| ●『初搾りを利く』
「利き酒」という言葉があるが、「酒を利く」という言葉の使い方はしたことがなかった。
 「ちょっと利いてみる?」と言われて一瞬ピンとこなかった。
 それでも状況からすぐに察し、
 日本酒の場合は特にこういう使い方がなんとも似つかわしいようにも思えた。
 味見、試飲、テイスティングなどよりも「通」で「粋」な感じ。
 
 さて。今年最初に仕込んだ酒がいよいよ「上槽」つまりしぼりの工程を迎えた。
 この初搾りを柄杓で早速利いてみる。
 香りも味も清々しくほんのり黄金色の液体は澄みわたる冬の夕空のようで。
 ほんの一口で世界がふわーっと拡がる気がした。こりゃあ、んまい!
 これはまだ圧力をかけずに自然に滴り落ちる本当に最初のもの。
 これ単体が世に出回ることはほとんど無いという貴重なもの。
 そしてこれこそが蔵で働く者だけが味わえる「蔵人のおたのしみ」という。
 
 あぁしかし独り占めの特権よりも、酒好きな友たちにも利かせたいなぁ。
 また一方。
 日本酒を呑み慣れておらずむしろ敬遠してきたヒトたちにも利いて欲しいなぁ。
 と思ったな。
 
 正直なところわし自身は日本酒に関してまったくの初心者のようなもので
 日々勉強、日々好奇心増大なのだが、
 改めて日本酒及び酒造りに興味が湧いてきた。
 カラダは日々の肉体労働であちこち痛かったり
 水仕事で手先はぼろぼろがさがさに荒れまくりだったり、
 これからどんどん寒く辛くなってゆくけど。
 がんばろっと。そして丁寧に大事においしいお酒を仕込んでゆこうっと。
 みなさま、おたのしみに!
 [06.11.11]sat
 
 追伸:初搾りから早1ヶ月。着々と仕込んだモロミが酒になってゆく。
 できたてのそれはまだ醗酵が止まっておらず、ピチピチと微炭酸を含んでいる。
 なんともうまし水なり。
 
 
 
 
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