__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[02.08.17] 

〜海月の放流〜 016

□前回までのあらすじ:
もう旅はやめて岡山に腰を落ち着けて新生活を始めた、ような日々。
帰る家があり喰うための仕事がある。
仕事のない日は寝てすごすか本を読んだり映画観たり小旅行に出掛けたり
PicNicに行ったり。おお、普通だ。何の不満もないが。違和感は拭えない。


●『再起動。東へ西へ - 岡山、広島、愛媛、兵庫の巻 -』

この日記を読んでくれてる人が「こいつまた飲んでやがる」ってな感想をもら した。確かにほとんど毎日なにかしら酒は口にする。誰かと出会えばそれは間 違いなく宴になるし一人だっていい月がやってくれば酒はもっとうまくなる。 かと言って常に大量のアルコホールを摂取してるわけではなく、まぁいい気持 ちを持続させるようなだらだらとした飲み方。やけ酒とか哀しい酒ではない。 いつもおいしいたのしいお酒です。それは愉しい旅だからだろうか。
・・・なんでそんな弁解してるんだろ?わはははは。

好きな格言がある。
「現実とは。アルコールの欠乏による幻覚である」
by アイルランドの酔っぱらい

常に酔っぱらっているから、ではないと思いたいが。
何かを考えるという行為が好きだ。どこにもたどりつかなくてもかまわない。 思考を空中に浮遊させ連想を繋げてゆく。たいていが駄洒落の羅列であること が多いが(苦笑)たまに哲学に接触する。そうなるとそれはもう旅で。頭はど んどん冴えてくる。(冴えていることと説明がわかりやすいこととは別次元)

たとえ難しい事を考えていたとしても。考えるということは難しい事ではない。 僕の場合は。物事を入念により複雑に絡み合わせるという単純な作業の繰り返 しにすぎない。

おそらく「問題解決」というのは複雑に絡まったものを解きほぐして単純化す ることなのだろう。がしかし。僕は逆をやってるみたいだ。すべての問題が解 決されるのを待っているとは思えないのだ。
いいじゃん、問題は問題として純粋に存在してたって。

「なぜ旅をするのか?」答えがわかってから旅をするのか?答えを求めて旅を するのか?っつうか答えなんてあるのか? 誤解をおそれずに言うなら。旅をしている最中には旅は「自分さがし」の役に は立たない。自分なんてものは生活環境が強要するカテゴリーでしかない。
・・・おっと脱線した。これは決して正解ではありませんよ、たぶん。

複雑に絡み合った地下鉄路線図を眺め目的地への最短経路を一本引っ張り出し てくる。それが問題解決の単純化、効率化。いわゆる現実社会と呼ばれている 日常生活においては常にこれの繰り返し。

一方。複雑な絡まりの位置関係を眺めながら結局地下鉄には乗らずに地上を歩 いてしまうってことを僕はよくやるのだが。
路線図というのは繋がり方を示してるだけなので各ポイントの距離というもの は考慮されてないし地上と地下は既に別の世界に属しているし電車と徒歩も全 く別次元の速度で世界は動いている。
路線図があればまだマシな方でまともな地図すら持ってないのだ、たいてい。

もうそうなってくると当初の目的地にはたどりつけないかもしれない。でも。 必ずどこかにたどりついてきた。しかもナニカに導かれるようにどこかに。

問う(興味をもつ)ポイントを変えると答えは違ったものに見える。
でもたぶんそう見えるだけの話。

ああ、いかんいかん。どんどんわけのわからんことを語りだしてる。
今日はまだ飲んでないのに。ふふ。

今回の日記もやっぱりアルコール度数高めです(笑)。


・(177)07/08/2002/岡山県・岡山市・下中野/
今週で電柱の仕事もキリがつく。来週あたりそろそろ岡山を離れて旅を再開し ようか。

ここを離れる前にやっておきたいことがまだある。この読みかけの本を読んで しまわねば。それとこの日記。常に一週間以上前の日記を書いているってのが 不思議でならない(笑)。


・(178)07/09/2002/岡山県・岡山市・下中野--新見市/
今回で電柱追跡調査の仕事も終わり。なんだか感慨深い。野営地での最期の晩 餐用にワインをこっそり忍ばせて行く。

