__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__ [02.03.01] ■ 〜海月の放流〜 007
□前回までのあらすじ: ●『日本に入国 - 沖縄本島の巻 -』 発見するテンションになるには神経を研ぎ澄まさなければならないのだけれど も。常にピリピリと緊張していたのでは集中しすぎて視野が狭くなる。 目からの情報だけについて考えてみても、焦点が合っている部分というのは意 外に少なく、むしろ視野が外れるぎりぎりのところに引っかかるものの方に面 白い発見があったりする。 例えば流星。「あ、今、流れた。」と感じるのはいつも目の隅の方。 疲れきって理性的なことは何も考えられなくなってきた頃に湧き出てくる妄想 も面白い。夢もその一種かな。 「もう1歩も歩けないぃぃ」とへたり込んだ地べたにもナニカがある。 筋肉がパンパンに張り詰めている時、逆にユルユルに弛緩しきっている時にも ナニカがやってくる。 つらつらと書き綴っているこの日記だけれど、大半はユルユルだらだらした旅 の日々のぐうだらの記録でしかない。しかし。もしかしたら。たまーに目の隅 で捕らえた何かが映るかもしれない。 ・(011)01/23/2002/沖縄・那覇/ 朝7時半、船のデッキから日の出を見る。久しぶりに太陽を見た。日向は暖か いが船上は風が強くて寒い。 日本・沖縄上陸!入国審査を抜けて港でしばらくY君(船に同乗していた日本 人の1人)と旅について、これからのことについて話していた。気が付いたら 5時間も話し込んでた。「呼ばれる」という感覚がわかる友となった。 港で沖縄、那覇周辺の地図や安宿などの情報をかき集める。地図もガイドブッ クも持たずに何の予定も計画も立てていない旅なので移動のたびにその場その 場で地図や情報を仕入れながら進んでゆくのだった。 台湾・基隆でお世話になったOさんの紹介してくれた宿・なるみ旅館までは港 からバスで移動。バス停で地元のおじーに声をかけ、乗るべきバスを教えても らう。沖縄の言葉。ああ、ここからはじまるのだな。 宿に落ち着いた後、那覇のメインストリートである国際通りをブラブラ。晩メシ を どこで喰うか迷う。結局、牛丼屋で“コンボ丼”という豚カツと牛丼の合体 丼¥600+オリオンビールで、沖縄入りに乾杯! ・(012)01/24/2002/沖縄・那覇/ 「なるみ旅館」は1泊¥3400もしたので、もっと安いとこに宿替え。「沖縄ゲ ストハウス」は¥1500(ドミトリー:相部屋)。インドのドミ生活を思い出す。 一つ大きく違うのは長期滞在者たちは仕事を見つけて金を稼いでいること。 だからか、出会って話すタイミングがなく、なんだか逆に居心地が悪かった。 (宿が悪いわけではないが。) ・(013)01/25/2002/沖縄・那覇/ 宿では¥100でインターネットに1時間接続できるというので使わせてもらう。 たまっていたメールをCheck。返事を書く余裕がなくて友人たちのHPをさっと のぞいてシャットダウン。 宿を変えてみる。¥2000。個室だが薄暗くなんだか牢獄に押し込められたよう で気が滅入る。 街をブラブラ。裏道に入ったら。絵と写真の二人展が開催されていた。ふらり と中に誘われてみるとなんとも居心地がいい。絵描きの“P”(大阪出身、現在 那覇在住)と話しをしながらお茶やお菓子やワインをご馳走になる。 このスペースの2階は宿(柏屋)になってるらしい。宿の番頭役?のカメさん とも話してみるとなんだか楽しそう。あ、じゃあ明日からここの世話になろう。 明後日はこの展覧会のイベントでライブペインティングもあるというし。 ここに出入りしているのは旅人ばかりではなく長期滞在して働いてる人。市内 の宿屋の人たちも。