5月5日端午の節句。
その日、氷帝学園男子テニス部マネージャーのは機嫌が悪かった。
[鯉のぼり]
「屋根よ〜り〜♪って何で高いんだぁー!!!!!」
普段温厚な面をもつ彼女が部室内で大声を挙げて怒っている。
たまに何かを思っては彼女は様子がおかしくなり、暴走してしまうのだ。
「やけに機嫌悪いじゃねーか。」
「跡部。」
部室のドアを開けて入ってきたのは部長である跡部。
部室の外にまで聞えるの叫びに呆れたように聞いた。
「鯉のぼりがどうしたっていうんだよ、アーン?」
「聞いてよだって鯉のぼりって屋根より高いじゃない?」
「…それで。」
「屋根より高かったらあの口の中に入れないじゃない!!」
「……。」
の言葉に跡部の思考は止まる。
要するに、は鯉のぼりが高い位置にあるから、あの風になびく鯉のぼり口の中へ入れないというのだ。
「…あの中に入りたいのか?」
「うん。小さい頃からの憧れだったんだーvvv」
目を輝かせているに跡部ははぁっと深いため息をついた。
「今日学校くるときに鯉のぼりみてさー考えてたら何か腹たってきちゃって。」
「……そうかよ。」
もう上手く返答さえできない。
跡部は話を断ち切ろうと思った。
でもが止まることはなかった。
「でね、跡部にお願いがあるんだー。」
「……。」
「鯉のぼりの中一緒に入ろうよ!!」
「…アーン?俺様は入てぇと言った覚えがないんだがな。」
何言ってやがると言いながら跡部は眉を顰めた。
「えー跡部の力だったら鯉のぼりの中入るの簡単にできそうじゃん。」
「…まぁ、やろうと思えばできるだろうな。でも何で俺も一緒に入らないといけねぇんだ。」
「だって独りじゃ怖いじゃん。」
…あぁ、はこういう女だ。
部活前にして跡部はどっと自分の体が疲れたことに気付く。
「…ジローにでも頼めばいいだろ。」
「おぉ!それでもいいね!ジローちゃんならもっと楽しそう♪」
「アーン?ジローの方が楽しそうっていうのはどういうことだ。」
「だって跡部じゃ盛り上がりにかけそうじゃん。」
「そんなことねぇってこと教えてやるよ。」
跡部の一言にはニンマリとする。
跡部はの策略に上手くはまってしまった。
「じゃあ一緒に入ってくれるんだ。」
「まぁ、しょうがねぇな。」
「やったー!!!!」
満面の笑みで喜ぶ。
その姿に跡部も自然と笑みを零した。
「(変な女だが…それも含めて好きなんだからしょうがねぇな。)」
跡部のこの密かな恋をは知らない。
「(でも…鯉のぼりに入りてぇって…俺、何か間違えたか)」
承諾した後に一気に不安になる跡部。
後日、跡部家の力により、と跡部は屋根より高く風になびいている鯉のぼりの中に入って、恐怖の体験をしたという。
End.
2006/05/02 茶屋蝶子