台風6号が接近してることもあって荒れ模様。
びしょびしょになりながらも着々と任務は遂行。

一日の仕事が終わって雨に濡れない野宿場を確保してメシ。
ぢつは今日は僕の誕生日なのでした。小学生からはおぢさんと呼ばれておかし くないが旅先で出会う粋な人々から見ればまだまだ若造。そんな年齢。

これまでもあちこち旅をしてきたけれど、以外なことに旅先で誕生日を迎える ってのは初めて。しかもこんな台風の雨の中、野宿してるなんてのはなんとも いい。ふふ。そして今年は不思議な出会いの林社長と酒を酌み交わしてる。
不思議なうれしさ。


・(179)07/10/2002/岡山県・新見市/
降ったり止んだり。雨合羽を着たまま走り回ると猛烈に暑い。晴れ間の太陽も 容赦なく暑い。着ようが脱ごうが大汗。

最後にして最高の野営地はキャンプ場の炊事棟。冷蔵庫まで生きてる。おそら く管理者を通してなにがしかの料金を支払わねばならない場所のだろうが、誰 にもとがめられないのでまだシーズンインしてないのか。

社長がメシの支度をしてくれてる間に僕はワインを冷蔵庫につっこみ、汗まみ れの身体を水道で洗い流しさっぱりすっきり。

仕事は明日まであるが夜こうして社長と野営しながら飲み喰いできるのは最期。 メシも酒も今夜は豪華。うひょひょひょ。なんとも楽しい仕事でしたよ。あり がとう。


・(180)07/11/2002/岡山県・新見市--岡山市・下中野/
仕事も最終日。それにふさわしいのかもっともやっかいな街のど真ん中。家が 密集し狭い路地が網の目状に広がる。電柱電線もそんな家並に沿って分岐に継 ぐ分岐。「巡回サラリーマン問題」なんか現場ではなんの役にも立ちゃしない。 通勤通学時間帯前にある程度かせがねば厄介だ。僕はひたすら歩き続けるが、 社長は車の置き場に困った。とにかく足でかせぐ。同じ区域を行ったり来たり。

果てしなく思えた数百本も丹念な追跡で昼前には終了!おおっ。終わったぁ。 一体何本の電柱を撮影したんだろう?4、5千本?夢に出てきそうだな(笑)。


・(181)07/12/2002/岡山県・岡山市・下中野/
今日はもう一日、寝るか読むか。思い出したように喰うか。こんな日々を続け てたらダメ人間の認定をもらえそうだが仕合わせではある。はははは。

来週あたりから旅を再開しようかと地図を広げてみたりしてたちょうどその時 たまたまつけたTVのローカルニュースで岡山市内だが瀬戸内に浮かぶ小島・犬 島についての特集放送があった。
なにやらその島で7/19-28に「犬島アーツフェスティバル」なるものがあって、 そこで「維新派」という劇団による野外芝居やらいろいろあるらしい。
まったくなんの予備知識もないが。なんだかおもしろそうだぞ。

きっとナニカあるに違いない。
この直感/直観はけっこう旅の間、はずれてない。

よし、そのフェスティバル狙いで動きだそう。


・(182)07/13/2002/岡山県・岡山市・下中野--倉敷市/
具体的に旅を再開する日程や方向が定まりつつあるので、ぶちまけてた荷物の 整理も始めないと。
倉敷の佐野家にも顔出しておこう。またしばらく(おそらく数年)は会えない だろう。

今夜はみんなでおいしい中華。みんなで食べるのがまたおいしさ倍増。ああ、 有り難い。


・(183)07/14/2002/岡山県・倉敷市--岡山市・下中野/
早朝。ずっと待っていたとても重要な通知が届いた。その結果というか結末に ついてはすでに予想はしていたことだし覚悟もしていたつもりだったが。
予想・覚悟から確定までの時間差が長かったので、どこかで「もしかしたら」 と期待する余地があるんじゃないかと思ったりなんかして。

何度も読み返しながら、居ても立ってもいられない気分ととても落ち着いた静 かな気分とがゆっくりと回転しながら練りあげられていくようだった。

辛うじて鬱状態には陥らなかったがそのことで頭が一杯になる。言葉少なにな ってしまったので佐野家を早々に引き上げる。お世話になりました。犬島行っ た後またすぐに立ち寄ることがあるかもしれないけど。とりあえず、さらば。

