セキノヨルタチ・・・ ■ ARENA TOUR 2000 "HEAVY GAUGE" ■


= 2000.11.26 in 代々木第一体育館 =

とうとうこの日がやってきた。昨日まで天気予報は「東京は雨」だと言っていた。 朝起きて、雨戸を開けるとまぶしいくらいの光がさしこんできた。晴れた・・・。 お昼過ぎにFats Berryに行った。いつもにぎやかなお店だけど、今日はまた異様な雰囲気だ。 店にいる人、み〜んなGLAYファン。それぞれお気に入りのメンバーの衣装を真似、切抜きをもって待っている。 時折、店内に鳴り響く携帯電話の着信音も今日はGLAYオンリーだし、 セットするときに使う「ダイエースプレー」が途中で足りなくなって、慌ててスタッフが買いに行くほど大盛況。 「とうとう今日が最後ですね」と担当のTさんが言う。 「それがね、あんまりそんな気がしないんですよ、今度は○週間後、っていう感じなんですよね」というと 「なんだか、ライブが生活の一部になってるみたいですね」と笑われた。 渋谷から代々木に向かう途中、「フロンティア」の前を通った。少しだけ世間話をして店をでようとしたとき、お店のお兄さんが「最後だから楽しんでおいで」と声をかけてくれた。 そう・・・今日が最後・・・急に心臓の鼓動が早くなった。 入り口でチケットの半券が切り取られるとき、とても切なかった。 一時期、10組近くあったチケットもとうとうこれでなくなってしまった。


席につくともうほとんどの席が埋まっていた。それでも後から後から人が入ってくる。 トイレや喫煙で席を離れていた人もどんどんと戻ってくる。 みんなはやる気持ちを押さえきれないようだ。 開演時間を少し過ぎた。 ついにステージ横の「J-PHONE」の看板の明かりが消えて、アリーナの真ん中あたりに設けられたPAブースに向かって、黒い洋服を着た人たちが歩いて行った。 最初にスタンドの明かりが消えた。歓声があがる・・・アリーナの明かりもすぐに落ちる。 足元からビリビリくるような衝撃が体を走り抜けて行った。


HEAVY GAUGE
MERMAID
MC


TE 「泣いても笑っても今日が最後だぜっ!!体がしびれるぐらいガンガン行くぜ〜っ!一緒にバカになろうぜ〜っ!」


彼女の"Modern・・・"
FATSOUNDS
生きがい
SPECIAL THANKS
MC


TE 「4月からはじまったHEAVY GAUGEツアー、代々木から始まったんですが、 半年間に渡るロングツアーでしたが、また代々木にもどってくることができてうれしいです。 HEAVY GAUGEツアーも本日をもって終了することになりました。 デビューしてから6年・・・函館から夢をみてでてきて歩きつづけていたら、こんなとこまできちゃいました(笑) 次の曲はね、俺達がデビュー当時からやってる曲で、 GLAYはライブバンドなんだっていう証明みたいな曲です。」


More than LOVE
セッション〜口唇
MC


TE 「え〜、楽しんでますか?マジでね〜、なんか感極まっちゃうね。 (ステージの前を歩きながらMCするTERU)
なんかこうやって歩きながらMCすると演歌みたいだね。


会場、大爆笑。JIRO・HISASHI・TAKUROもウロウロ歩きはじめる。


今日は頭からすごい盛り上がりでさ、名古屋の俺の誕生日の時もすごいよかったんだけど、さすがファイナルだね、今日はそれ以上だよ。 ほんとにね、日本全国どこに行ってもみんながあったかく迎えてくれるのでうれしいです。 HEAVY GAUGEツアーは今日で終わっちゃうけど、これからもね、こういうライブを通して、元気とか笑顔とかのキャッチボールを続けて行きたいです。 GLAYはね、50歳ぐらいまで大丈夫ですからね。ギターのヤツが言ってたけど、ハゲたヤツから脱退するんで。


