WNUWF

(World Nekoneko Underground Wrestling Federation)

〜世界ねこねこ地下格闘技団体〜

ドラマスティックモード(16)



==========WNUWF側コミッショナー控え室==========
 ゆかりさんは車椅子に乗った線の細い女の子と何か話をしているようです。

 コンコン・・・。

ゆかり「入って良いわよ。」

 入ってきたのは儀助ですね。

儀助「・・・用事って何だ?」

ゆかり「あ、丁度良かったわ。実は王座戦についてなんだけど・・・、」

 しかし、儀助は目の前の車椅子の女の子をじっと見ています。どうしたんでしょうかね。

儀助「・・・あやめか?」

あやめ「儀助・・・。」

 へ?車椅子の女の子を知ってる???

ゆかり「え?儀助さん、この子のことを知っているの?」

儀助「ああ・・・。以前峠で出会ってな。俺が団体に入ってからはとんと見なくなったから
 心配はしていたが・・・。」

ゆかり「そう・・・。名前は『あやめ』さんって言うのね。良かった・・・。
 こっちが話しかけてもほとんど何も話してくれなくて・・・。」

儀助「それはともかく、どうしてあやめがここに?それにその椅子は・・・。」

あやめ「それは・・・。」

ゆかり「あ〜、実はね。あなたが入団して少し経ったときに事務所の前でこの子が倒れていたの。
 凄い衰弱していたから慌てて病院に入院させてしばらく療養させていたのよ。
 特に足の負傷が酷そうだからこうして車椅子に座らせてね。」

儀助「車椅子・・・?」

ゆかり「そう。これがあれば足が不自由なあやめさんでも移動が凄く楽になるわ。」

 ゆかりさんは話をしながらあやめちゃんの後ろに立つと車椅子を押しながら儀助に使い方を説明しています。

ゆかり「あ、そうだ。丁度良かったわ。この子を知ってる儀助さんなら適任ね。
 もし良かったらこの中を案内してあげて頂戴。これからお世話になるところだから。」

儀助「お世話って、プロレスラーとして戦わせるのか???」

 いや、それはさすがに・・・。

ゆかり「ううん。さすがにそれは無いけど、もっと良いポジションが空いているのよ。それで、ね。」

儀助「そういうことなら、分かった。」

 儀助は教えてもらった通りに車椅子を押して出て行こうとします。

ゆかり「あ、そうだ。待って。私も行くわ。儀助さんに話があったから。」

 ゆかりさんも部屋を後にしていきます。

==========メイン会場==========
 本日もハイテンションにお伝えしていきたいと思いますWNUWF!!!
 最近のWNUWFは不穏な空気が流れています。
 それもこれも異常現象を引き起こしているルタと呼ばれる者達の存在が
 少なからず影響しているからでしょう!!!

キング「そのルタについては調査を続けているところではあるが、手がかりは全くなしだな。
 何をするにもまず相手の正体を突き止めてからでないと何にも出来ないぞ。」

 異常現象の影響もあってか選手の間でもその不安をあらわすかのように色んなところで
 揉めていますね・・・。象徴的なのはいた連のヒロイン同士の対決。

キング「ああ。普段の彼女たちなら仲は良いはずだったがな。この状態が続けば
 彼女たちみたいな関係がどんどんと生まれるかもしれないぞ。」

♪四魔貴族バトル1(ロマンシング・サガ3)

 おっと、今日の入場はドラゴンとしこうですよ。
 そういえば、先週の放送終わり間際に「来週全て話す。」って言ってましたね。
 一体何を話すんでしょうか・・・。ドラゴンの後ろには申し訳なさ気に雪希ちゃんと進藤さんが
 そっと付いて来ています。

ドラゴン「まずは、雪希ちゃんと進藤さんにとってはかなりビックリした発表になると思う。
 けど、出来れば落ち着いて聞いて欲しい。」

 今までに無い雰囲気に会場内は静まり返っております。雪希ちゃんと進藤さんは黙って頷くだけです。

ドラゴン「・・・前回の特番以来、俺は悩んできた。悩み続けた。前回の特番では
 初代男女混合タッグのベルトを逸した。・・・まぁそれはあくまでも結果であって
 重要なことではないとは思っている。だがそれ以前に俺は基本的なところで出来なかった。」

 ・・・基本的なこと?

