三分 | |
「隊長、どないしたんですかコレ…」 「……パッケージが、な。ちゃんぽんに似ていて、」 間違うて買うて来たんかい、と、嶋本は心の中でだけ豪快に突っ込んでおいた。心の中だけなのは相手が上司でなおかつ尊敬する人物だからだ。仮にもひよこだったら蹴りの一つ二つ当たり前だったろう。 「しゃーないっすね。今日の昼は皆さんコレ食べましょう。高嶺さん、お湯お願いします。」 なにしろ、そのカップラーメンはダンボールに一箱あるのだ。 「すまない。」 「ええーっすよ。メシ代浮いたわけですし。」 はははと、二人は笑いあった後、ラーメンの包装をはがした。嶋本はなれたもので、さっさと蓋を開けて適当にかやくと粉末スープを面の上へ開けていく。 ところが真田は目の高さまでカップを持ち上げて、側面に書かれたお召し上がり方を熱心に見ていた。 「お湯沸きましたよ。嶋、皆を呼んできてください。」 嶋本が出て行ってから、真田は高嶺に湯を注いでもらい、3分待った。 3分待った。いただきますと口に出してから割り箸を割った嶋本を真田が呼び止める。 「嶋本、手伝ってくれ。」 「なんすか?」 のびてしまうと思いながら、嶋本は真田に答えた。真田は小袋を嶋本に突きつけている。 「召し上がる直前にお入れください、だそうだ。頼む。」 嶋本が渡されたのは「調味油」と書かれた小袋だった。 真田は割り箸で麺を少し掬い上げた状態で待機している。 「えっと、つまり、」 「直前だ。」 仕方なく封を切った嶋本は行きますよと声をかけて中身を真田のラーメンの中に入れた。直後に真田は麺を引き上げて啜る。ずずずずず。 「…うまいですか?」 「まあまあだ。」 「そうですか。」 無駄な疲労感に襲われた嶋本。彼のカップラーメンはすっかりのびてしまってまあまあなどと言えた味ではなかった。神兵・真田は今日も伝説を作る。 そんな真田さんが見たかった。 | |
written by 習字[夜行バス7時間] 2007 |