(会場、大爆笑)TAKUROがアップに・・・苦笑い中。


ギターのヤツが一番危ないと思うんだけどな・・・でも俺も気をつけなくちゃ。」


とまどい
Missing You
LEVEL DEVIL
ROCK ICON
VJ


TE 「今回のツアーではたくさんの新曲ができました。 次はその中から1曲聞いてもらおうと思うんだけど、この曲はめちゃくちゃ激しいです。 パンク調だからねっ。だからみんなも顔はちょい怒り目で、 にらみつけてるぐらいがちょうどいいと思います。」


PERSONAL PERFECT WORLD(新曲、タイトルはたぶんこんなの)
TOSHIソロ〜誘惑


長い長いTOSHIのドラムソロ。 モニターにはTOSHIが大好きなスヌーピーの落書きみたいな絵がでてきて一緒にドラムをたたくかわいらしい演出もあった。


COME ON!


イントロで会場をあおりまくるTAKUROはカメラに向かって中指をたてるだけでなく、 ギターを歯で弾く?なんてすごいワザまで披露していた。


サバイバル
MC


TE 「いよいよ次の曲で最後です。みんなは幸せですか? 俺ね〜、時々幸せって何なのかなって思うことがあるのね。 こうやってステージに立っているときが幸せなのか、好きな人と一緒にいることが幸せなのか・・・ 確かにこうやって歌っているときはすごく幸せなんだけど、麻痺しちゃってわからなくなってるんだね。 幸せというのはその中にいると麻痺してしまって気がつかないけど、GLAYの曲を聞いて思い出して欲しいと思います。 そういう気持ちをこめて、俺達がとても大切にしている曲を聞いてください。」


Will Be King


会場が明るくなる。 TERUもTAKUROもHISASHIもJIROも、大きく両手を上にあげて歓声に応えている。「ありがとう!ありがとう!また必ずあおうぜ〜!」とTERUが叫びながら、北、南、センターと順番にまわって、ステージの裏に消えて行った。


「生きてく強さを重ね合わせ 愛に生きる
努力が実ればそうたやすく もう迷わない
I can believe human & life そういつでも いついつまでも
悲しみ響く"あの日"には もう戻らない」


「アンコール」の声の変わりに「生きてく強さ」の大合唱と手拍子。 せまい会場の中に響く声は壁や天井に反響して耳に心地いい。 何度も繰り返し歌うスタンドもアリーナもまさしく総立ちになってステージを見つめていた。 やがてステージが明るくなると、さっきの歌声の何倍もの歓声があがった。ツアーTシャツに着替え、タオルを肩にかけたメンバーが登場する。 TERUがマイクに向かって何か喋ろうとしても、その歓声はおさまらない。 割れんばかりのその歓声をおさめたのは、小さなギターの音とやはりTERUの歌声だった。


「生きてく強さを重ね合わせ 愛に生きる」


小さくやさしい声でTERUが歌いはじめる。


「努力が実れば そうたやすく もう迷わない・・・」


会場も一緒にうたう。最後の「もう迷わない」はかなりゆっくりなテンポでやさしく置くような声だった。 ちょうど前にでてきていたJIROがちょろっとベースを弾いて、アンコールに入った。


TE 「20世紀最後のアンコールありがとう!みんなの「生きてく強さ」の大合唱を聞いてると、あ〜、ファイナルなんだなって思うね。(あと、忘れてしまいました)」


HOWEVER(アコースティックver)


TE 「次もまた新曲です!めちゃくちゃノリのいい曲なんで、みんなでこの代々木を揺らそうぜっ! 今日は会場に14000人入ってるんだけど、この14000人とGLAYとスタッフで激しく代々木を揺らそうぜ〜っ!!」


WET DREAM
SURF RIDER
JIRO MC


JI 「今日は何も言わなくても勝手に盛り上がるから、曲いくぜ〜!」


「え〜〜っ!」という会場からのブーイングにこたえて、 JIROは自分の頭をベースのネックにガンガンぶつけていた。


SHUTTER SPEEDSのテーマ


「それじゃここでイカしたメンバーを紹介するぜっ!」とTERUが叫んで HISASI・JIRO・TOSHI・SHIGE・TAKURO・TERUの順番にメンバー紹介。