今夜は都築のダンナと林社長(と息子のショウヘイ)が壮行会?を開いてくれ るというのでひとまず頭をからっぽにしてまた大いに飲み喰った。
ほんとに不思議な縁で一ヶ月半もお世話になった。うまく言葉にならないけれ ど、有り難いことです。


・(184)07/15/2002/岡山県・岡山市・下中野/
台風7号接近か?一歩も外に出ずに読書&Webチェック。


・(185)07/16/2002/岡山県・岡山市・下中野/
旅に必要な常備食料の買い出し。犬島での野外演劇の前売りチケットゲット。 具体的に何かを揃えたり備えたり動きだすとだんだん緊張してくる。

こんなにも居心地のいい所に一ヶ月半も居候生活していたとなると旅を再開す るというより、仕切なおして新たに旅に入る感じ。

一歩踏み出すのがまたこわくなってきた。
一歩踏み出すのに「勇気」なんてものはいらない。そこには緊張と迷いがある だけなので、それを取り去ってしまえればあとはすいーっと流れてゆける。

現実逃避か緊張をほぐすためか、今は本の世界を旅する。


・(186)07/17/2002/岡山県・岡山市・下中野/
あぁもうちょっとで読み終わるんだ。終わるのがもったいない気もするが。し かし。今の気分にすごくシンクロしてくる。旅立ちの近さは本の中にも示唆さ れていた。

読み終わってしばらく放心してから。
いろんな人にまとめてメールを書く。動きだしますよぉ。

荷物を久しぶりにパッキングしたら薄着になった分、荷物が増えてるぅ。
かついでみたら重すぎて、よろよろぉ。・・・心配になってきた。

明朝、出発。よく眠れず。


・(187)07/18/2002/岡山県・岡山市・下中野--宝伝/
さぁいよいよ再出発。ほんとにお世話になりました。快適な生活をありがとう。 ぢゃ、行ってきます。

荷物が肩に食い込む。あれっ?なんか歩き方がしっくりこない。歩き方忘れて る?10分で凹たれる。一ヶ月半居た生活圏を離脱するのがもっともキツイ。
まるで地球の重力圏を離脱するロケットの気分(謎)。

岡山にたどり着いた頃はまだ寒さに対しての恐れがあったけれど、いまや暑さ が最大の障壁だ。きゃー。

道、違うなぁ、たぶん。かなりローカルな峠道。途方に暮れつつとぼとぼ歩い てると車が止まってくれる。「乗ってく?」ありがたい!さらに冷たいジュー スまでごちそうになる。肝っ玉かあちゃんは旅の話しにかなり興味を持ってく れたみたい。ほんの短い区間だけの出会い語らいだったけど楽しかった。あり がとう。
今日の目的地までのルートとしてはうまいコース取りではなかったみたいだが、 この道でもたどりつけるらしい。少し安心。もう目的の犬島は海のあっちに見 えてる!

大雑把な地図しかないので方角だけで歩いてる。でも磁石なんか持ってない。 ありゃりゃ道なくなっちゃった。疲れてヒルネしてたら雲行き怪しくなってる。 雨降り出す。木の下で雨宿り。止む気配なし。お手上げ。カッパ着て分岐点ま で戻って行けるとこまで行こう。

あーっ!港町に出たぁ。おおっ。しかし時刻は犬島行きの最終便の出る3分前。 間に合わなかったかぁ。くぅ残念。まぁいい。今夜の雨風しのげる寝床探そう。

海水浴場。海の家。これだあ。海開き直前のようで設備は準備中。ここならい けそう。
メシ喰って安堵でどっと疲れが出るが、気が張りつめてて、寝られない。
久しぶりの野宿に緊張してる。物音や光に過敏に反応。でも。感覚が鈍ってし まってるよりは断然いい。我ながら順応速度はやし。

