__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[02.06.18] 

〜海月の放流〜 014

□前回までのあらすじ:
山陰から山陽へやってきた。岡山でバイト決まる。居候生活始まる。
テブラデブラブラマチアルキ。してると。ここに引っ越してきたような気分。
夜には帰る家があり。一緒にメシを喰う相手が居る。でも。安心安定の反面。
ぢっとしてていいのか?それが望みか?ナニカが問いかけてくる。


●『居候暮らし - 岡山の巻 -』

目的地のない旅に近道も遠回りもない。
ただ安心の湯舟に浸かり過ぎているとふやけてくるのはわかった。
かと言ってイバラの道に安眠を求めるのは容易いことでもなかった。

こうして居るとどうなるか?行く手に何があるのか?知りたいと思う。しか し。安易に誰かに答えを教えてもらう、なんてのは意図するところではない。


・(140)06/01/2002/岡山県・岡山市・下中野--倉敷市/
PSION完全復旧目前。一郎んとこに置き忘れたCD-ROMさえあればなんとかなり そう。
週末は佐野家。定着???

一郎の父ちゃんと数年ぶりに再会。肺を患ってるらしく少しやつれている。 かつての元気もなく心配。


・(141)06/02/2002/岡山県・倉敷市--岡山市・下中野/
こどもらと海辺で水遊び。水温はまだ少し冷たいが日射しがすっかり真夏なの で足を浸けてるだけでも気持ちいい。

佐野家で昼メシ喰ってみんなでヒルネ。
その間にPSIONに手を入れ復旧作業完了!

髪がだいぶ伸びてうっとおしくなってきた。佐野家で断髪式決行。庭でみんな にハサミを入れてもらってバサバサ切り落されてく髪。すぐにシャワーを浴び てすっかりさっぱり。ありがとう。

晩メシ前に都築家に戻ると今日は特別コース料理だ!と手書きメニューまで用 意してダンナは気合い充分。
本日のメニュー:
コンソメスープ(新見の心)、ミルキーピラフ下中野風(下津井旅情)、チー ズフォンデュ初心者マーク(倉敷の叫び)、白ワインワールドカップスペシャ ル(備前の男)
( )内のサブタイトルがいちいち楽しい。

ほろ酔い気分でディナーを片付けるとTVでは映画『鉄道員ぽっぽや』が始まる。 淡々と描かれる日常。邦画の呼吸と間合い。
正しい休日の過ごし方としてはゴリゴリのCGやSFX、総製作費ん十億円、など の超大作映画よりも。
日本の古くさいくらいのテンポがハマる。僕がノスタルジックなだけかもしれ ない。年を取ったってことかもしれない。


・(142)06/03/2002/岡山県・岡山市・下中野/
今日からキャンプ装備で電柱の仕事のための山ごもり。の予定だったが。社長 の準備や段取りなどにより、ぢっと部屋で待機。
都築家の本棚から引っ張り出してきたマンガにはまってたので待機がむしろ都 合よかった。

結局、今日出発の予定は延期。


・(143)06/04/2002/岡山県・岡山市・下中野/
いつでも仕事に出られる準備をしたまま今日もマンガを読みながら待機。
電話が入り「明日早朝4時出発」決定。

ワールドカップ日本vsベルギーを期せずしてフルタイム観戦(もちろんTVで)。 韓国戦も勢いで観る。まったく思い入れもなくマスコミで報道されてるほどに は日本中が盛り上がってるとは感じない。
が。シュートが決まると自然に両腕を高らかに挙げてる自分がいた。

彼らが僕の為に直接何かをしてくれてる訳でもないし僕の代わりに戦ってる訳 でもない。それなのになぜ?この興奮の源は一体?んまぁコリクツヘリクツも 好きだが単純に試合というものの興奮と緊張が好きなのだった。


・(144)06/05/2002/岡山県・岡山市・下中野--新見/
やっと空が白み始める午前4時。モウレツな眠さのしっぽを引きずりながら車 に乗り込む。いよいよ山にこもって電柱追跡調査の仕事。

2時間かけてエリアに到着。社長がすべての段取りと運転とコンピュータへの 電柱情報入力。僕は新米刑事ばりに(笑)走り回ってデジカメに電柱をおさめ てく。民家の庭先や田畑、山林、神社、走り駆け上る。

日の出から日没まで。僕の旅の活動時間帯と同じ。難しい仕事ではない。けれ ど大変ではある。この仕事自体の意義や重要度がどんなものなのか、これに関 わる人以外には知られることもないけれど。それが仕事として成立し達成感と ともに一日を終われるというのは楽しい。

