その日も朝早くから、俺は取材場所に向かい車を飛ばしていた。しばらく交通量の少ない山沿いの県道を走っていると、突如視界に眩しい閃光が飛び込んできた。慌ててブレーキを踏み込み、側道にハンドルを切った。その瞬間、バン!というけたたましい音と、車がガクンと揺れる衝撃を感じた。
 パンクだ!
 前輪が側溝にあった給水管に乗り上げていた。配管の繋ぎ目の金具が突き刺さったのだろう。
「やべぇ・・・こんなとこで・・・どうすんだよ・・・」
我ながら情けない声を上げてしまった。しかし、車はそれ以上走ることはできない。このへんではそうそうタクシーを捕まえることもできず、俺はあまりのことに軽くめまいがするのを感じた。
 いや、めまいなんか感じている場合ではない。一刻も早く現場に向かわなければ―――!でもどうしたらいいんだ・・・!
 ふと俺は辺りを見渡し、わずかに目を見開いた。なんという幸運だろうか!すぐ脇にはバス停があり、しかもバスはもう目前にまで迫ってきているじゃないか!俺はパンクした車を乗り捨て、そのままやってきたバスへと乗り込んだ。

 

 とりあえず自動車会社に連絡しなきゃ・・・。いや、先に会社か。ともかく車を取りに来てもらわないとな。
 俺は携帯電話を取り出し、すぐに会社へと繋げた。連絡はスムーズに取れ、俺はこのまま現場へと向かうことになった。
 車内は早朝ということもあってか、窓際1列に数人座っているだけである。静まりきった車内で、俺はようやく落ち着きを取り戻した。

 

 そういえば、さっきの光はなんだったんだろう。まるでカメラのフラッシュのような―――
 俺はハッとなって抱えていたカメラに視線を落とした。まさか・・・まさかまた親父が?ということは、あのまま車を走らせていたら、何かあったのかもしれない―――。

 そう思った瞬間だった。

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