしてしまってるのかも。

やっと山の裏から月が昇ってきた。うれしくってTHISの二人を外に誘い出す。 焚火をたくと人々も集まってきて、火を囲んでゆっくり語る場。

うたいたくなったのでいつもうたううたをうたう。やっとほぐれてきたか。

修験者のオダさんと意気投合して話しが盛り上がってくる。火を囲む人々も巻 き込みつつ。
気が付くと一人また一人と寝にいってしまうが、それもそのはず、もう朝にな る。結局、オダさんと僕は完徹してしまう。

朝メシの茶がゆを食べてから起きだしてくる人と入れ替わりに僕は3時間ほど 寝る。


・(316)11/24/2002/和歌山県・大塔村--白浜町--田辺市/
宴の片付けも手伝えず、すみません。起きると二度めの茶がゆが待っててくれ る。おいしい。オダさんは寝なかったらしい。片目ずつ眠ったから大丈夫、だ って(笑)。

中世古さんもTHISも出発するというので僕もそろそろ。堀池さんにはほんとに お世話になりました。当てもなく旅するってことに心配してくれておみやげに りんごやみかんももらっちゃって。

シバタさんに白浜の海まで車で送ってもらうことに。

僕の精神的体力がもっと充実してる時に改めてまたゆっくり話しをしたい人た ちだったなぁ。いっぺんにたくさんの人と出会って人疲れしたのかもしれない。

白浜に到着したのはいいが、風強くどんよりとした天気。
一時間もぼーっと海を眺めてる。
ちょっとゆっくりしようか。久しぶりに宿にでも泊まって洗濯したり荷物の整 理して、気分一新、これからの旅に備えようか。

白浜は観光温泉地で宿も安くないから、近くの紀伊田辺に移動してしまおう。 ちょうど目の前の電車に飛び乗るとあっと言うまに街。チェックイン時刻にも ちょうどいい。

ザックの荷物をぜーんぶ部屋にぶちまけると不要になったパンフやらゴミやら をまとめ、あたたかいシャワーを浴びる。
着てたものも全部洗濯する。宿にはコインランドリーはないが従業員用の洗濯 機と乾燥機を無料で貸してもらえた。洗濯の完了を待つ間はインターネットコ ーナーで友人知人たちのHPをぶらぶら(これも無料)。
宿代5500円の出費は所持金からするとかなり痛いが朝食も無料サービスと言う し一人でじっくりゆっくりできるのでよしとしよう。

夜、久しぶりにTVで映画を観る。「ダンボールハウスガール」突然ホームレス になってしまった女の話。自分の旅生活の日々の記憶と共感と違和感。たとえ 段ボールであったとしても帰る家があり待つ人がいるっていうのはとても恵ま れてるな、なんて見方をしてたりして。

宿に泊まってるうちに片付けておかなければならないことを紙にリストアップ してはじから片付けてく。
突然の睡魔。もう3時かぁ。全部終ってないけど寝よ。
もう一泊くらいゆっくりしたいなぁ。まったく金が足りないので無理だけど。


・(317)11/25/2002/和歌山県・田辺市--南部町/
7時半起床。窓開けると、雨。はふー。まいるなぁ。朝食だけはモリモリ喰い 溜め。

時間ギリギリまで天気の様子をみてチェックアウト。雨の中、歩きだす。
公園の雨のしのげる場所で雨の海を眺めながら途方に暮れつつ日記のメモ書き。 雨、止みそうもないなぁ。どうしよう、どこ行こう。歩くしかないよなぁ。

雨中歩くのツライばかり。疲れてもへたり込める所がない。
夕方、止む気配をみせるが傘をたたむとまたパラパラ。
歩道のない国道ではダンプの風圧にあおられ、もうやんなっちゃう。

かつてのそんな日々を思い出したりしてる。そうだ、その時も精神的体力が落 ちてた。天気が気を滅入らせてると同時に気分が天気に作用しているってこと もあるんじゃなかろうか?

日が暮れた。雨がしのげる所をはやく見つけて休みたい。
国道に平行して走る真っ暗なローカル道を当てもなく歩くと。屋根付きのワラ 置き場を発見!助かったぁ。ここで寝よう。


・(318)11/26/2002/和歌山県・南部町--川辺町/
6時直前起床。朝焼けが美しい。7時出発。
行く手に虹!ドライバーたちは気付いてるだろか?見てみて虹だよ。

天気は良くなったが風強く雲はやし。西から大きな雨雲が続々とやってくる。 晴れてたかと思うと急にパラパラくる。

地図でみつけた「天文公園」。公園なら野宿できるかもって理由で行ってみる と。これがすっごく広くて見晴らしもいい。観星塔やプラネタリウムもある。 ちょうどプラネタリウムの始まる時刻が近付いていたので500円はらって見てみ る。ぢつは“なんちゃらリウム”ファン・笑)

前半は秋の星座のおはなし。後半は絵本「せいめいのれきし」(大好き!)を ミニ映画化したもの。あぁ、楽しかった。
それにここはとてもあたたかくてこのままここで眠りたいよぉ。

