「マサルくん」

 ミキの顔がぱあっと明らむ。黒のライダースーツを着た男―――マサルは、可愛い銀色のヘルメットを抱えながらふたりに近付いた。ミキの隣にいた女友達は、にっこりほほえんで頭を下げると、簡潔に自己紹介を済まし、マサルもまたペコリとお辞儀をして挨拶を済ませた。
「ホントいつのまにミキってば、こんなカッコイイ人と付き合ってたのぉ?」
「やだ・・・そんな・・・」
照れるミキに変わってマサルが口を開いた。
「俺たち職場が同じなんですよ。あのケーキ屋で働いてて・・・。ねっ?」
「へえ〜、じゃあマサルさんもパティシエなんだぁ」
感心した声を上げる女友達に、ミキは頬を赤らめたまま頷く。
「ふたりで一緒に修行中の身なんだよな」
マサルはそう言ってミキの顔を覗き込みながら微笑む。
 マサルとミキは、同じケーキ屋で働く仲間だった。パティシエになるべく修行する仲間であり、ライバルであり、そして共に励まし合う大切なパートナーとして、お互いを意識するようになっていったのである。
「なぁんだ!じゃあ毎日そこの厨房で会ってるってこと?それじゃ、あたしが気付くわけないか〜」

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