キセキノヨルタチ・・・ ■ ARENA TOUR 2000 "HEAVY GAUGE" ■
= 2000.06.08 in 名古屋レインボーホール =
名古屋レインボーホールの最寄駅は、きっと何でもない普通の日なら近所に住む人々が
日々の通勤通学や買い物に使う程度の、どこにでもある小さな駅なのだろう。
何でもない普通の日は・・・。
その日、2000年6月8日午後4時30分すぎ、その笠寺という名前の小さな駅は、
今にもホームから人が溢れ出しそうなほどの人出だった。
男も女も大人も子供もみんな笑顔で、その人の波は延々と続いていた。
知らない人が見れば、いったい何事だろうと考えてしまいそうな一種異様な雰囲気の人の波は
やがて決して大きいとは言えないホールの前の広場に飲み込まれていった
開演時間までまだ少し時間がある。
絶対会おうね、と約束していた人を探して会場前を歩きまわる。
友達と写真をとっている人、携帯で話をしている人、ライブグッズを買うために行列している人・・・
こういったみなれた風景に加えて今日は特別な風景があちこちで見うけられた。ちょっとした広場のようなところでは、大きな紙にごちゃごちゃとお願いごとを書いた紙を掲げた集団が声を張り上げ、
ちょっと遠巻きに取り囲むようにギャラリーの輪ができていた。
私もその輪に加わり、声に耳を傾ける。
突然背後で「パーン」と大きな音がして振りかえると、
6人ぐらいの女の子が大きなチョコレートケーキを囲んで食べていた。
その円いケーキには数本のローソクが立っていて、
真ん中に白い文字でこう書いてあった。
「HAPPY BIRTHDAY DEAR TERU!」
自分ではない誰かの誕生日がこんなに待ち遠しかったことはない。
思ったより狭い会場内には、全国各地から今日の為に駆けつけたと思われる人が
今か今かとステージを見つめる。
開演予定時刻の午後6時30分、いつも通りの注意事項を読み上げる女性のアナウンスが「まもなく開演いたします」と告げた。
大きな歓声とともにいっせいに立ちあがる人たち。
しかし、夢のような時間が始まる瞬間を告げるSEが流れたのはそれからさらにしばらくたってからだった。
もう誰もじっとしていられない!といった様子。
SEが流れ背後の巨大モニターに「HEAVY GAUGE TOUR」の文字が現れるとともに
メンバーがせりあがってきて、TAKUROの重いギターの音でライブは始まった。
HEAVY GAUGE 悲しみの際に立ちすくむふたりに 今 世情の雨が降り注いで・・・
両腕を大きく横に広げてTERUが歌いあげる。
全編を通して今日のTERUの両手はとても表情豊かだった。
両腕を横に広げたり、会場を指差したり、胸に手をあてたり、拳を握って天井に突き上げたり・・・。
クルクルと宙を舞うようなTERUの指先を見ているだけで胸が締め付けられるような想いがした。
一変してHISASHIが中央にでてきて、攻撃的なギター音を上げる。
「HEAVY GAUGE」を聞きながら抑えていた気持ちを、
ここぞとばかりに爆発させるような「ひゃ─────────→っ!」の後、
JIROがお得意の「ジロウズジャンプ」を炸裂させながら激しくステージを走りまわる。
いつもはマイクスタンドを後ろにおいて歌うTERUだけれども
今日は軽々とマイクスタンドを持ち上げ、右に左に振りまわし、蹴り上げ、軸にして大開脚ジャンプ!
後ろをHISASHIがひらりと身を躍らせながら移動し、
TAKUROは大きな体をバタバタと「く」の字に折り曲げ演奏に夢中になっている。
今まで見たことがないようなメンバー全員の激しい動きに負けまいと観客も拳を天井に突き上げ、
その客席の姿に煽られるようにメンバーの動きがさらに激しくなる。
お互いに触発しあうステージ上のメンバーと客席のファン。
どこまでいくのか想像もつかないボルテージの高さで2曲目にして私は汗でびっしょりだった。
途中のサラマンダーソロのTOSHIのドラムもガンガンと心臓に響いて
左手に握ったペットボトルからもビリビリと振動が手のひらに伝わってきた。
「FATSOUNDS」が終わってステージに明かりがついた。
「今日の名古屋は暑かったなー!!でもステージの上はもっと熱いぜーっ!」
TERUの絶叫に汗ダクダクの客席も体全体を使って応える。
この日の名古屋の最高気温は何度だったかしらないが、
湿気が体中にまとわりつくようで、ちょっと歩いただけで汗をかいた。
そんな日にスポットライトを浴び、歌を歌いながら全力疾走するとどのくらい体力を消耗するのだろう?
