翌朝。
新聞の一面は、俺が遭遇した事故の記事で飾られた。その車は、隣の県でATM強盗を働いてきたばかりの犯人が乗っていた車輛で、話題性の高いかなり大きな事件となった。もちろん俺の撮った写真は事故直後の凄惨なもの―――それは、他の新聞社に決して引けを取らないセンセーショナルなものだった。
「こう言っちゃあなんだけど、俺たち命拾いしたよなぁ」
写真を覗き込んだ先輩がしみじみとつぶやく。そう、ちょっとでも早くその交差点を渡っていたら、俺たちの車がその事故に巻き込まれていたかもしれないのだ。
「やっぱりアレか?おまえのオヤジさんが、守ってくれたってか?!」
先輩は顎で俺のカメラを指す。ああ、確かにこれは親父のカメラ―――あの飛行機事故でも生き残った『奇跡のカメラ』だ。でも、まさかそんな―――。
「偶然ですよ、偶然」
俺は笑ってそう言い返した。
だが、本当にそれは『偶然』なんだろうか。
じつは、俺は以前にも同じような体験をしている。
それは親父の49日が終わったばかりの頃、遺品であるカメラを持って、取材に出た日のことだった。明け方、発砲事件が起きたという信用金庫へ向かう途中、俺はちょっとしたアクシデントで遅れをとってしまった。それを取り返そうと、現場への裏道を急いでいる時に、それは突如現れた。
カメラのフラッシュが焚かれたような鋭い光―――そのあまりの眩しさに、俺は一旦車を止めざるを得なかった。だがそこには当然のように何もなく、不思議に思いながらもまた車を走らせることになる。ところが、そのわずかな駐車が俺の一命を救ったのだ。
現場に戻ってきた犯人が錯乱状態で発砲し、流れ弾に当たったカメラマンが命を落としたのだ。俺はタッチの差でそこへ辿りつき、騒然となった現場で夢中でシャッターを切った。そのカメラマンは、数多く集まった報道陣の中でも1番前を陣取っていたそうだ。もし俺が時間通りに着けていたのなら、その場所は俺の指定席だったのだ―――!
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