| ●『肉と血と骨と』
木のように。生まれた土地で一生を全うする。それはからだでいうなら筋肉や臓器。
 
 風のように。さすらい流れて暮らす。
 それはからだでいうなら血流や神経。
 
 土のように。包み込むように想い見守り支え育む大きさ。
 それはからだでいうなら皮膚や骨格。
 
 人にも様々な役割があって。
 土地に暮らすもの、道に暮らすもの、とそれぞれが在る。
 と想うのです。
 
 そして、そのすべてを許容するものとは。
 万物に唯一平等に与えられる「死」であろうか?
 と想うのです。
 
 どんなに怒り憤り嘆き哀しんでも
 ほんとに死者を想うとき。最期には。
 「安らかであれ」と願っていることでしょう。
 また新たな旅に出るのだと捉えれば
 「よい旅を」との意味合いも込めて祈るでしょう。
 
 残されたものをそういう感情にさせるものこそ
 すべてを包み支えるものなのだろう。
 と想うのです。
 
 木は朽ち風に倒れ土に還る。
 その土の上で再びナニカが起ち上がる。
 
 そして。僕は。土地から土地へ。人から人へ。血の流れとなって。
 人や土地に出遭うたびに触発されながら歩く旅人の役割なのだな。
 と、腹をくくっているのです。
 
 
 
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