今日のTERUはちょっとでも間奏が入ると、ドラムセットの前においたペットボトルに口をつけ、
タオルでしたたり落ちる汗を拭いていた。
「サバイバル」「彼女の"Modern・・・"」とさらに激しいナンバーのあと「Young oh!oh!」
以前TAKUROが自分のラジオで「Young oh!oh!」はかなり冒険派の選曲、と言っていたが
そんなことは名古屋は関係ないようだった。
私の席は4階とかなり高い位置からアリーナやステージを見下ろす席だったが、
そこから見ていると客席のファンがみんな練習したかのようにそろってジャンプするので気持ちいいぐらいだった。
ステージの照明が落ちる。
再び明かりがついたとき、TERUが着ていたTシャツが変わっていた。
マイクに向かうTERUはハアハアと息を切らせ、大きく肩をゆらし、
マイクがTERUの呼吸の音をはっきりと拾っていた。
TE 「ごめんね〜、鼻息荒くって・・・(照笑)」
客席、大爆笑
TE 「なんかさー、皮膚呼吸できなくて、もし俺が倒れちゃったら看病してねっ」
TERUのはつらつとしたMCに今日の調子の良さが伺えるようだ。
さらにTERUのMCは続くが、はっきりと思い出せない。
続いて軽いセッションのあと「口唇」「生きがい」と続いた。
「生きがい」の後奏を担当しているTAKUROのギターの音が止まった瞬間、
恥ずかしい話だけれど私は声をだして泣いてしまった。
ミレニアムのライブで「生きがい」をはじめて生で聞いたときから
ライブで演奏されるたびに涙があふれてきそうになったり、あふれてしまったりしたことはあったけれど、
今日ほど激しく感情がこみ上げてきたことはなかったと思う。
いつもとなりで一緒にライブをみている友達が驚いて「らんちゃん、大丈夫?」と私の顔をのぞきこんだほどだった。
場内が明るくなってTERUのMCが始まる・・・と言っても私はほとんど覚えていない。
覚えているのは「もしかしたら、GLAYがどこかへいってしまうんじゃないかって思ってる人もいるかもしれないけど、
それは、ずっと同じ場所にとどまるのではなくて、少し前に進んだってことなんだよ。
そういう想いを込めた曲を聞いてください。」という「ここではない、どこかへ」の紹介の部分だけだった。
再びステージの照明が落ちる。
少し間があって、静かなピアノの音が聞こえてきた。
どんな風にたとえればいいのかわからないけれど、とてもゆったりとして心地いいメロディだった。。
今度は真上からあてられる光の筋の中にTAKUROの姿がぼんやり浮かび、
続いてHISASHIの姿が浮かんで消え、TERUのハミングにあわせてTERUが浮かびあがってくる。
TAKUROのピアノもそうだけれど、ライブを通して「HAPPINESS」は確実に成長していったと思う。
今回のツアーで何回か聞いたけれども、回数を重ねるごとに重く深く大きくなっていく様が見えるようだった。
照明のせいなのかどうかわからないけれども、本来TERUひとりがうたっているはずなのに
ゴスペル隊のコーラスが入ったように聞こえるし、
暖かいオルガンの音が尚一層曲に厚みをつけていたように思う。
「HAPPINESS」が終わると、一変してPA部分に照明があたる。
ノリのいい音楽が流れる中、VJスタッフ(←巨大モニターにうつす画像を操作してるスタッフ)の紹介
ひとりひとり名前が呼ばれると名前が呼ばれたスタッフは両手をつきあげ、
ファンからの歓声に応える。
メンバー紹介をしないのに、スタッフを紹介してしまうあたりに、
いつも大勢のスタッフに支えられて、有意義な活動ができることを感謝しているGLAYの姿がみえるようだった。
新曲「MERMAID」「LEVEL DEVIL」で再び場内を熱くもりあげて
客席のファンと掛け合いしながら「月に祈る」の演奏がはじまる。
このあたりからラストの「Will Be King」まで私の記憶はぜんぜん残っていない。