真夜中2時頃、数台のバイクと車が集合してくる。やっべえ。もっとも恐れて いた集団。海岸で大騒ぎ始める。しかし。彼らもこちらの気配を幽霊でもいる かのように恐れたようで暴力的には出てこない。が。肝だめし的なちょっかい が始まるとエスカレートするので、こちらから先手を打って輪に挨拶にいく。

こちらもかなりビビってはいたがあっちもひるんだようだ。旅をしてることを 伝えると俄然興味が沸いたらしく「肉喰いますかぁ?」とBBQの輪に招いてく れる。10人ほどの金髪少年たちが同時に矢継ぎ早に質問をぶつけてくる。
テレビのバラエティ番組のような旅を現実にやってる人間が目の前に居るって ことが彼らの最大の関心のようだ。

でも。僕は何もすごくはないんだよ。君らの方がよっぽどすごいよ。見知らぬ 怪しいよそものに心許してごちそうしてくれるなんてさ。
心優しき不良少年たちよ。アウトローでもいい。好奇心にきらめくその目をど うか失わないで欲しい。大人たちに奪われないで欲しい。ありがとう。

あぁなんだかとてもうれしい夜になった。


・(188)07/19/2002/岡山県・岡山市・宝伝--犬島/
昨夜のうれしい恍惚感とは裏腹に。蚊のおかげで(服の上からでも刺す!)ほ とんど眠れなかった。朝、土砂降り。
気分はブルーというよりドロッとしたブルーブラック。

8時の船で犬島に渡る。雨は止み、青空のカケラ。10分足らずで上陸。小さ な島だしイベント期間中でもあるので野宿はできそうもない。

キャンプ場に行ってみる。夏休み突入で心配したけど、飛び込みでもなんとか なった。テント借りて二泊三日の仮の我が家。

太陽が来た。一人で4人用のテントを張ってると隣のサイトのメグロ&ヒロミ カップルが朝メシ一緒にいかがと声を掛けてくれる。彼らは劇団関係者と知り 合いらしい。昨日のうちから来ていて大雨の中テントを張ってた唯一の客だっ たらしい。

テント設営やらメシやら一段落ついたところで、昨日ぬれたものを片っ端から 広げ干す。

木陰でヒルネ三昧。太陽の動きに合わせて寝場所を移動しつつ。
暑さに耐えられなくなったら海へ。波間を浮游する、空を見下ろして。
本当の夏が来た。

銅精錬所跡の廃墟に取り残された赤レンガの煙突たち。
廃墟であり続けさせる為のように。あるいは新たな廃墟の構築であるかのよう に。パイプで組まれた巨大な足場。
朽ち崩れた黒レンガを踏み越えるとそこが舞台。
陽は落ちたがまだ昼の余韻を残す。しかし日中の熱気は海風によって心地良く 冷まされ、夜の始まりと芝居の始まりを告げる。

梅雨の残り雲が急速に飛び去ってゆくと月がやってくる。
音とダンス。40人もの人間が一斉に動く。回る。跳ぶ。
台詞やストーリーを追うのをやめていた。意識が海風に乗って浮遊し始める。 座っている肉体を離れ上空から俯瞰する位置で全体を感じている。
風が在り、月が在る。野外であることの醍醐味。
終始、うれしさとたのしさとノスタルジアの笑顔でありつづけた二時間。それ はサーカスのように現実から遊離した時空間・場だった。

拍手の嵐。それによってようやく地上に着地。併設されてる屋台村にて現実の 空腹感を満たしつつメグロさんたちと飲みながら余韻に浸る。

月と煙突。やっぱりすごく似合う。

テントサイトに戻っても宴は夜更けまで。


・(189)07/20/2002/岡山県・岡山市・犬島/
朝からやる気満点の太陽に熱せられたテント内はサウナ。自分の大汗にびっく りして起きる。木陰の芝生に避難して冷却しつつぬぼーっ。風呂代わりに海に 入る。

隣のメグロさん達が帰るので桟橋までお見送り。船の出る時刻までみんなで狭 い路地をブラブラ。昼メシを喰う時間はないので練乳かき氷アイスをおごって もらってうはうは味わう。プール帰りの小学生気分。にひひ。

