あの日の憧憬

光り輝く黄金の翼。
優しい瞳。
力強い腕。

誰からも愛される、翼をもった、彼。

彼は私の憧れだった。
カノンは私が彼の話をすると醜悪なほど嫌な顔をしてみせたが、
私はそれでもカノンに彼の姿を話すことをやめなかった。

憧れだった。

自分も彼のようになりたいと、いつも思っていた。
彼が私をぎゅっと抱き締め、愛しているのだと囁かれたときは、
嬉しいような、悲しいような、複雑な気持ちだった。
一生、手の届くはずのなかった彼。
いつまで彼を追い続ければいいのだろうかと、焦っていたときだった。

『サガ、好きだ。愛してる』

嬉しいような、悲しいような、それと同時に疑問がわいてきた。
なぜ、私なのだと。
ずっとずっと、前を、上を向いていた彼が、なぜ突然後ろを振り返って私などに興味を示すのかと。
幼い憧憬を抱きながら、嫉妬をも向けているような私を、なぜ。

光り輝く者は、いつだって私のような醜いものを見てはいけない。
必死になって、焦って、ぼろぼろになってそれでも這いつくばって彼を追いかけている私など、


見られたくはなかった。絶対に。



憧憬と、嫉妬と、絶望と、———愛情。

幼い頃に抱いた幼い感情たちは、今でもそっと私の中に根付いていた。
太陽の光を一身に受ける、彼。
眩しすぎて、とても手の届くものではない。

彼はそんな私に手を伸ばしてくれた。

昔はそれがたまらなく嫌だったのが、今ではとても、暖かい。

憧れ続けた輝かしい存在が、今自分の傍にいてくれる。
ほんの短い時であるかもしれないが、それは、とても穏やかなもので。


あの日の憧憬。
今は、ここに。