なんとここの施設には宿泊もできるらしい。しかも宿泊者には特別に観望会と いうプログラムがついてるらしい。うぉー泊まりたいぃ。

さらに僕の心をぐわりと揺さぶる事態が。外は土砂降り。なんてこった。宿泊 料金を確認。4500円。絶対値としては安いが相対値としては今の僕にはムリ。 ああ、まったくないわけではないがここで使ってしまったら明日から動けなく なる。ああああああ。

あきらめよう。
あれこれ悩んでる間に雨は上がったようだ。がきっと今夜はまた降るだろう。 どっかこの辺で(公園敷地内は完全に管理されてるのでムリ)屋根のある所を 捜さねば。

野宿場をやっと見つけた頃、雷が近くに落ちたようだ。またすごい雨。いや雹 だ。うひょうなどと駄洒落もでない(泣)。


・(319)11/27/2002/和歌山県・川辺町--広川町/
朝少し雨のち晴れ。風冷たし。寒いよぉ。

御坊駅にて。沖縄の宿・柏屋のカメちゃんに電話。昨日留守電が入ってたんだ。 現在、東京・吉祥寺に居るとのこと。吉祥寺ならとっておきの呑み屋があるの で伝える。彼もその情報も聞きたくて昨日電話してくれたみたい。
さらに。こどもが生まれたんだって。おめでとう!
電話中はしばし旅中の寒さから現実逃避。(日常の現実逃避に旅に出る人はい るが旅の現実逃避にひとの日常を聞いてるってのもおかしなもんだ)

風をしのげる寝場所がなかなか見つからない。また日が暮れる。辺り一面みか ん畑。積んであるプラスティックコンテナを利用して簡易ベッドをつくりやっ と今夜の寝床を確保。ただし青天井。雨だけは降らないでくれい。真剣に祈る。


・(320)11/28/2002/和歌山県・広川町--湯浅町/
それだけでうれしいっていう小さなことがいくつも起こる。

歩いてる道みちに熊野古道の案内板を見かける。今は熊野古道を歩いてる意識 もないのだが知らないうちに熊野古道をたどっていたようだ。

一面みかん畑の山に入ってゆく。古道は続く。なんだかひとんちの畑の私道の ようで、いつ行き止まりになってしまうか不安になる。でも所々に案内板があ るから大丈夫。

峠を越えたら東屋があった。ちょうど昼メシのタイミング。休憩。
座り込んだら落ち着いちゃってテーブルもあるし日記でも書こうか。ここは峠 のてっぺんと違って日が当らないので寒い。がなんだかもう動けなくなってし まった。

暖をとるため3時くらいから酒をひっかける。日記からだんだん離れ思考の連 鎖ゲーム。
やつと飲みたいな。あの人と飲み語り明かしたいな。何人もの顔と話題が次々 と浮かぶ。あぁ僕はここで何をしてるんだろう。

夜になるともっと寒い山。遠くで近くで獣が走り吠えている。僕はひとり寝袋 の中でふるえている。


・(321)11/29/2002/和歌山県・湯浅町--和歌山市/
山から下りて町へ。コンビニであったかい缶コーヒー。手の凍えが融ける。

風さえなければ今日はあたたかい一日かもしれない。ひだまりが手招きする。

この日記の締め切りが近いのでどこかで落ち着いてまとめたい。食料や情報も 集めなければ。ってことで有田市、下津町と歩いたところで、急きょ電車に乗 って和歌山市に入った。そして宿に泊まってる。
宿代は「赤い鳥」からの支援金の半分が入金されてたのでまかなえた。

夜まではあちこちぶらついていろんなもの調達して、晩メシにカップラーメン すすってから日記まとめ。

さて。今後の予定。
12月は僕をさがしてもらう企画が行われる。この一ヶ月僕も参加者も楽しめる ために、まず僕がやらなければならないのは。あまりにも寒い12月を乗り切る こと。そしてイベント中の定例連絡を確実にすること。
よし、そのためには10日に一度は宿に泊まることにしよう。

あぁ宿はいいなぁ。夜出歩いても帰る場所があるっていいなぁ。寒さにふるえ なくていいなぁ。フロもあったか、お茶もあつあつ。あぁフトンも誘う。

しかーし!現在、午前4時。外では新聞配達のバイクの音が!なんですとぉ? 宿に泊まってるのに徹夜とは。とほほ。

チェックアウトギリギリまで3時間くらいは寝たいな。
あとはヒルネでなんとかしよう。

おっと、それにしても、だ。これから先どこ行こうか?えっ?明日、雨??
ゆっくり考えるためにもう一泊しようかなぁ。でも金はあまりないしネット屋 で夜明かし?カプセルホテル?

今度の満月は12/20かぁ。地図ちず、あったあった。
えー、するってぇと、んーん、どうすっか。
山と海とどっちがあったかいかなぁ。

頭モーローとしてきた、もう寝よ。


・・・(つづく)[02.11.30] 海月
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