さぁ船が出る。ガッチリ握手して別れる。見えなくなるまで手を振りあう。 見送られるよりも見送る方がさびしくなるなぁ。

路地から路地へ当てもなくたらりら。崩れ落ちそうな空家廃屋、朽ちた煙突が 廃墟感を印象付けているが。ここにはまだ確実に「生活」がある。少なくとも ここのジジババたちが去るまではこの「天空の城」はこの状態のままで存り続 けるだろう。

暑さを逃れるためにまた海へ。空を見下ろして浮游してると。雲が急速に動き 出した。黒くブ厚くなってくる。こりゃあ来るな。そそくさと缶ビールだけ手 に入れてテントに戻り、待つ。まず大粒の2、3粒そして夕立。ザーッ。バラ バラバラッ。キャー。あわてて走り回る人々の声。テントの中で雨音を楽しん でる。なんだかウキウキしてくる。たぶん梅雨の最後の一搾り。夜は涼しくな るだろう。夕立と缶ビール。悪くない。

小一時間で雲は駆け抜け今夜もいい月。


・(190)07/21/2002/岡山県・岡山市・犬島--宝伝--倉敷市/
昨日の夕立と夜露で濡れたテントを朝のまぶしい日射しで干しながら撤収準備。 まだまだ犬島ではイベントも続くし快適なテント生活も続けたいけれど。野宿 できないとなると滞在費はバカにならない。ゆこう。おたのしみは少し残して おく方が次に来るたのしみがある。

今日は日曜。倉敷の佐野は居るかな?これからまた西に向かって進むのだから やつの所に寄っていくことにしよう。

重複コースはバス電車を使ってワープ!

倉敷駅で佐野一家にピックアップしてもらいデパートでお買い物に付き合うつ いでに帽子をプレゼントしてもらう。わぁありがとう。

佐野家に新アイテム導入。庭に折りたたみジャンボプール!おおっ。こどもら に誘われるままに早速遊ぶ。

夜はワインを飲みつつゆっくりゆったりすごす。ずっと何年もこういう夜を共 にすごしてきたような安心と心地良さ。こうしてすごすことができるのはまた 3年後くらいになってしまうかもしれないけれど。
ありがとう。これからもよろしく。


・(191)07/22/2002/岡山県・倉敷市--広島県・福山市/
こどもらになつかれたことはうれしいけれど。別れの朝はつらい。泣かれたら もっとつらい。

一郎の仕事場付近まで車で送ってもらい、国道で降ろしてもらう。
ぢゃ行って来ます。

覚悟はしてるものの灼熱のアスファルト道路は体温をはるかに超えている模様。 暑いぃ重いぃ。

広島県福山市に入る。あぁ久しぶりに県境をまたいだ。長かったなあ岡山県。

熱中症だか脱水症状だか睡眠不足だかもうとにかく一歩も動けなくなった午後 5時。東福山駅の待合いベンチで一時間ほど座ったまま意識ふっ飛ばす。 また少し体力復活。山の方に森林公園があるらしい。そこで野宿できるかも。 よーし。

見晴らし台から見下ろすと福山の街が灯りはじめ空には丸い月。あぁこの月と 夜景がもっとも綺麗に見えるところで今日は寝よう。

それから二時間、真っ暗な山道を彷徨う。
やっと落ち着く頃には8時を回ってる。

水を確保しておくんだった。山の上に公園もあったが水道はない。
手持ちのペットボトルを大事にせねば。飲む時は口にふくんでから噛みしめる ようにしてゆっくりと飲み下す。サバイバルムード満点。(笑)

酒だけはまだある。今夜も月見酒。
地上を見下ろすと列車が光の糸となって街を縫いつけてく。


・(192)07/23/2002/広島県・福山市--鞆の浦--沼隈町/
朝、山を下りたらコンビニに直行。ここぞとばかりにごくごく水分補給。
街の公園の水道でべたつく身体を拭い水筒代わりのペットポトルを満たす。
今日も朝からガッツリ暑いが、さぁ行ってみよう。

福山から半島を南下したら鞆の浦(とものうら)というところを通った。
そこはなんと龍馬が初めて手に入れた「いろは丸」が沈んた近くだったらしい。 紀州藩の船にぶつけられて日本最初の海難賠償請求したっていうエピソードが そういえばあったなぁ。

