手にしたヘアムースの缶・・・ずいぶんと軽い。髪にボリュームのある僕にとって、これがないと大変だ。早く買いに行かなきゃ。
 じつは今日は、夕方に彼女を迎えに行く予定が入っている。彼女は今パティシエになるべく、毎週水曜日にお菓子教室へと通っているのだ。なんでも、有名なパティシエが開いている講座だとかで、なかなか希望通りには取れないらしい。僕は、そんな彼女をそっと影から応援することしかできない。歯がゆいけれど、それしかないんだ。でも、夢に向かって一生懸命頑張る彼女は、本当に素敵だと思う。
 ドライヤーで髪を整え、準備完了。さあ、まずは買い物だ。 




 アパートを出て、すぐに郵便受けを覗き込む。・・・またくだらないチラシがいっぱい入ってるよ・・・!宅配ビデオの安売りに、オートバイの高価買い取り?どれもこれも、胡散臭い文句が並んでいる。僕はそれを取り出すと、丸めて横のゴミ箱へ放り込んだ。

 ちょっと歩いた先にある商店街に行けば、安売りをうたったドラッグストアがあるけれど、今はなんとなくそんな気分じゃない。手短に近場のコンビニで用を済ませるか。

 「いらっしゃいませぇ」

 間の抜けた店員の声が響く。胸元に派手な店名プリントのあるエプロンを付けた若い店員が、レジにひとり暇そうな顔で突っ立っている。僕は必要なものだけを買うと、早々にそのコンビニをあとにした。

>>Next