俺の父親は、偉大なカメラマンだった。

 新聞社の報道カメラマンとして、常に最前線で『生きた写真』を撮り続け、それは国内のみならず、海外でも高い評価を受けるほどだった。父の撮る写真には、そこに写る人や物の息吹と、それにまつわる多くのドラマが焼き付けられていて、見る者の心を惹きつけてやまなかった。

 そんな父は、去年、この世を去った。
 戦時下の某国で爆弾テロに巻き込まれ、そのまま帰らぬ人となった。息を引き取ってもなお握り締められていたというカメラは―――自分の命よりも大切な商売道具であるカメラは、奇跡的に無事で、俺はそこに父が燃やし続けてきた仕事への情熱を見たような気がした。

 ジシャッ。

 重厚なシャッターの音が心地良い。俺もまた父の跡を継ぎ―――いや、正確には、父と同じくカメラマンとして活動し、今年で早7年となる。気がついた時には、父と同じ道を歩み始めていた。誰に言われるでもなく、まるでそれが始めから決まっていたかのように、俺は新聞社のカメラマンになっていたのだ。

 だが。
 俺と父との違いは―――

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