ドラゴン「俺は雪希ちゃんと進藤さんを誘った。ケンちゃん曰く『操った』らしいが、
 俺は生半可な気持ちで誘ったわけじゃない。誘ったからには彼女達が危険に晒される
 ようなことにはしたくはないんだ。けど、前回の試合で3カウントを取られたのは
 進藤さんだった・・・。それも、俺がケンちゃんが現れてから我を失ったのが敗因だ。
 そして・・・雪希ちゃんも危うく取られるところであった・・・。」

 ・・・・・・。
 雪希ちゃん達は黙ったまま首を横に振っています。それは違うとでも言いたいところなんでしょうね。

ドラゴン「正直、今の俺は彼女達を守る自信が無い・・・。そして、しばらく冷静になって
 自分の試合を見つめ直して見ていても体の動きが以前ほど動けていないことに気づいちまったんだ。
 だから、俺はここで発表したいと思う。俺、ドラゴンとしこうは次回特番
 『ディスタバンス』を持って引た・・・」

雪希「待ってっ!!!それ以上言わないでっ!!!」

ドラゴン「雪希ちゃん・・・。」

雪希「ドラゴンさん、それは違うよ・・・。私たち、守られてなんてつもりで
 こっちに来たわけじゃないんだよ。それに今辞めてお兄ちゃんの元に戻るなんて嫌・・・。」

ドラゴン「しかし・・・。」

進藤「片瀬さんの言うとおりだと思います・・・。それにいきなりそう言われても
 私たちも気持ちの整理がつきません・・・。」

♪みずいろ

 ドラゴンの思わぬ発表を聞いてケンちゃんも入場して参りました〜!!!

ケンちゃん「ああ。今回は雪希の言う通りだぞ。俺からしてもお前がこのまま辞めて
 雪希たちが戻ってきてもあんまり嬉しくはない!!!
 確かに、最初の頃は雪希たちを取り戻したい一心で行動していたけど、
 今は、『お前から取り戻す』のが俺の使命だ!!!だから勝手に引退など許さん!!!
 それとも、その引退する次回特番で俺との決着を果たすのか?」

♪銀色

 今度はタイガー入場!!!

タイガー「引退の前に決着を果たす相手ならここにも居るんじゃないのか?
 前回の特番では確かに俺たちが敗れたが、それはタッグ戦での話だ。
 それに、俺が取られたわけじゃない。今度は差しで勝負だ!!!」

ケンちゃん「ちょっと待て。俺には雪希ちゃんたちを取り戻す使命がかかっているんだ。
 お前の私欲のための決着なんて知ったこっちゃないんだよ!!!」

タイガー「それこそお前の使命など知ったこっちゃない。俺とドラゴンは長い間
 ずっと争っているんだ。奴が引退するならその長い争いに終止符を打つのが当然だろう。」

 あららら・・・。リング上でドラゴンとの対戦相手としてケンちゃんとタイガーが
 揉めだしましたよ。さすがのドラゴンも戸惑い気味か。

秋子「分かりました分かりました分かりました・・・。」

 慌てて入場口から秋子さんが入って早々リング上の2人を言葉で制します。

秋子「それじゃこうしましょう。次回特番、3WAYダンスマッチ。
 ドラゴンVSタイガーVSケンちゃん。これで如何かしら?」

 これはまた究極の3WAYダンスマッチ!!!完全決着方式ですか???
 あっとしかし、リング上の3人は不服そうな顔。

タイガー「ふん。差しの勝負じゃなければあれこれと言い訳が出来るだろう。
 それでは後々でも揉めることになる。俺は断る。」

ケンちゃん「俺もだ。」

 おっと・・・秋子さんの提案にすぐさま2人は降りると再び睨み合い。

ドラゴン「分かった分かった。じゃあ、こうしよう。次回特番ではお前らが差しで戦え。
 俺の引退については、さらにその次の特番まで延期しよう。そして、お前らの内で
 勝った方が俺との勝負だ。」

