たちどまるひと / 織田軍
written by 榊枷欄
蝮の子は蝮でございます。
そう言って銃口を向けたとき上総介様は
たちどまるひと
女が戦場で生き残ることは難しい。
濃姫は女の手でも楽に扱える銃を手にした。元来男より女の方が血に強い。
殺すことに躊躇いは無かった。殺されることも覚悟の上。
敵から距離をとり、刀の届かぬ内に撃ち殺す。先を行く蘭丸を援護しながら着実に敵を減らす。
あの時まで濃姫の敵は一人だけだった。今はその一人のために戦場を駆ける。
「蘭丸君、危ない!」
「え?」
機関銃を投げ捨てて、蘭丸の前に駆け出す。腹に矢が刺さった。
「濃姫様!」
蘭丸が叫んだ。
「敵に集中しなさい、蘭丸君!」
矢は帯の上から刺さっている。痛みはあるが出血は少ないので大事にはならないだろう。
何より、今の間に囲まれてしまったことの方が問題だ。蘭丸はまだ良いが、濃姫は接近戦では圧倒的に不利である。
「いくわよ」
気合を入れて敵にむかっていったはいいが、銃で戦うには間合いが近すぎる。
濃姫は銃身で刀を受け、足を使って倒したところを順に撃っていた。しかしその間に他の者がまた接近してくるため距離をとることが出来ない。
女が戦場で生き残ることは難しい。
腕力の差が、体力の差が、濃姫の体に傷をつけた。
敵は際限なく襲ってくる。
右手の銃を叩き落され手首を捻った。思わずそこを左手でかばおうとした隙に左の二の腕を切りつけられる。
二丁とも地面に転がった。
ここで死んでなるものかと、睨み付けた敵が一瞬、赤い布で覆い隠された。
後に出来たのは屍の山。
踏み越えて現れる織田信長。
濃姫に歩み寄ると、刺さったままだった矢を無造作に引き抜く。
そしてどこにしまっていたのか、血まみれになった花を取り出した。
「女、」
そう言って花を差し出したとき、上総介様は
わ ら っ て い た か ら 、
花を贈る人々*織田軍
蘭丸君もちゃんと生きてますよ。