宿屋同士で連絡取り合ったりあっちの宿もいいぞとすすめ あったり交流があるというのは不思議だが、いいなと思う。 居心地良くてぼけぼけしてたら数時間も居座ってしまってた。雨が降ってきた ので帰ろ。 今日のメシはすべて昨日買っておいたパンとチーズと蜂蜜。徒歩旅モードの練 習。 ・(014)01/26/2002/沖縄・那覇/ 牢獄のような宿を脱出。雨。雨宿りできるところまでたどり着いたら土砂降り。 あきらめてしばらくモスバーガーで雨を眺めてる。 ちょうど今日の午後この建物の最上階で「個人情報保護法」に関する集会があ ることを知り参加してみることにする。 雨が上がったのでまずは宿にチェックイン。ああ、ここは落ち着けそうだ。 「柏屋(1泊¥1500/ドミ)http://www.88smile.com/kasiwaya/ 」 ネットにも繋げるようだし。オッケー。屋上がまたいい。快適生活の始まり。 集会などというものにはウサンクササがつきものなのか。一人一人の話しも要 点が明確でなく、質問に対する応答も的を得ていない。一方的な側面のみの論 議。ある種の洗脳。 それを分かった上で聞いていると断片的ながら「個人情報保護法案」の背景と 狙いも見えてきた。これは確かに考えるべきテーマであるようだ。 “P”にワインの差し入れを考え酒屋に寄って柏屋に帰る。 宿で晩メシを頼むと¥300で喰える。安い。そしてウマい。 宿のMacの調子が悪い。と相談される。ちょっとしたことで直った。大した事 をしたわけではないが何かの役に立てたのはうれしい。 ・(015)01/27/2002/沖縄・那覇/ 昼まで寝てる。シャワー浴びて洗濯して屋上に干す。 今日は「実験的に」国際通りが歩行者天国になるというので歩いてみる。ホコ 天を有意義に活用しているとは言えずただ通路としての歩道が拡がっただけに 過ぎないように思えた。まだ実験段階だというから今後はもっと露店やストリ ートパフォーマンスなどがゲリラ的にも出てくることを望む。 Pのライブペインティングを見学。正直言って前衛なんてちっともワカラン。 が断片的に興味深い点もあったし、こういう場に集う曲者達のあやしさったら ない(笑)。みんな知り合い同士のようなので、そこに分け入ってこちらから 話し掛けるのは気が引ける。とは言え。酒も入れば話し出し、やっぱり面白い 連中だった。 ワインから泡盛に変わってからはすっかり大酔っ払い。 ・(016)01/28/2002/沖縄・那覇/ 昨夜ソファで午前3時の時計を見てからの記憶が無い。どうやってベッドにた どり着いたのか?誰かが連れて行ってくれたのか?なんだかバツが悪い。その 上、二日酔い気味でフラフラ。 今日から徒歩旅に出発するつもりだったがムリムリ。 とりあえずメシ喰いに外出。 電器屋でインターネット無料体験コーナー発見。友人達のHPはココでタダで チェックできるな。 それにしても酒が抜けない。水分水分。 ・(017)01/29/2002(満月)/沖縄・那覇--名護--辺戸岬/ 今日からいよいよ歩いてみようと思ったが雨具を調達しておきたくて軍放出品 などの店を物色してゴアテックスの中古レインウェアを入手(ドイツ軍)。 まずはバスで沖縄本島最北端の辺戸岬まで5時間くらいかけて一気にゆく。 明日からまた那覇に向かって歩くという計画。ざっと120kmの道程。 バスの最後部座席に陣取って車窓から町々を眺める。耳にはラジオ。わざわざ 「歩く」なんてことしないでこういうローカルバスの旅でいいんじゃないかと 思いつつウトウト。 何度も眠ったり目覚めたり。まだまだ着かない。名護までですら3時間もかかっ た。さらに北部に行くために乗り換え。日が落ちると一気に寒くなる。今日買っ たばかりのレインウェアが早速防寒に役立つ。 