celebrate our birthday. act0

サガは暗い表情でため息をついた。

あと一週間で、アイオロスの誕生日なのだ。
本来ならば笑顔で祝福する立場にあるサガだったが、しかしサガにとってこの日は特別な、
———あまり、いい意味をもたない特別な日だった。


13年前、サガが自らの闇にとらわれ、アイオロスを犠牲にした。
それから迎えることのなかったアイオロスの誕生日が、彼の時が再び動き出したことでまためぐってきたのだ。

一体、どうしたものか。
もちろん、喜ばしいことではあるのだ。
アイオロスが笑顔でサガの傍にいてくれることは、サガにとってこの上ない幸せであるのだから。

許されることならば精一杯祝ってやりたい。

しかし、そう易々と祝える立場ではないのだとサガは顔を顰めた。


自分が止めてしまった彼の時間。
全ての元凶であるにも関わらず、どうして祝うことなどできようか。




次期教皇である射手座のアイオロスの誕生日を祝うため、聖域はこの上ない活気に満ちていた。

甦った次期教皇。そのアイオロスに対する期待は大きく、10日ほど前からお祭り騒ぎだった。

アイオロスは聖域の様子を小高い丘から眺め、ため息をついた。

「どうしたもんかなあ」

悩みの種は、愛しい恋人、サガ。
アイオロスは、数日前から暗い表情ばかりするようになったサガが気がかりだった。
その理由はアイオロス自身よく分かっているのだが、サガの心の問題である以上、アイオロスにも踏み込めない部分があった。
彼の心の負担を少しでも減らそうと、せめて笑顔で、優しくサガを包んでいようと、
アイオロスはサガを支えようとしてきたが、しかしそうするとサガは却って悲しそうに笑うのだった。

「あんな顔は見たくないんだがなあ」

しかし他に何ができる、とアイオロスはまたため息をついた。
サガの心の蟠りを払拭できたなら、どんなにいいだろうか。
しかし、アイオロスにはその手助けをすることはできても、完全拭い去ることはできないとわかっていた。
恐らく、死ぬまで罪の意識に苛まれ、以前のようにアイオロスに心を開くことがないことも。

13年のうちにできてしまった隔たり。

二人は確かに愛し合っているのに、13年の罪の時間は二人を苛んだ。

もうじきやってくるアイオロスの誕生日。
サガには笑顔で、祝ってほしい。———アイオロスは、叶いそうにない望みに、胸を痛めた。