そういう資料や沈船の一部などを集めた資料館(¥200)があったので入って みた。沈船サルベージのおかげで12年くらい前には観光客が押し寄せる熱狂も あったらしい。しかし現在は。
元の寂れた港町。古い瀬戸内情緒を残した風情のある町並に戻っていた。
じいさんばあさんたちが風の通り道の日陰で椅子を並べて海を眺めながら取り 留めもなく延々と茶飲み話をしている町だった。

今夜は道の駅の建物の裏にあった藁葺き家屋を再現した寄り合い所?の縁側で 寝る。


・(193)07/24/2002/広島県・沼隈町--尾道市/
今日も暑かったぁ。殺人的と言ってもいいほどの日射し。たまらず木陰に避難 してヒルネ。もう発汗だけでは体温調節が追い付かない。
涼しい所で寝るか喰うか。
ちょっと贅沢してよく冷えたファミレスで強制冷却&栄養補給。

そして、なんとか尾道にたどり着いた。
汗まみれで3日風呂に入ってないので久しぶりに安宿泊。クーラー効くぅ。 シャワー浴びてさっぱりしてから夕方、散歩に出る。

缶ビールの力借りて地上3cmの浮遊。
風情のある、立体迷路のような細い路地をふわふらと彷徨っていると。
赤い月が昇りだす。旅に入って6回目の満月。
月明かりに照らされる町なみ、島なみ。そして海。丘の上から眺めながら一服。

尾道には道々に句碑が立っているので、僕も触発されて一句。
「満月に呼ばれるままに歩く己の道」

明日からしまなみ海道をたどって歩いて四国に南下していこう。


・(194)07/25/2002/広島県・尾道市--向島--因島/
尾道と今治を結ぶしまなみ海道は点在する島を繋いですべて歩いて渡ることが できる。
けれど、尾道のすぐ目の前にある向島へは頻繁に往復している渡船を利用する 方が風情がある。ここの暮らしを垣間見られる。
通勤通学買い物なんでもこの船。とは言っても乗ってる時間は2、3分かな。

向島(むかいしま)は造船工場の島みたいなもんで味も素気もない。
なーんて言ったら怒られるな(笑)。

台風が接近してるらしく、雲の流れも速い。適当な野宿場を見つけたら早めに 落ち着いた方がいいな。

因島に渡った頃には雨雲がまとまってきていよいよやばい。
設備が整った運動公園があった。管理がしっかりしすぎてると結構面倒な事も ありそうだが。とりあえず安全そうな場所確保。

ついにざばーっと降り出す。うひょー。
でも。結局それは夕立みたいにあっけなく上がってしまった。
涼しくなっていい。

夜になって野球場とテニスコートの照明が煌々と灯る。
彼らが去り管理人が去るまでは安心して寝られない。22時にやっと消灯。
ふぅ。おやすみ。


・(195)07/26/2002/広島県・因島--生口島--愛媛県・大三島/
朝から猛烈に暑い熱い。喰わないと身体がもたない。生口島に渡ってからの昼 メシはカレーと冷し中華とトマト3個。仕入れたス−パ−で保冷用の氷が自由 にもらえたのでトマトは冷えひえ。うまし!
ガッツリ喰ったのはいいが満腹でしばらく動けず。ダメじゃん(笑)。

最も熱い時間帯にもう耐えられず、泳ぐ。この辺の海はすごく綺麗。気持ちい い!汗まみれのTシャツは着たまま泳いで洗濯を兼ねる。脱いで放っておけば 30分で乾く。乾いたらまた出発。

大三島へと繋がる多々羅大橋では手を叩くと龍が鳴く。
大三島に渡ると愛媛県。橋を渡りきってから正規ルートを通らずに山道をショ ートカットしてたら地元のおばちゃんに気さくに声をかけられる。
「西瓜食べるぅ?」もちろん「いただきまーす」

日没が近づく。がんばれば次の島・伯方島にも渡れそうだけど。がんばらない。 橋の手前の鼻栗瀬戸展望台がかなりいい野宿場になりそう。
なので、今日はここまで。

水道で身体洗ってさっぱりしたらメシ喰って酒ひっかけて。海風が心地良く吹 くと月も昇ってくる。絶景!ああ、みんなに見せたい知らせたい。独り占めの 月見はじれったい。ああ僕はここに居ますよ。聞こえますかぁ。アローアロー。