辺戸岬入口のバス停にたどり着いたら街灯も集落もなく真っ暗闇だった。 なんてこった。何も見えないがおそらく岬があるであろう方向への道をとぼと ぼ歩く。 ハブが出てこないかビクビクしながら道路の真中を歩く。しばらく行くと灯り が!岬のレストハウスらしい。 しかしすでに閉店後。それでも自販機コーナーとベンチ&テーブルがある。 今夜はここで寝よう。そうと決まれば缶コーヒーでも飲んで一服だ。 すると。ぽっかり満月が! ああこの同じ月をどれだけの人たちが見ているのかなぁ。僕はここに居ますよ。 風が冷たい。そうだそうだった。今は沖縄と言えども冬なのだった。寒くて眠 れない。野宿対策を考えないと。 ・(018)01/30/2002/沖縄・辺戸岬--(R58)国頭村--大宜味村--津波/ 寒さで何度も目を覚ます。月は煌々としているが東の空から白みだしてきた。 缶コーヒーで体を温める。夜明け。 海の向こうには与論島。鹿児島県だ。日が昇る。体温まで上がる気分。 さぁ行こうか。 国道58号をひたすら南下。早朝。そろそろ出勤時間か。車が次々過ぎ去って ゆく。そんな中、一台の車が急に止まる。「乗ってくか?」の仕草。すごくう れしいがものすごい葛藤。まだ始まったばかり。ここで車に乗せてもらうわけ には行かないよぉ。 歩き方、歩くペースを考えながら最初はゆっくり行こう。沖縄歩きはいわば今 後の練習、トレーニングのつもりだから。 1時間歩きつづけるとバックパックが肩に子泣きジジイ状態。 ずーっと海岸沿いに道は続く。なんて綺麗な海。 歩道沿いに芝生の公園。休憩のつもりがヒルネ、爆睡。体力も回復したような 気分。 「道の駅」で遅い昼食。今日はどこまで行こう、どこまで行けるだろう。 日が落ちてくると急激に気温が下がる。体力も気力ももう限界。今日は無理せ ずに民宿にでも泊まるつもりだったがちょうどいいタイミングでは宿が無い。 風を遮れる所をなんとか見つけて今日はここで野宿。横になるとちょうど月が 昇ってきた。今夜も綺麗。 野宿はやっぱり寒くて何度も目が覚める。 ・(019)01/31/2002/沖縄・津波--(R58)名護--許田--安富祖/ 初日から30km以上も歩いて無理しすぎたのか足の裏が痛い。 ちゃんと眠れなかったから疲れも残ってる。でも日の出とともに行動開始。 名護には安宿もあるだろう。今夜は泊まろう。・・・のつもりだったが昼メシ の頃には名護バスターミナルに着いてしまった。メシを喰ったら元気も出てき たのでもう少し足を伸ばしてみる。 雲がどんより重くなってくる。太陽が遮られると海風が寒い。 許田の道の駅に着いた頃には夕暮れが迫っていた。これから先はビーチリゾー トホテルが立ち並ぶ。安宿など見つかりそうもない。 歩道に沿って芝生が植えられている。硬い路面を歩くよりも足には負担が少な く感じる。 日が落ちてしまった。もう野宿場所を捜すしかない。海岸は風を遮るものがな いから寒いだろうと敬遠していたが、もう歩けない。 そうなって初めて適当な場所が見つかったりするから嬉しい。 晩メシにクラッカーとマヨネーズとチーズをかじって、アルコホールで流し込 んで、寝る。 風をうまく遮れない。寒い。何度も試行錯誤。 月が昇ってきた。少しホッとする。 ・(020)02/01/2002/沖縄・安富祖--(R58)恩納村,万座-読谷村-嘉手納/ 那覇まであと50km。がんばったら行けるかなぁ。でもおそらく到着は夜中12時 頃になってしまうだろう。ちょっと厳しいなぁ。 1、2時間歩いてもうヘロヘロ。疲れが抜けきってないんだよなぁ。海岸で休 憩。綺麗な海水で顔を洗い手足を洗う。足がどうも痛いと思っていたが左足に 親指くらいの水ぶくれが出来ていた。こりゃ痛いはずだ。冷たい水に足を浸す ととても気持ちがいい。痛みも若干やわらぐ。 