いつもライブから戻ったら、そのままパソコンに向かってレポをかいたり
メモに大まかな内容を書いておいたりして、後から思い出せるようにしているが、
今回はTERUの誕生日ということ以外に、
個人的な理由で「レポなんかできなくてもいい!声がつぶれるまで暴れてやる〜!」と思っていたので
セットリストを書きとめるのが精一杯だった。
楽しみにしてくれていた人、ごめんなさい。
もっと、「この曲ではこうだった、あーだった」と詳しく話をしたいのだけれど覚えていない・・・。
演奏された曲は「COME ON!」「誘惑」「Will Be King」だった。
「誘惑」が終わって、ステージが明るくなる。
マイクスタンドのマイクを両手で包みこむように持ついつものポーズで
TERUが話をはじめる。「いよいよ次が最後の曲です」
客席からいっせいにブーイングの声があがる。
「ありがとうね。でも、最後ですって言って、あー、よかったって言われるのもいやだけどね」
会場からの笑い声につつまれて「Will Be King」のイントロが流れる中、
TERUはドラムセットの前に置いた水を飲みに行き、
そのままペットボトルを持ってマイクのところまで戻ってきて、そっと自分の足元にそのボトルを置いた。
メンバーが舞台袖に消えていくとすぐに「HAPPY BIRTHDAY」の歌声が聞こえてきた。
驚くほどぴったりそろった手拍子と歌は延々つづいた、いったい何回歌っただろう。
HAPPY BIRTHDAY TO YOU
HAPPY BIRTHDAY TO YOU
HAPPY BIRTHDAY DEAR TERU!!
HAPPY BIRTHDAY TO YOU
今まで何回も家族や友達たちの誕生日に歌ってきた歌だけれど、
こんなに一生懸命、何度もくりかえして誰かの為に歌ったことはない。
「TERUさん、愛されてますね〜」
名古屋にくる前に寄った美容室で担当の美容師さんが言った言葉をふと思い出した。
GLAYにだって売れない時代はあった。
特に東京にでてきたばかりのころは右も左もわからないで焦りを感じていたことだってあっただろうし、
それこそ「函館に帰りたい」と思ったこともあるだろう。
だけどTERUは絶対に「解散しよう」とか「函館に帰りたい」とは言わなかったそうだ。
のちに雑誌のインタビューでTERUは「俺が、解散しようといったらそれでGLAYは終わりだと思っていた」と発言しているし、
TAKUROも「TERUがいなかったら、年末の怒涛のスケジュールはこなせなかった」と今年はじめに振りかえっている。
いつも明るくて、他のメンバーやスタッフ、ファンにさりげない心遣いをしてくれるTERU。
その愛されてやまない人柄に、どうすれば感謝の気持ちを伝えられるのか考えるけれど、
答えはでないので、一生懸命「HAPPY BIRTHDAY」を歌っていた。
何度「HAPPY BIRTHDAY DEAR TERU」と叫んだことだろう。
かなりの時間がたってようやくTERUがステージに現れた。
ツアーグッズのバスタオルを肩にかけている。
マイクに向かうが他のメンバーがでてこないのでちょっと困った顔をしながら照れくさそうに言った。
TE 「ありがとう!しっかりみんなの声が聞こえていました。
今日の午前5時をもちまして、めでたく29歳になりました。
ひとつうれしいことがあります!それはみんながいくつになっても"TERUくん(はあと)"って呼んでくれることです。
いつまでも心はティーンエイジャーだぜっ!!!」
TERUのコメントに多いに客席が盛り上がったところに、
スーツ姿の男性が大きなバラの花束を抱えて現れ、TERUに手渡す。
大きく両手をあげて花束を掲げたあと、その中から1本抜き取って口にくわえる。
まるで及川ミッチーのようだ(笑)
たったそれだけの動きなのに会場が盛り上がる!盛り上がる!