あらかじめ調達しておいた食材と酒。今夜はシーズンオフのキャンプサイトで 野営。炊事棟で水も使える。明日の作戦を話し合いながら晩メシ。酔いととも に話題は移り話題とともに酔いも進む。社長も旅人の人種だからこそこんな形 で仕事もできるし長い夜は本当に旅気分で飲める。

そろそろ寝るかと空を仰ぎ見ると星がこぼれてくる。またしばらく星を眺めて る。


・(145)06/06/2002/岡山県・新見--新郷/
昨夜はあまりにも楽しい夜だったのでつい夜更ししてしまった。予定では日の 出とともに起床のはずだったが2時間くらい寝坊。まぁしょうがない。それに しても寝袋があるとこんなにも快適な眠りができるのだなぁ。

昨日走り回ったおかげで久しぶりに筋肉痛。確かに痛いが不快でもない。むし ろ体が筋肉のスイッチを入れたような気がする。今日も走る走る走る。

仕事中の集中力と行動力。それがあるから昼と夜の切り替えもキッチリ。メリ ハリある一日。今夜も昨夜と同じ場所で寝ることにして車で移動。

晩メシ準備しながらユウヒビール。今日も暑かったから冷えたビールがしみる ぅ。うまし。今夜もうれしいたのしいうまい酒。


・(146)06/07/2002/岡山県・新見--新郷--岡山市・下中野/
2泊3日の仕事スケジュールとしてはひとまず最終日。午前中はなかなかいい ペースで進む。昼に急きょ別エリアの撮り残し写真がどうしても欲しいとの連 絡が入り現地へ飛ぶ。

ここかぁ。車はおろか人の行く道もない山を越え電柱が向こうの集落まで伸び る。まぁ行くしかない。社長は車で先回り。僕は最小限の装備で薮をかき分け て突入。電柱を撮影しては進み山を登り下る。道なき道を電柱に導かれて前へ 前へ。

約1時間で19本の撮影任務完了。さすがに疲れた。が、軽い興奮が続いてる。 おもしろかったぁ。

次回以降のエリア周辺や野営地の下見などしつつ岡山市街への帰路につく。 長時間運転してる社長には悪いが疲労からの睡魔に勝てず首をカクンカクン。

明るいうちに家に帰りつくと洗濯機回してシャワー浴びて夕飯時まで爆睡。 キンチョーの糸がばつんと切れたような感じ。


・(147)06/08/2002/岡山県・岡山市・下中野/
疲労のため寝て過ごす一日。と言っても眠り続けてた訳でもなく。メシつくっ ては喰い。CDかけて本読んだり。夜はTV観たり。でも基本姿勢が「立」ではな く「寝」だったな。


・(148)06/09/2002/岡山県・岡山市・下中野(--下津井)/
天気抜群。湿気もなくさわやかな風。こんな日はPicNicだよなぁ。とベランダ で煙草ふかしてるとダンナも同じこと思ってたみたいで、すぐに出掛ける準備。

瀬戸大橋の真下の公園で直射日光は避けつつもテーブルセットなんかも出して プシュッカコッと缶ビール開ければPicNic!
にぎってきたおにぎりもうまし。海や橋を眺め本を読みつつボケボケ。気が付 きゃうとうと。逆らわず眠る。ヒルネの似合う午後。

遠回りして帰る。岡山に暮らしてる気分と旅の途中なのだという気持ちが少し 葛藤する。

社長んちでサッカー観ながら晩メシ喰おうとのお誘い受けてダンナと酒持って 訪問。

日本vsロシア戦やたらに盛り上がったなぁ。一人で観てたら大さわぎはしない ところだが何人かが集まれば騒がしくなって当然。ましてや勝ったとなれば。


・(149)06/10/2002/岡山県・岡山市・下中野--新見/
電柱の仕事。効率能率や集中力の持続などを考えると2泊3日が妥当なのかも と話しながらまた現場に向かっている車中。雨がやっかいだ。予報では明日は 確実に降りそうなので今回は1泊2日でスケジュールが組まれた。

今日も走った走った。昨夜のサッカーに影響受けてムヤミに走りたい(笑)。

晩メシ晩シャクの頃から降り始める。台風も接近中。さて明日はどうなる。


・(150)06/11/2002/岡山県・新見--岡山市・下中野/
朝は降ってなかった。なんとかもってくれないかなぁ。

あと3本撮影したら終わり。しかし残りは山越えルート。そして。来たぁ、ド シャブリ。木陰で煙草一本分の雨宿り。止むどころか強まってくる。こりゃ早 く済まして車に逃げこもう。