 ドラゴンからの提案に親指を立てて了承をアピールするタイガー。
 一方のケンちゃんはタイガーを睨み付けたままうんうん頷いています。

 と、その瞬間、タイガーは上に突き立てた親指を下に向けてドラゴンを挑発。
 と同時にケンちゃんはすっとドラゴンの方に向き直ると中指を立てて挑発。

 と、タイガーとケンちゃんはリングを後にしていきます。
 タイガー達が会場の外に消えてからドラゴンもうんうん頷くとすっと、リング下に降り
 会場を後にしていきます。雪希ちゃん達は不安そうに慌ててドラゴンの後を付いていきます。

==========佐々井亭−WNUWF支店−==========
 !!!!!!
 なんと、佐々井亭の店内は物凄いことに!!!
 椅子やテーブルがまるで物取りにでも遭ったかのように散乱していて店を
 営業できるような状況にはなっておりませんっ!!!
 一体誰がこんなことを・・・!!!

 鍋島と頼人がいつものように定食を食べに店に入るとその異様な光景に一瞬固まります。
 朝奈やあやめちゃんは慌てて物を片付けています。

鍋島「なんてこと・・・。一体誰がこんなことを・・・!!!」

朝奈「あ、志郎さん・・・。それが、あたしたちにも分からないんです。」

鍋島「分からないって?」

朝奈「今朝起きてお店の中に入ったら既にこんなになっていて・・・。」

鍋島「誰かが夜中のうちに忍び込んだとか。」

朝奈「戸締りはちゃんとしてたはずだからそれは無いと思いますけど・・・。」

あやめ『・・・異常現象?』

朝奈「・・・かもしれませんね。」

頼人「ところで狭霧は?」

朝奈「狭霧さんなら厨房の方の片づけをしてもらってます。厨房の方も荒らされていて・・・。」

頼人「・・・そうか。なら俺たちも手伝おうか。」

朝奈「そんな、悪いです。」

鍋島「困っている時はお互い様、ですよ。それに、このままだと僕達の夕食が
 無いですからね。死活問題ですよ。」

朝奈「・・・(笑)。」

 そんなこんなで片付け始めること30分。鍋島が何か紙を発見。

鍋島「あ・・・これは、女子タッグ王座戦の申込書じゃないですか。
 朝奈ちゃん、出してなかったの???」

朝奈「あ・・・!!!ごめんなさい。今日出しに行くつもりだったんですけど、
 こんなことになってしまって・・・。」

鍋島「・・・そうか。なら仕方ないな。また後で出しに行かないとな。」

朝奈「ええ・・・。」

 と、一方で違う紙を持ってあやめちゃんが鍋島に手渡します。

鍋島「ん・・・?『男女混合タッグ戦におたくのウェイトレスが挑むようだが、
 俺の舞&佐祐理組が敗れるはずがない。止めとくんだな。ついでにこのボロそうな
 店も辞めるんだな。』だって・・・???」

 読み終わるか終わらない内に鍋島の声が震え出しましたよ。

朝奈「志郎さん・・・。」

鍋島「・・・ははっ。どうやら僕にも相手が出来たようですね・・・。
 頼人は次の特番では男女混合タッグ王座戦、タイガーは今日はドラゴンとの
 決着を付けに行くって出て行きましたし、ここは僕がやるしかないでしょう。」

朝奈「えっと、志郎さん?」

鍋島「ごめんね、朝奈ちゃん。ここの片付けは任せることになっちゃうね。
 犯人が分かったから僕は今から文句を言いに行ってくるよ。」

朝奈「え?あ、ちょっと志郎さん?」

 朝奈ちゃんが止める間もなく鍋島は素早く店を後にしていきました〜。

 ・・・犯人ってやっぱりあいつですか???

(続)