調子づいた(?)TERUはくわえたバラを客席に向かってなげる!・・・がステージの先端に落ちて客席まで届かない。
客席の最前列あたりの人たちは身を大きくのりだしてバラの花をとろうとするが、
ニヤッと笑ったTERUが拾い上げて、なんと元の花束の中にもどしてしまった。
TERUって本当にお茶目な人だ。周りの人を自然に笑顔にしてしまう。
バラバラと後からメンバーがでてきて、それぞれの持ち場につくのを確認してTERUがMC。
TE 「"HEAVY GAUGE"というタイトルで全国をまわってきたけど、
誕生日だからって浮かれてる場合じゃないんだよっ!
いつもだったらここでミディアムナンバーで聞かせるところだけど、
今日はハードでクールに行くぜ───→っ!
オ・マ・エ・ラを(←ここで会場を指差す!)"愛の奴隷"にしてやるぜ〜!!」
この時の会場の歓声といったら・・・どんな風に形容したらいいのかわからない。
テンポはCDと同じぐらいだけど、かなり変則的な「LOVE SLAVE」で会場が大爆発したあとクライマックスを迎えた。
「LOVE SLAVE」の後奏にかぶる形で「次の曲はみんなで一緒に歌おうぜ!生きてく強さぁぁぁぁぁ!」
短いイントロの後「生きてく強さを重ねあわせ・・・」と会場中のファンが腕を振り上げ、声を張りあげる。
でも私はできなかった。
となりで見ていた友達と抱き合ってワーワー声をあげて泣いていたから。
仕事のこと、家庭のこと、友達のこと・・・いろいろ辛かったり苦しかったり悩んだりしていたものを
ひとつひとつ解決していってのライブ、「私、がんばったよ」と胸をはって報告しに行くためのライブだったから、
この「生きてく強さ」が「そう、よくがんばったね。これからも負けんなよ」と言われたような気がして
本当に子供のように泣きじゃくってしまった。
あまり人前で泣いたりしない性格だから、あんなに号泣したのはまさしく十数年ぶりだったかもしれない。
大泣きし通しだった「生きてく強さ」が終わるとJIROがジャンジャン、ベースを弾きながら中央に出てきた。
「Yeah──────→!!」とJIROが叫ぶとその数倍の歓声が返ってくる。
またJIROが「Yeah────→」と返すと、またその数倍の歓声が返ってくる。
そんな掛け合いが何回か続いてTERUも同じように客席を煽る。
「SHUTTER SPEEDSのテーマ」「ACID HEAD」と激しい曲でラストを飾る。
くるくる回るHISASHI、「ジロウズジャンプ」炸裂しまくるJIRO、
得意のポーズで客席を煽るTAKURO、ステージを走りまわっても息が上がらないTERU。
こんなパワフルなライブはあまりみたことがない。
客席だってステージのメンバーに対して一歩も引けをとっていない。
ステージが10のものを投げかけてくるんだったら、
客席はそれを100にして返そう、
それをメンバーが1000にして返してきたらさらにその上を行こう・・・と言った感じで
まさしく一触即発・・・ステージと客席が互いに切磋琢磨しながらのすばらしいライブだった。
客席に明かりがついて客席を眺めると、一心にアンケート用紙に今日のライブの感想を書いてるファンの姿が目に入った。
どの顔も汗びっしょりで、女の子なんか眉毛がなかったりするんだけれどイキイキとしてて、
数時間の間にメンバーから受け取ったイロイロな目に見えないものについて感じたこと、思ったこと、考えたことを
友達とあーでもないこーでもないと話をしながら書きこんでいた。
きっと私達の思いはメンバーに届いて、次の活動に反映してくれるに違いないと思う。
ライブが終わって会場をでると、ちょっと冷たい風が心地よく、「GE 99」の帰り道を思い出した。
あの日からまもなく1年、個人的にもいろんなことがあったけれども、
私はあの頃と比べて少しでも前に進んでいるんだろうか?
次にGLAYに会うときは、また「私も頑張ってるよ」と胸をはっていられるように、
これからの毎日をすごしていきたいと思う。
HEAVY GAUGE
FATSOUNDS
サバイバル
彼女の"Modern・・・"
Young oh!oh!
口唇
生きがい
ここではない、どこかへ
HAPPINESS
MERMAID
LEVEL DEVIL
月に祈る
COME ON!
誘惑
Will Be King
LOVE SLAVE
生きてく強さ
SHUTTER SPEEDSのテーマ
ACID HEAD
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