TE 「最後に〜、イカレタ仲間をもうひとり呼んでるぜっ!ギター!MASAHIDE SAKUMA!」


明るい茶色の髪に黒ブチで四角いレンズのめがねをかけた佐久間さんが飛び出してきた。 ステージの中央で演奏すると、TAKUROが佐久間さんの足元にひざまずいてセッションする。


TE 「OK!ラスト〜!ラスト〜!ACID HEAD〜〜〜っ!」


ACID HEAD


14000人はいった会場が一斉にジャンプする姿はまさしく壮観で、ほんとに代々木が揺れているような気がした。 みんな、これが最後!とばかりに誰よりも高くジャンプしていた。 ♪Kiss & KissでTERUは小さく投げKISSをすると「ふぅ〜」と会場に向かってKissを吹き飛ばしていた。 そのしぐさにあわせて背後のモニターにはハートマークが大写しになるTERUの口元からひらひら〜と飛んでいった。 汗が目に入って痛かった。大声で叫びつづけているので息ができない。頭がくらくらして、意識が遠のいていくのがわかった。 「やばい・・・このままだとマジで倒れる・・・」今回のツアーで2回ぐらい興奮のあまりに倒れてしまった人をみたけれどまさか自分がそうなる間際までいってしまうとは思っていなかった。 このあとすぐにジャンプするところは終わったので幸い倒れることはなかったけれど、息を吐いたら、ちゃんとすわなくちゃいけないんだな・・・と単純なことに改めて気がついた。


HEAVY GAUGEツアーの最後を飾る大きな爆音がしたあとTERUが絶叫した。


「HEAVY GAUGEツアー終了〜!終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


客席からも大きな拍手と歓声が起きていた。どの顔もマラソンランナーがゴールテープを切ったときのような達成感で満ちていて、満面の笑顔だった。 TOSHIとSHIGEも前にでてきて、いよいよファイナル恒例の万歳。ステージの中央よりややHISASHI側によったところでみんなで手をつなぐ。 私も今回のツアーでほとんど一緒に見て回った相棒と手をつなぎ、大きくジャンプした。 HISASHIとJIROはピックを客席に投げこみ、TERUは何度も「サンキュー」と叫んでいた。 TAKUROも何か叫んでいたが聞こえない。 満足そうに客席を見上げる笑顔がモニターにうつると、ますます大きくなる歓声を聞いて 「JIROじゃないけど、そんなに大きな声ださなくても、ちゃんと伝わってるよ」と言いたげに、何度もうんうん・・・とうなづいていた。


アンコール2


メンバーがステージ裏にさがってから5分とたたないうちにステージが明るくなる。 それぞれピックを投げたり、タオルを投げたりしながらステージに戻ってきた。 TAKUROがツアーグッズではない青いタオルを客席に投げこんだ。


TA 「なんだよ〜・・・、営業用のタオルじゃないんだよね、それ。(笑)」
TE 「ゆっくりたばこぐらい吸わせなさいって!(笑)」



めちゃくちゃ早くメンバーがステージに現れたのは、会場にこだまする一糸乱れぬアンコールのせいだった。


TAKURO MC


TA 「ちょっと時間をください。俺からも言っておかなくちゃいけないんだけど、 約半年間の長いツアーは正直言って、体力的にも精神的にも辛かったけど、落ちこんでしまったときは、みんなの声援を思い出していました。 ほんとにありがとう!次の曲は2001年のGLAYの活動を占う曲です。 俺達がデビューしてから6年、いろんな人たちと活動してきたけど、中には「一緒に21世紀を見よう、21世紀を楽しもう」って仲間もいたんだけど・・・」