全身びしょ濡れ。カメラだけは死守。ふぅ片付いたぁ。山を下りる。
車のワイパー効かず。

車の性能や機能、仕組みはどんどん進歩してるのにワイパーだけは全く昔と変 わってないなぁ。

次回エリアの下見をしてから街に帰る。

洗濯してシャワー浴びて寝る。夜、食材調達してきて適当なものつくって喰っ てダンナの帰りを待ちつつTV観て本読んで酒飲んで。ハイ今日はおしまい。

今日、梅雨入りしたらしい。


・(151)06/12/2002/岡山県・岡山市・下中野/
朝起きてメシ喰って『さくら』を観たらまた寝る。

新たな本を読み始めベランダで煙草ふかす。

夕方からネット屋に行って3時間半キーボードをたたく。ドラマチックでもな く教訓もない淡々とした日常を文字に変換していく。否、確かにナニカがちゃ んとあったはずなのだ。けれどソレをつかまえるにはそーっと近づくか待つし かなかった。あわてるとシッポを切って逃げられてしまう。


・(152)06/13/2002/岡山県・岡山市・下中野/
今日からまた2泊3日の仕事の予定だった。が社長のスケジュール調整のため 部屋で待機して連絡待ち。PHS持ってるのだから家にこもってる必要もないのだ が。
ヒルネしたり本を読んでたら夜になってた。煙草が切れてなかったら今夜もい い加減な晩メシで済まそうかと思ってた。ダンナは今週かなり忙しく遅くなる と言うし。気分転換も兼ねて買い物に出かけたのはとりあえず正解。


・(153)06/14/2002/岡山県・岡山市・下中野/
結局今週はもう仕事はなし。初めからわかっていたところで同じ過ごし方をし ていたかもしれないが。

読んでる本にいよいよ沈み込む直前でサッカーが始まる時刻になったのでTVを つける。見たくても見られない人々もいるだろうに僕は何の労もなく目の前に 展開される時代を眺めてる。

読んでる本に影響されるってのはよくあることだが。今もそんなところ。人生 観が変わるとかいうレヴェルではなくて。文体やトーンの話。別に元気がない わけじゃないのよ(笑)。


・(154)06/15/2002/岡山県・岡山市・下中野/
もう少しで読み終わる。天気もいいのに部屋にこもってる。ふぅ、終わった。 いろいろ考えることもある。もちろん文体やトーンの話ではなく。内容につい て。村上春樹の描く主人公について。
僕はとても好きだ。その巻き込まれ具合といいコリクツのこね方といい(笑) 共感する。もちろんその主人公「僕」のような状況に追い込まれることはない し例え同じ状況になっても同じ対処はしないしできない。ただ僕と「僕」との 大きな共通点は。
自分以外の者に質問・相談をしない、できない(許されない)という点だ。


・(155)06/16/2002/岡山県・岡山市・下中野/
街の中心まで行ってみる。日曜日のアーケードは人であふれデパートは無目的 に浮遊する家族、仲間、恋人たちが名を呼び合い互いを探し回っている。
似たような無目的な僕でも気兼ねと金がいらないのは本屋と文房具売場だ。い ざとなれば買いたいものがないわけじゃない。日曜日のデパートは元来そんな 場なのだった。

岡山城と後楽園の外周を人ゴミを避けるようにそぞろ歩く。こんな暑い日中に は冷えたビールでも片手にボケボケしてるのが得策だが。ビールを買うタイミ ングを逸してしまった。

5、6時間も歩き回ってたことになる。軽く10kmくらいは歩いてる。もはや歩 かずにはいられない身体になってしまったのか?(笑)家に戻ってざっとシャ ワー浴びてビールから始める晩メシ。

100円均一で売ってそうな日曜日。


・(156)06/17/2002/岡山県・岡山市・下中野/
昨日とは確かに違う今日。けれど先週と大して変わり映えはしない。

天気が変わる前の気圧の変化を感じると眠くなる。時系列的に書くなら。耐え 難い睡魔がやってきて気を失うように眠ると雨が降り出す。これが僕に備わっ た感受能力だとしてもあまり有効に活用されたことは、ない(笑)。

おそらく5年から10年ぶりくらいに藤原新也の本に手を伸ばす。大好きな作家 ・写真家だが。気持ちのタイミングが合わないと全く手にできない。彼の作品 を手にするのはどんな心境のタイミングだったか今は思い出せないが。
村上春樹を読むのと同様の、ある特定のバイオリズムの時、のような気がする。 ・・・そんなことを考えてしまうのが藤原新也のタイミングなのかも(笑)。

自分だけのリズムやタイミングの取り方ってあると思う。うまく事を運ぶリズ ムだけじゃなくて。「鰻と梅干」みないな忌避すべき連鎖とか。独自のマジナ イ、ガンカケ、ゲンカツギ。螺旋状に昇る道のマニ車か。

次から次へと断片的な言葉たちが降ってくる。回想と希望。静かすぎる夜。 哲学の夜は長くなりそうだ。


・・・(つづく)[02.06.18] 海月
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