ハナが咲く | |
いつの間に俺はこんなに甘くなったんダ? 形無しじゃねーカ まぁ…悪い気はしねーがナ そう思いながらムヒョは『close』と書かれた札をドアノブに引っ掛けた ハナが咲く 夕焼けが事務所のカーテンをオレンジに染め上げる まだ日が傾き始めてからそんなに時間はたっていない 今日は珍しくムヒョが早い時間に休業の張り紙をだした ロージーは驚きながらも嬉しく思っていた なんて言ったって今日は特別な日だ!ムヒョがそれに合わせたかどうかは知らないが とにかく今日のため昨日からとある料理の材料を買い込んでいた 久しぶりにその材料をフルに使いとっておきのモノを作っていた ゆっくりとした夕方の時間を過ごしていた コトコトと音を立てる鍋にはしっかり煮込んだビーフシチュー、サラダだって今日は手間をかけてポテトサラダししました! グラタンのクリーミーに仕上がったし、久しぶりにロールキャベツだって作れた! そして何より今奮闘しているこのとっておきのモノ… ムヒョはこのとっておきのモノ喜んでくれるだろうか? そんな事を考えているロージーの顔はいつもの以上の可愛い笑顔になっている ムヒョはいつものようにジャビンを読みながら そんなロージーを片目で見て思わずにやけそうになるのを必死で抑えている ロージーは料理だけでなく家事全般を難なくこなす 上司としてはそのくらい器用なら魔法律の一つや二つ難なくこなして欲しいところだ しかし個人的、六氷透としては… 嫁をもらったみたいだ と本人は思っている しかも極上の 「おいロージー!!」 「なぁに?夕食もうすぐできるよ」 「…ああ」 亭主関白でも敷いてみようか なんて思ってロージーを強く呼んでみても ご覧のとおり、さらりと笑顔で流されてご飯ができると言われたら 黙って待つしかなくなってしまう ようするに 惚れた弱み ムヒョはロージーに頭が上がらないのだ 今日だって将来の伴侶(!?)が心置きなくムヒョ…つまり自分のために(ここ重要) キッチンから漂ってくるこの香を放つ物を、忙しい中ではなく自分の事を思いながら作るため 事務所を早めに閉めたのだ 他にもまぁ様々な思惑はあるが… そんな邪な上司をよそにロージーはせっせとトッピングにかかっていた 勿論大好きなムヒョの事を考えながら ムヒョはジャビンを放り出し事務所の奥へ消えた 「ムヒョ!お待たせ!!夕食できたよ!」 ロージーの元気な声と共にテーブルに朝食が並べられていく 客用の無愛想なテーブルもロージーの手料理の前では温かい食卓となる 「ロージー…何だこの真ん中のスペースは?」 確実な予想を隠すように惚けるムヒョの本心を知らないロージーは 嬉しそうにキッチンからとっておきのモノを出してきた 部屋を包み込むようにチョコレートの香が充満する 「はいムヒョ!僕からのプレゼントだよ!!」 にっこりと笑ってテーブルの真ん中を陣取ったとっておきのモノは オペラ 華やかなフランスのパリ発祥の伝統的なケーキ 遠い日本の小さな町の一角の小さな事務所にも小さな幸せをもたらした 「ロージーにしてはムードの良いものを作ったナ」 「へへっ…でしょ?」 「じゃぁこれは俺からダ」 「え?」 ムヒョが突如と差出した一輪の花をロージーは受け取る その花の花言葉は小さな幸せ ムヒョの想いを示すのには申し分なかった 「!…ありがとう!!ムヒョ!」 小さなスミレを大切そうに持ったままロージーはムヒョに抱きついた ムヒョは幸せそうにロージーの頭を撫でた ムヒョにとっての幸せはロージーの幸せだから 「今日何の日か知ってたんだ」 「まぁナ」 「来年も一緒にいようねムヒョv」 「フン…当り前だロ」 夕日はいつの間にか沈み外は満点の星空だった ムヒョとロージーは少し冷めてしまった夕食を食べ始めた 2/14だけの恋人同士のひととき…幸せのハナが咲く fin | |
written by 青桐候也[Tic-Tac] 2007 |