| 【人は二度死ぬ】
この考え方は日本に限らず世界中で太古の昔からあるようです。一度目の死は肉体としての死。
 二度目の死はすべての人の記憶から消えたとき。
 人が死んでも、その生前を知る人が生きているうちは死んだことにはならない。生者が心の中に呼び起こすことができるから。
 記憶する人も死に絶えてしまったとき、死者は真に死者になる。
 
 部屋で一人静かに呑んでいると、これまで出会った様々な人のことが唐突に脈絡もなく思い出される、そういうことがよくあるのです。
 ある時、ふいに
 「いまここで生きている僕が在るのは、誰かがふと思い出してくれているから、
 かも知れないなぁ」と気付いたのでした。
 
 死者ばかりではなく生者もまた記憶によって生かされている/活かされているのではなかろうか、と。そんな気がしたのです。
 ただそんな気がしたのです。
 
 
 
 
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