4月30日<長女誕生前日>
普段よりよくお腹が張るようになる。少し痛みもある。
・・・でもこれが陣痛??もっと痛いんじゃないの??
でもお腹の張りは1時間おきから30分おきへと、その間隔が短くなってきた。
予定日は5月2日。日が迫っているのこともあり、一応病院へ連絡を入れておく。
お腹が張るけれど、陣痛かどうかわからない程度だということを伝えると、 心配なら今来てくれてもいいけど、痛みの間隔が15分になってから来てくれても大丈夫。 いつでも入院できるようにしておくから深夜でもいつでも来ていいよ。
とのことだったので、睡眠をとってから病院へ行くことにした。
でもお腹の張りが気になるし、もうすぐ赤ちゃんに会えるかも?と思うと嬉しくて、私は眠れなかった。

5月1日<長女誕生>
早朝3時ごろ、お腹の張りが15分間隔になる。
主人と車で病院へ向かった。
これから赤ちゃんに会えるというのに、なんて雨なんだろうって思ったのを覚えている。
病院についてすぐに診察を受けた。
赤ちゃんは子宮口から5センチのところまでおりてきているとのこと。
でもお産はまだまだということで部屋で寝ることになった。
主人も、私たちの後に駆けつけた両親も、仕事に行くため一度家に帰っていった。

夜、陣痛の間隔が45分に。
「あれっ、陣痛じゃなかったの・・・?」
看護婦さんは、大丈夫良くあることだからって言う。

夕食時、ご飯を食べようと立ち上がったその瞬間。
「・・・・・ん?」
急にめまいがした。心なしか、動機もする。
「お産、待ちくたびれて疲れちゃったのかな??」
もう一度ベッドでゆっくりすることにした。
その時だった。
看護婦さんが巡回にきた。
「どうしたの、食べないの??」
事情を説明すると看護婦さんが血圧を測ってくれた。
「そんなにしんどくないよ。もうだいぶ治ったから。」って言ってるときだったと思う。
看護婦さんの顔色が急に変わった。
急にあわただしく「そのまま寝ててね。心音チェックするから」って出て行った。
心音チェックの装置が運ばれ、
    チェック開始・・というときに今度は副院長が部屋に来て、
「分娩室にきて。私が見るから。ご飯食べないでね」、といって出て行った。
「??」皆の様子があまりにもおかしくて急に不安になった。
いったい私に何が起こっているんだろう。
    
分娩室にいき、赤ちゃんの心音を探す。
・・・・いっこうに聞こえてこなかった。
少しして、「トクントクン」と赤ちゃんの心音が聞こえてきた。
「探し当てられなかっただけかーー。」私はそう思った。
だけど先生はこう言った。
「落ち着いて聞いてね。今あなたの血圧が異常に高いの。
そしてお腹の張る位置っていうのも少しおかしいと思う。
お腹が張ると同時に心音も聞こえなくなるし、
早期胎盤剥離の兆候かもしれない。
このまま自然分娩するには、この病院では無理です。
設備の整った病院で詳しく見てもらうか、
ここで帝王切開をするかにしないと母子ともに危険です。
でも転院したからといって自然で埋めるかどうかの保障はありません。」
    
「早期胎盤剥離って何??赤ちゃんが危険??」
私は何がなんだかわからなかった。
すぐに家族に来てもらい、先生に事情を説明してもらった。

手術が始まった。
はじめての手術に不安でいっぱいで泣きそうだった。
そんな私を見て、看護婦さん三人が私の右手、左手を握ってくれ、耳元では
「大丈夫、もうすぐ赤ちゃん出てくるからね。」って励ましてくれた。

だけど、なかなか赤ちゃんは出てこない。
「赤ちゃん出てきたらここにつれてくるからね、がんばって」
看護婦さんが必死に声をかけてくれる。
そんな中、先生が私に馬乗りになって一生懸命お腹を押しているのが見えた。
私はただただ、息苦しくて・・・寒くて・・・
そうこうしているうちに、急に酸素マスクが取り替えられた。
吸引麻酔に切り替えられたらしい。
薄れていく意識の中、視界の端に赤ちゃんが見えた・・・・・気がした。
そのときの赤ちゃんは婦長さんに逆さづりにされ、
背中をパシパシたたかれていた・・・ような・・
それが現実だったのか、夢なのかいまだにわからない。

気がつけば病室のベッドの上。
視界の端に主人の姿が見える。
まだ意識がはっきりしない。
なぜだか体が震えて止まらない。
主人に差し出した手は、自分の意識とは関係なく震えていた。
そんな手を優しく握ってくれた。
「赤ちゃん・・・赤ちゃん・・」
そうつぶやくと、先生が赤ちゃんをタオルにくるんでつれてきてくれた。
そっと、触れてみる。
瞬間、赤ちゃんは元気に泣きだした。
写真をとると先生は、赤ちゃんを抱いて
「もう連れて行くからな。いそぐからね。」といって連れて行ってしまった。
「・・・・・?」わけがわからなかった。
すると主人がこう言った。
「生まれてすぐに泣かなくて仮死で生まれたんや。
それで念のため検査するから国立病院につれて行くことになった。
2週間で退院できるから。」
…よく事情がつかめなかった。
だけど、詳しく事情を聞こうという気もなぜかもてなかった。
左手には自動血圧計、右手には点滴、口には酸素マスク。
夜中中響き渡る血圧計の音・・・
私にはすべてが夢のようでぼんやりとした出産日になった。


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