・(196)07/27/2002/愛媛県・大三島--伯方島--大島--今治市(〜神戸)/
伯方の塩で有名な伯方島は軽く流す。大島もとっとと進みたいが暑くてペース はあがらず。しばらく海が見えない。あぁ泳いで冷却したいぃ。

最後で最長の来島海峡大橋まできた。途中で休憩しないと渡りきれない。全長 6kmくらいある。たどりついたら宿探ししようかなぁとか今後のルートを考えな がら前だけを見て考えて進む。これまで通ってきた島や橋のことはまったく考 えてなかったなぁ。

四国・今治に上陸(?)。新しい町にやってきたときの基本として駅の観光案 内所で地図をもらい宿情報を訊く。今治から神戸へ行くフェリーに乗るつもり でもいるのでダイヤ表ももらう。ついでに船の割引券までくれる。
パラッと眺めてると今晩10時半の船に乗れるじゃん!ここで一泊しなくても船 に風呂も寝床もある。よっしゃあ。それで行こう。
兵庫・宝塚にいるタカシくん(かつての教え子)にも連絡を入れて予定調整。

出航まで5時間くらいあるので、とりあえず大荷物を港待合室のコインロッカー につっこんでから街を散策することにする。
今夜はちょうど商店街のお祭もあるみたい。今治城付近を眺めたり商店街をぶ らぶらして街のムードを感じる。祭りならと自分に適当な理由をつけて缶ビー ルをお供につける(笑)。
夕暮れの波止場公園ででっかい夕焼けに圧倒されながら一服してると犬の散歩 のおじさんが話し掛けてくる。しばしぼけぼけと世間話。黄昏刻は夜へと移り 変わってゆく。

キップ発売時間になる頃には待合室は団体客で大にぎわい。昼間は誰もいなか ったのでまったくマイナーな航路かと思ったけどそうでもないのね。まぁ結構 でかい船だし。


船に乗るとわくわくする。特に夜行航路はうきうき。
自分の場所を確保したらさっさと風呂に入る(広い湯舟あり!)。さっぱりし たらやっぱりどうしたってビールが欲しい。にひひ。デッキに出て離れてゆく 四国の灯を振り返りながら「また来るよ」と缶を掲げる。
雲間に月がやってきた。寝て起きたら神戸なんだなぁ。新たな地域・関西圏へ 想いを馳せ、乾杯!


・(197)07/28/2002/(愛媛県・今治市)〜兵庫県・神戸市--宝塚市/
朝5時20分に港に到着。眠いぃ。
気温が上がらないうちに距離をかせいだ方がいいかとじゃんじゃん歩く。が。 8時にはすでに30度を超えた模様。暑いよぉ。重いよぉ。

大雑把な地図しかないからどこを歩いてるのかよくわかってない。自分の方向 感覚だけを信じて進むだけ。

昼12時にタカシくんと合流、再会。やぁやぁやぁ。
シャワー浴びて洗濯してヒルネさせてもらう。夜は僕がなんかつくろうか。

タカシくんと初めて出会ってからかれこれ10年近くになる。彼は小学生で僕は 家庭教師だった。勉強そっちのけでよく遊びよく旅の話をしていたなぁ。それ がいまや大学生で背も僕よりはるかに高い。
なにより感慨深いのは彼と一緒に酒を飲めるようになったということだ。
そして今でもこうして繋がっていて友達としてつきあえるということだ。


・(198)07/29/2002/兵庫県・宝塚市--尼崎市・塚口/武庫之荘(大井戸公園)/
タカシくんと朝メシ喰ってから出発。快適な一日をありがとう。行ってきます。 空は薄雲におおわれてるが夏の太陽は容赦なく大気を熱する。直射を受けなく ても暑いぃ。十数km歩いて尼崎。

旅仲間であるユカの経営してる店(ペットフードショップ)に顔を出す。疲労 と積もる話がありすぎて何をどこから話していいのやら。結局「やぁ」ぐらい しか発声できず。でもうれしくて顔がニヤける。「ここまでたどりついたよ」