ここまで話をしてTAKUROは声を振るわせ、絶句してしまった。すすり泣く女の子の声に混じって会場から「TAKURO!」という声が沸きあがる。


「"一緒に楽しもう"って言ってたのに、なんでみんな行ってしまうんだろうって・・・」


絶叫にも近かった。


TA 「すごい凹んでしまって・・・でもそんなときはみんなからの声援を思い出し"大丈夫"って思っています。 どうあがいたって、時間は前にしか進まないんだから、これからも俺は、一瞬一瞬で感じたことを詞につづっていきたいと思います。」 (他にも少し話していたけど、全然覚えていないです・・・これ以上書けません、ごめんなさい。)


ひとひらの自由(新曲)


モニターには古い8ミリテープのようにちょっとノイズの入った映像が流れている。 時折、左右にゆがむその画面が、ステージで演奏するメンバーの姿、使っている楽器、置かれている機材・・・ファンの声、涙、会場に流れる風や伝わってくるやわらかな感触・・・ 目に見えるものも、目に見えないものも、その場にあるすべてものをモノクロの想い出に変えていくようだった。 プリーツスカートをはいた幼い女の子が、カメラをもっている絵がモニターにうつる。 彼女は20世紀のあらゆる事件や出来事を1枚1枚写真で切り取っていく。その写真はカラーからやがてセピア色に変わり、モニターの中の女の子は1枚写真をとるごとに成長していく。 子供から少女へ、そして大人の女性に、母に・・・やがて年老いて・・・。 「時間は前にしか進まない」と3日連続でMCしたTAKUROの気持ちを、この曲のすべての映像がわかりやすく伝えているようだった。 20世紀の出来事をつづった写真の最後を飾ったのは、軽く口唇を重ねるレノンとヨーコの写真だった。 TAKUROの右腕に刻まれた「yes」というタトゥの意味が少しわかったような気がした。 「愛を忘れたい」という言葉ではじまった「HEAVY GAUGE」、半年間の長い旅の終わりにたどり着いたのは、 この言葉とは正反対の以前よりも深く、どこまでも大きな「愛」だったのかもしれない。 会場あちこちから嗚咽がもれてくる。私もこらえ切れずに次から次へと涙がこぼれて、声を押し殺して泣いていた。 これが最後だというさみしさと、TAKUROの曲にこめた思いがあまりにも辛かったから。


「僕は孤独だ だから歌うんだ」


「ひとひらの自由」にでてくる一節。 TAKURO・・・あなたは一人じゃない。明るくなったステージに、大きな歓声と拍手が贈られる。


TE 「本当にありがとう!楽しい時間をすごすことができました。そしてね、長いツアーに最後までつきあってくれたVJチーム!ホントにありがとう! みんなからもVJチームに大きな拍手を!来年の夏にまた会いましょう。それまでみんなもパワーをためておいてくれよ!OK?」
(会場からOK〜!という声が上がる)
TE 「来年の夏、また会おうぜ〜っ!サンキュー!」


TERUが絶叫する。 JIROもHISASHIも客席に向かって何か叫んでいる。TAKUROは両手を横に広げている。 それぞれのスタイルで客席からの悲鳴のような歓声に応え、満足そうにステージの袖に消えて行った。


77回目のスタッフロールが流れる中、席に座りこんだ。もしかしたらまた「アンコール」の声が起きていてかもしれないけれど、私には何も聞こえなかった。 「See you!」の文字が目に飛び込んできたけれど、1ミリも動けなかった。 係りの人のせかす声がして、はっと我に返ったときはもうアリーナもスタンドも、人影がまばらになっていた。 今日会場に来られなかった友達に電話をしながら、トボトボと出口に向かう。 振り返るとさっきまであんなに暑くて、狭かった空間はガランとしていた。 早くも撤収作業が始まっているらしく、会場内からひとつ、またひとつと花が運び出されていた。 開演前に会えなかった友達や、今日会場に来られなかった友達に連絡をしているうちに寒くなってきて駅に向かって歩き始めた。


あと1時間もすればきっと広場にも人がいなくなって、世界でいちばん熱かった場所も、しばらくの間静かな時間を過ごすのだろう。

■ セットリスト ■

申し訳ありませんが、セットリストは本文中、もしくはオフィシャルページ等を参考にしてください。


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