備え付けの簡易ベットの軋む音があたりに響く。
薄暗い研究室で、何度目になるか分からない行為をしながら、テラザウラーは抵抗を続けていた。
「…ッ」
「我慢しなくていいんスよ?」
唇を噛み締めて、必死に声を殺そうとするテラザウラーに、「苦しいだけッスよ」と耳元で囁きながらタランスは薄く笑う。
「苦しいのがお望みならそれでもいいんスけどね」
言いながらタランスは己のモノをギリギリまで引き抜いて、一気に突き上げた。
「…あぁぁっ!!」
あまりの衝撃にテラザウラーは、たまらず嬌声をあげる。浅い呼吸を繰り返しなら、キッと相手を睨みつけると、憎らしいほど満足気な顔があった。
「…今日の、ユーは…いつもと、違う、ザンスね…」
途切れ途切れに、しかし、はっきりと言葉を紡ぐテラザウラーに、まだそんな余裕があるのかと、内心で思いながら、タランスは口角を吊り上げる。
「へぇ…何時もより感じるんスかぁ?」
僅かに腰を動かせば、それだけで感じるのか、呼吸とも声ともとれない音を洩らした。
「はぁ…ぁ、タラン…ス」
挿入を繰り返したそこは、赤く腫れ、収まりきらなくなったタランスのモノが溢れて太股を伝って、シーツに染みをつくっていた。
タランスはテラザウラーの足を持ち上げると、肩に担ぎ、覆いかぶさるように腰を打ちつけた。
「…ひぁっ、あ…な、に…」
「…今日」
何があったのか、とテラザウラーが聞く前にタランスが遮った。同時にチッと舌打ちが聞こえ、テラザウラーはタランスの顔を窺い見ようとしたが、伏せられて見えなかった。
「…タランス?」
暫くの沈黙の後、タランスは律動を激しくしながらうめくように言った。
「んぁ、…あ、はぁ…ぅ」
「…今日、ワスピーターに」
聞き慣れた同僚の名前を出され、テラザウラーは眉をひそめる。
途端、タランスは動きを止めた。テラザウラーが視線を送るとタランスは顔を上げており、自分を睨むように見ていた。
「キス、させたデショ?」
「……」
呆気に取られ、返せずにいると、言い訳を考えているように見えたのか、タランスは、一層、眉間の皺を濃くし、乱暴に腰を打ち付けると、テラザウラーの中に己のモノを放った。
「…変態馬鹿グモ」
かすれた声で呟けば、すでに着替をすませたタランスは、椅子に座りながら言い返す。
「テラザウラーが悪いんスよ。蜂にキスされて、嬉しそうに頬染めてんスから」
疲れすぎて反論する気もなくなったテラザウラーは、はぁぁぁと長い溜め息を吐いた。
実際のところ、テラザウラーはワスピーターの仕事を手伝っただけだった。「仕事が終わらないブーン」と嘆くワスピーターを見るに見兼ねて、手を貸してやったのである。半分以上を自分が片付けて、やれやれと解放感に浸っていたら、お礼とキスされたのだ。頬に。何処かの馬鹿グモのように他意がある訳ではない。「次からは気を付けるザンスよ?」と注意をして、それだけだ。
今だ不機嫌そうなタランスを見遣り、テラザウラーは、はたと気付く。
「…嫉妬?」
小さく呟いただけなのに、タランスの眉がピクリと動き、不格好なサングラスの奥の瞳が細められた。
顔色こそ変わらないが照れている、らしい。かなり分かりにくいが最近分かったことだ。
「ユーがねぇ。以外と可愛い………カ?」
いつの間にか近付いていたタランスが、テラザウラーの頭の横に両手をつき、可愛いげのかけらもない意地の悪い笑みを浮かべていた。
「ど、どうしたザンスカ?」
「まだ、元気そうッスね」
そう言ってタランスは、熱の冷めない体に触れる。
「なっ、ちょっと、もう無理ザンス!!」
全身冷や汗をかきながら、テラザウラーは必死の抵抗を試みる。
「チミの仕事が溜った時は、アタチが手伝ってあげるッスよ」
「仕事を溜める根元が何言ってるザンスカ!!」
「二人の方が早いッショ?」
「…最悪ザンス」
END