__Walk_in_the_moonshine,_and_drink_like_a_jellyfish.__

[06.03.01] 

〜海月の放流〜 100

ひと雨ごとにハル密度高まる。


●『風笛』
風が恐ろしく強い日。
屋根の上の洗濯物もあやうく物干し台ごと吹っ飛んでいきそうになってる。
電線がひゅんひゅんぶんぶんうなりをあげる。
風が啼く。

そんな日だったからなのか。
一日中、頭の中で口笛ソングが流れつづけている。
そのうたは。かつてCMか何かで使われたことがあったような気もするし、
あるいは僕の夢の中で流れていたものかもしれないし、
はてはまったく唐突に降りてきたオリジナルソングだったのかもしれない。

いずれにせよ。
短いひとつのミニマルなフレーズがえんえんと頭の中でリピートしている。
歌詞はない。口笛のような響きだけが鳴りつづけている。
頭の中のその音にあわせて一緒に口笛を吹いてみたりする。
うん、確かにこの音に近い。

決して哀しい曲ではない。寂しくもない。
かと言って。
手放しでおおはしゃぎするようなものでもなく。

テンポは軽快だ。
歩く速さにちょうどいい感じ。
リズムも歩幅にあってるかもしれない。

ココロ軽やかなのだけれど。
先を急ぐわけではなく。
淡々と。

たとえ立ち止まりしゃがみこんだとしても
そのうたは似合ってる気がする。

散歩しながらうたううた。
飄々と。風がうたう。風をうたう。



●『あたたかなあめ』
すさまじい音がトタン屋根をビタタタンバタバたたく。

わずかな軒先で雨宿りしながら。作業の段取りを考えつつ。
ビミョーに湿ったechoをくゆらす。
雨の日のechoは格別にうまいな。

選りによってその最も激しい降りのときに、外で水仕事。
どうせ濡れる仕事だ。
えいやっ、と外に飛び出してゆく。
雨ガッパに長靴の完全防備体制。とは言え。
顔、メガネはびしょぬれで前はよく見えなかったりする。

それでも。
どしゃ降りがむしろ潔いほどに威勢がよくて。
トラックの荷台に飛び乗りまた飛び降りる拍子に調子に乗って
そのまま何度も飛び跳ねて水滴をぶんぶるん跳ね散らして
はしゃぎ踊ってしまうほどにうきうき。

どしゃ降りって好きだよ。

今日の雨はなんともあたたかくて。
もはやハルノアメ。
水しぶきあげる。跳ねる。
ゆけっ!



●『融氷』
呑む、といえば。
お湯割か熱燗。だった寒い部屋。

今日はやけにあたたかくて。のどが渇いて。
冷たいものをごくごく飲りたい!と思ったんだが。
アルコホル単価の高いビールは部屋に常駐しておらず。
なんか方法はないものかと冷蔵庫を開けてみれば。
あったあった。引越直後にセットしておいた製氷皿に氷。
ちょうど3ヶ月前の氷。

3ヶ月かけてぎっちぎちに凝縮した氷。
に、リッター200円の合成清酒を注ぎ込む。
ぴちぴちぴきりと3ヶ月前の空気が弾け、解き放たれる。

3ヶ月。
ここで生活を始め、仕事を始め
なんとか軌道に乗ってきた。
だけれどどこかで
肩肘張ってミョーにぎっちぎちに力入りすぎてたかもしれんね。

ふぅ。深呼吸ひとつ。

3ヶ月前の空気を吸って。初心は忘れず。
けれど。肩の力は抜いて頑なな部分はゆるめてゆこうかね。
ハルニコホリノトケルヨニ



●『雨音にきくハルの夢の匂い』
夢を見ていた。
日常の淡々とした映像の羅列、のような夢だった気がする。

午前5時。ふっと目が覚める。
小さい灯りだけつけて寝床から抜け出しイスに座ってみる。
夢の欠片を反芻しながら
夢と現のあいまいさのなかでぼやぼやとたたずむ。

ごうごうとすさまじい音が外から聞こえる。
窓といわず屋根や壁をたたきつける音。
ものすごい雨そして風。暴風雨。ハルの嵐。

雨音を聞きながらまだ夜も明けぬ薄暗がりのなかで
呑み残しの安ウイスキーを口に運ぶ。

半覚醒状態にさらにアルコホルを注ぎ込んで
あいまいな境界線上を浮游する。
これから夜が明ける。

もう一眠りしようか。
いまこうしていること自体が夢の中でのことでなければ。



・・・(つづく)[06.03.01]...Qurax2海月(=)彡
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