「あ、鰯雲が広がってる。」

放課後になり部活のないはすぐさま靴箱へ向った。
外へ出て空を見上げると鰯雲が広がっている。

「ん?」
「…え?あ、葉月くん。」

後ろから声がしては振り返る。
そこにはクラスメートの葉月珪が立っていた。

「今帰りなんだ。」
「あぁ。…ところで、鰯雲って…。」
「へ?うんあの白く小さい雲がうろこのように広がってるのを鰯雲って言うんだよ。」

葉月は空を見ながら呟く。
も再度空を見上げて言った。

「あれ…うろこ雲じゃないのか。」

葉月は首を傾げる。

「うろこ雲ともいうね。他にもさば雲とも言うんだよ。」
「……おまえ、物知り…だな。」

空を見ていた葉月は視線を戻し、を見て微笑む。
は葉月の微笑にドキっとした。

「そ、そうかな…//」

葉月を直視できず、は俯いて返事を返す。

「あぁ。」

顔をそらしたに疑問を持ちながらも葉月は続けた。

「…なんか…鰯が食べたくなってきた。」
「葉月くん鰯好きなの?」
「…いや、食べたことない。」
「…そうなの?」

食べたことないのに食べたいんだ。と思いは苦笑する。

「フライとかにしたら結構美味しいよ。嫌いな人も多いみたいだけど私は好き。」
「…そうなのか?」
「うん。あ、よかったら今度作ってこようか?」
「…あぁ、頼む。」

再度、葉月は微笑む。

「う、うん。頑張るね。」

は貴重なものを一度に何度も見てしまったと思う。
葉月の微笑に胸の内は高鳴ってばかりいる。

「葉月くん、よかったらその一緒に帰らない?」
「……そうだな、一緒に帰るか。」
「うん。」

葉月に言葉には笑顔になった。
帰路を並んで歩く。
歩くのが遅いに葉月は足並みを揃えて歩いてくれる。
その心遣いをはまた嬉しく感じた。

「鰯雲が出てるってことは近々雨が降るね。」
「だな。」
「休みの日に雨が重ならなかったらいいけど。」
「あぁ。晴れてる方がいい。」
「やっぱりそうだよね。」

些細な会話でもはずっとニコニコしている。
先ほどからずっと表情が緩んでいるを話しながら葉月は見ていた。

「……おまえ。」
「何?」
「…何かいいことでもあったか?」
「え?何で。」

葉月の突然の質問には首を傾げる。

「顔…緩んでる。」
「えっ!?」

葉月に指摘され、は顔に触れる。
私、表情にでてた!?
急に恥ずかしくなりの頬が上気していく。

「…赤くなった。」
「……っ!?!?」

葉月の言葉には動揺が隠せない。
どうして自分はこんなに表情にでてしまうんだろう。
自分自身が恥ずかしく思える。

「……大丈夫か。」
「大丈夫大丈夫。何でもないよ。」

アハハといって、は誤魔化す。

「……お前、好きか?」
「えぇ!?!?」

私の気持ちばれてる!?
は思わず辺りをキョロキョロと見渡した。

「…どうした?」
「いえ、そ、それは此方の台詞で。葉月くんこそいきなり何を…お、おっしゃるので。」
「鰯雲…好きじゃないのか?」
「へ?」

葉月の一言にからまぬけな声がでる。
葉月は以前様子のおかしいに対して疑問を感じていた。

「…い、鰯雲のことか…。」

葉月のことを聞かれたのかと思ったは思わず安著のため息をついた。

「他になにかあるのか?」
「い、いえ、何も御座いません。好きだよ、鰯雲。雨降られるのは嫌カナァともは思うけど、空自体は何か綺麗だし。」
「…だな。」
「…葉月くんも好きなの?」
「あぁ。おまえの意見…賛成。」
「……!」

今日何度目の微笑だろう。
こんなに葉月の微笑を見たのははじめてかもしれない。
たまに一緒に帰ってくれたり、休日たまに一緒に過ごしたりするけど。
あんまり…なかったような気がする。

「……また、顔緩んでる。」
「……いいの。嬉しいから。」
「…嬉しい?」
「うん、葉月くんと一緒に帰れて。」

そう言って笑顔を向ける
そしてそのまま歩き始める。

「……。」

ルンルン気分で前へ進んでいく
は葉月が先ほどの自分の一言に顔を赤くしていたことに気付くことはなかった。

「帰ろう、葉月くん。」
「あぁ。」

嬉しそうなを見て、葉月はまた微笑んで返事を返した。



Fin...



●○戯言
 初葉月くんドリームです。…なんだろう、何か間違えた気がする(何)
 テーマは「鰯」です。鰯といって連想したのが「鰯雲」でした。
 小さい頃から雲を見るのが大好きなので、楽しく書いたつもりですが…内容としては微妙かもしれない(苦笑)
 葉月くんの口調がまだちょっとつかめません。
 日常的なのとは別の話でまたリベンジしてみたいと思います。

 2006/03/01 茶屋蝶子