昼メシおごってもうらう(ビール付!)。疲れと安堵と急速に回ったアルコホ ールで地に足つかずふわふわ。
ユカは店に戻り僕は公園へヒルネに。店上がる時間にまた会おう。2時間爆睡。

夜、ユカの通ってるフィットネスクラブのプール体験コース券をプレゼントし てもらって、泳ぐ。全身にけだるい疲労が残ったが、水の中では身体を伸ばせ るのが気持ちいい。
風呂で汗と垢を流してすっきりさっぱりしたら居酒屋でビール!うまし。料理 もジャンジャカ頼んで大満腹。
全部ユカのおごり。男前だなぁ(笑)。
ユカのセンスや視点は間違いなく女性なのだが、人に対する言動行動のきっぱ りさっぱりとした潔さ・キレは僕なんかより断然男前なのだ。カッコいい。

店で別れて僕は目をつけていた公園で野宿。しばらくこの町でユカと話しをし たり公園で暮らしてみよう。


・(199)07/30/2002/兵庫県・尼崎市・塚口/
朝4時半にはウォーカー達が動きだし蚊も動きだし目が覚める。
朝5時半、二度寝してるところに声をかけられ、食べてくださいとおにぎりも らう。それをくれたムタ氏はぢつはいつもは僕の寝ていたところで寝てるらし い。あぁすみません。そんな縁からしばし話しを興味深く聞く。

夏バテか夏カゼか(食アタリか)?全身の虚脱感と鋭い腹痛。すべての関節が バラバラにほどけてしまいそう。
涼しい図書館に行っても集中できず日没までまた違う公園の木陰で寝る。暑い のに寒い。ただただ寝て直す。

陽が落ちてからユカの店舗の入ってる駅ビルに移動。まだ調子が悪くベンチで グロッキーになってたらおっちゃんが寄ってきて「まぁコレ飲め」とワンカッ プ酒と缶チューハイをくれる。
心優しき公園生活者たち。自分の心配よりも他人(しかもよそもの)の心配を できるなんて大きい人だなぁ。尼崎・塚口の土地柄なのか?それとも僕があま りにも見ちゃいられないほどあぶなっかしいのか?

フィットネスクラブで風呂だけ入ってからユカにまた晩メシごちそうになる。 店のママとマスターからも素敵な言葉や物をもらう。体調不良で全部を食べき れなくて申し訳なかった。が。たくさんの種類の食品を口にできたのできっと 明日からは大丈夫だろう。


・(200)07/31/2002/兵庫県・尼崎市・塚口(--大阪・海遊館)/
ユカの店が定休日なので好きな所にどこでも連れてってくれると言う。ので。 水族館をリクエスト。となれば海遊館
その前に鰻うなぎと鱧はも喰って病み上がりの身体を元気づけ。

夏休みだし海遊館は大混雑。そんな人々の流れには乗らずマイペースでゆっく りと。逆流したりもしながら何度もじっくり眺める。
真夏に水族館ってのは涼しげでサイコーだねぇ。

最後のエリアにクラゲの展示。
「気持ち悪ぅ」「キレイ」客の反応がこんなにも両極端なのもおもしろい。
僕らはこのエリアだけでも一時間くらい居たかもしれない。クラゲを観ている ようでだんだん焦点が引いて客の流れも含めたフロア全体を漠然と感じてる。

ここにたどり着くまでの魚や海獣たちは突発的に動きを変えたり止まったりし て「次」を期待させ続けた。多くの客はそれを期待し楽しませてくれる事を求 めている。そういう客たちはクラゲエリアに入った途端に足早に駆け抜けてっ た。
クラゲは自分がクラゲであるなんて思っていなかったし、「自分」なんてもの をとっくに捨てている(ように見えた)。客が喜ぼうが逃げようがお構いなし だった。

ここまでの4時間の印象はクラゲの1時間ですべて打ち消されるくらいだった。 それで大満足。堪能したぁ。

夜7時に館を出たら少しは暑さもやわらぎ海に夕焼け。気分も体調も上々。
よーし!ビールだぁ(笑)。快気祝いと旅200日目記念だぁ。ガッツリ喰って 飲んで、わははは。ありがとう、ユカ。


・・・(つづく)[02.08.17] 海月
<<