そうこうしているうちに雨が降り出した。まだ本降りではなさそうだが太陽が 出ないと元気も出ない。 那覇まで20km。ざっと6時間はかかるな。やっぱりムリ。 だいたいこの嘉手納基地のデカさはなんだ?雨の中、休憩にへたり込む場所も ない。なんとか基地前を抜けきらねば。(2時間はかかった) 本格的に雨。やっと見つけたコンビニで水分補給。そこからすぐ近くに「アジ アホテル」なる安宿らしき看板発見! ああもう今夜はここに泊まろう。こんな基地の町で野宿なんて出来そうもない し、雨だし。気力も体力も尽きたし。 HOTEL ASIA。その名にふさわしく?シャワーのお湯は出なかった(ボイラー 故障中)。こんなの慣れてるし、雨風しのげる暖かいベッドがあるだけでも仕 合わせだ。 コンビニで買ってきた弁当とビールで、なんとかここまでたどり着いた事に、 カンパイ! 夜、寝ようと灯りを消したら壁一面に夜光塗料で落書きが。わはは。やるなぁ。 これじゃあ宿の人にはわかるまい。 ・(021)02/02/2002/沖縄・嘉手納--(R58)北谷--宜野湾--浦添--那覇/ この3日間ずっと日の出とともに歩き出し日の入りとともに野営の生活だった が、那覇まではあともう18kmの表示があったから、今朝はゆっくり9時半出発。 あいにく雨だったが徐々に晴れてくる予感。 南に下ってきたからかちょっと歩くと蒸し暑くなる。 昼メシを喰う頃にはもう足も肩も痛くてたまらなかったが、残りは10kmを切っ た。そして太陽! いよいよ那覇に入る。帰ってきたぁ。サンダルの底はだいぶ擦り切れてる。 柏屋!!馴染みの顔に再会。帰ってきましたよ。ふぅ。すぐに熱いシャワー浴 びて寝ようと思っていたが、ソファに座り込んだらしばらく起き上がれない。 やはり「すごい!」と言われたかったのかもしれない。120kmを4日間で完歩。 けれど詳しい事は何も知らないはずの説教おぢさんからいきなりカウンターパ ンチ。「そんなの冒険でもなんでもない。」 なんだこの人は?ただの酔っ払いのようでもあったけれど。自分の中にも思い 上がりのようなものがないか自省しつつ、ただおぢさんの言葉に耳を傾けうな ずいているばかりだった。 このおぢさんと仲良くなるとは思わないが、このタイミングで出会ったことに はナニカありそうな予感はした。 一寝入りして宿で晩メシ。ビールもうまい。ああ今夜はゆっくりできる。 ・(022)02/03/2002/沖縄・那覇/ 久しぶりの快晴。風がなければTシャツでもオッケー。 石垣島に渡ることを考え始める。船会社は日曜で休み。でも明日の便にもしか したらうまく乗れるかもしれない。 としたら『海月の放流』の原稿(台湾編)をUPしておかないと。 インターネットカフェに入ってみる。フリードリンクで¥480。他人を気にせ ずに集中。気が付いたら3時間もそこに居た。一応やるべき事は済んだ。 今夜の宿メシは馬刺し。なんとも贅沢な食卓。これでも¥300。 宿のオーナーの子どものために『千と千尋の神隠し』のメイキングビデオが流 れてた。テーマソングが流れるたびに鳥肌が立ち、涙目になってしまう。 今回のこの旅に出るにあたって壮行会?を催してくれたうたうたい・寺田町さ んがこのうたをうたってくれたのだった。 テラさん元気ですか?僕は元気ですよ。 共有空間でみんなの話し声や笑い声がまだまだ響いている。ベッドの中でそれ を聞きながら眠る。 親戚の家にお泊りに行って「子どもらは早く寝ろ」と言われて襖一枚はさんだ 隣の部屋で大人達の宴を聞きながら眠った頃を思い出す。 遠いような近いような。 ・・・(つづく)[02.03.01] 海月 |
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