ウソだ!

 ウソだウソだ!!

 そいつは一体誰なんだよ!!

 どうしてそんな男と一緒にいるんだよ!!

 キミは僕だけのもので、

 僕はキミの――――




 キキキ―――――ッッ!!

 急ブレーキの音が響く。
 激しい衝撃音に、絹を切り裂いたような女の悲鳴が重なった。

 花弁リンゴが、ヘッドライトに照らされた宙に舞い上がった。飛び出した塊は、ボンネットの上で『くの字』に折れ曲がった格好で一度跳ね、フロントガラスにぶち当たり、そのまま後部の方まで転がっていった。

 ズシャッ。

 鈍い音ともに、それは地面に叩きつけられる。

 「おい!誰か飛び出したぞ!!」

 沿道を行く人の声が響き、辺りは瞬時に騒然となった。




 ああ、散っていく・・・
 せっかく彼女の為に選んだなのに―――

 つぶれちゃったなあ・・・
 美味しそうに色付いていたリンゴ―――

 ああ、彼女、どうしただろう・・・
 僕を見て、泣くんだろうか――― 

 僕を見て・・・
 僕だけを見て――――――

 

 暗いアスファルトの道路には、無数のガラス片と金属片、そして、目にも鮮やかな「」が散らばった。

 

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