dusk twilight dusk 皇国の守護者/微パラレル |
泣き声に先に気づいたのは新城で、つらられて笹嶋も足を止める。生垣の下にしゃがみこんで涙を流す少女を二人は見つけた。どうしたのかと問えば無言で自身の上を指差す。彼女には届かなかった位置に紙風船が引っかかっていた。笹嶋がいともたやすくそれを手渡すが、紙風船には枝の先で穴が空けられていた。泣き止まない少女に新城が金平糖を差し出す。笹嶋に促されて帰り道の屋台で姪へと買ったものだ。だが少女は受け取らない、兄が待っていると言う。兄と二人で遊んでいたら、風で紙風船が飛ばされてしまったと言う。紙風船は破れてしまった、兄が悲しむ、私だけ金平糖はもらえない、そう言って泣きじゃくる。其処まで聞き出して困り果てた新城の隣から笹嶋が助け舟を出した。三人でおにいちゃんのところへ行って、そして皆で金平糖を食べようと言う。いいのかと問い返す少女へほっとした笑顔で新城がいいと応える。破れた紙風船をそれでもしっかりと握り締めた少女は立ち上がって兄が待つという場所へ二人を導いた。其処は生垣からずいぶん歩いたところだったが、少女はまっすぐだとすぐなのだと言った。家々の裏手、空き地と見える其処に少女が兄と言う少年が居た。兄と言うには歳が近く、非常に似た顔をしているので双子かもしれない。彼は少女の握ったものに笑顔を見せたあと泣きそうな顔をして少女をぶとうとした。笹嶋はあわててそれを止める。そうしてすらすらと言う。実は紙風船を取るときに自分が破ってしまったのだ、今から新しいものを買っていては日が暮れる、詫びに金平糖、そして四人で別の遊びをしようではないか。よくもまあ、そう思いながら新城は傍観していたが四人でとの言葉に焦りを感じた。幼少期、一人でいることが多かったので子供が集まってする遊びが苦手なのだ。笹嶋の言葉にうなずいた少年へ金平糖を渡しながら内心少し後悔する。砂糖菓子をほおばって終わってから、二人の兄妹と二人の軍人は思いつく限りの遊びをした。といっても、兄妹はいつも二人だけで遊んでいるらしくあまりたくさんの提案をしなかった。もっぱら笹嶋が教える遊び。鬼ごっこ、かくれんぼ、凍り鬼、ケンケン、達磨さんが転んだ。少年は特に鬼ごっこが気に入り、これは何度も鬼を変えながら大変長く続いた。子供相手と手心を加えての事ではあるが、それがかえって大人二人を疲れさせる。だがそれは気楽な疲れであり、いつの間にか新城も笹嶋も楽しんでいた。少女は特に達磨さんが転んだを気に入ったようだ。鬼が振り返った時には様々な姿を作って静止し、自身が鬼の時は不規則なリズムで他を翻弄する。夕日のまぶしさに目を細め気の緩んだこともあいまって新城に鬼が回ってきた。だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ振り返る、兄妹が居ない。笹嶋も気づいて頭をかく。無言、影は長く二つ。帰ろうか、笹嶋が言う。そうしましょうと返事をした新城だが、彼はためらわず笹嶋の手を握る、僕はまだ鬼だ、そしてあなたは動いてしまった。 |