目の前にはレスキューロボが座っていてのんきにコーヒーを飲んでいる。相談があるなんて真剣な声で電話してきたものだからせっかくの休日、家族サービスを諦めてみれば何だこれは。
「兵悟が、」
悪気も何もまったくないのがわかっているからこそわいてくる殺意と言うものもある。
傷心のティラミス
「んだよ、惚気たかっただけか。あ?」
兵悟が兵悟で兵悟に。レスキュー以外にも興味を持ち始めたかと安心していたら今度はこれか。こんなことになるなら兵悟をトッキューになんか行かせるんじゃなかった。
「のろけ?事実を話しているだけだが。坂崎も兵悟が心配だろう?」
そりゃあ今は昔と違う心配が多いよ!貴様のせいだ馬鹿野郎。あーもう煙草5本目だよお前は俺の肺と懐を心配しろ。いつまで話せば気が済むんだ、お前のことを無口だと思ってるやつらに見せてやりたいよレスキューロボから兵悟ロボに変わったこいつの姿を。
「あぁはいはい。心配だよ。お前みたいなロボに目をつけられちまって。」
「まあ俺が幸せにするから心配するな。」
「…そうしろ。で、肝心の相談ってのは何だ?」
嗚呼いい加減帰りたい。と言うかこの場を離脱したい。不謹慎だが、こいつの相手をするより潜って要救助者相手にするほうが何万倍もいい気がする。
「追い出されたんだ。」
は?もしかしてこれは、
「『真田さんのばか!出てってくださいっ』と言われて」
犬も喰わない類の話か!?
「どうしたらいい?」
レスキューの神様俺を助けてください見捨てないでくださいとても悲しかったんだと普段と変わらない顔で言うこいつをどうにかしてくれ畜生!
「……理由は何だ理由は。相手は兵悟だ、お前よっぽどのことしたんじゃないのか?」
6本目も終わった。7本目の煙草に火をつけたは良いが、これ吸い終わるまでに俺はこいつから解放されるのだろうか。
「何もしていない。」
「んなわけあるか。追い出される前に何があったか言ってみろ」
どうせ惚気の嵐なんだろうがここで耐えないとどうにもならないんだろうな。
「そうだな。休みが重なったから、昼過ぎに兵悟の部屋に行った。そのままのんびりすごして、俺が晩飯を作って夕食。兵悟が片づけをしてくれるというから頼んで、俺は先に風呂に入った。」
ああはいはい。特に痴話げんかの理由はなさそうじゃないか。
「入れ替わりで兵悟が風呂に入った。出てきたときに下着一枚だったものだから、誘っているのだと解釈して布団の上に押し倒し上から覆いかぶさって水滴の残る兵悟の肌を」
「まてまてまてまて!」
ブ ツ ブ ツ 出 そ う !
何でお前らの夜の詳細を聞かされないといけないんだ。ノロケとか言うレベルじゃないだろ。
「おおまかでいい、おおまかで。」
「2回ほどヤッたら、兵悟が明日仕事だからと嫌がってな」
まさかお前、
「やめてやらなかったのかよ!」
「ああ。」
酷い…この男はこんなに酷いやつだったのか。
「潤んだ瞳で口元には俺の精液をつけながら『やめてください真田さん』なんて言われてやめられるか?耳元で嫌かと聞いたら震えながら『でもっ…』と返してきて」
「わ゛ーそんな説明いらねーよそれで次の朝に追い出されたっつーんだろ何でいきなりそんなに細かく言うんだよ嫌がらせかこらぁ!」
「自慢だ。」
真顔で言うな。7本目の煙草も灰になっていく…俺も灰になりてぇよ嫁さんと子供残してなんていけないけど。あ、おい甚携帯なってるぞ。しかも着メロ?おいおい前まではピリリとかじゃなかったか?
「もしもし。昨夜はすまなかった。俺が悪かった。ん?ああ。そうか、わかった。じゃあな、愛してるぞ。」
うわぁ…マリアナ海溝に沈みたい気分だ。しかも昨日の話だったのかよ全部!
「兵悟がケーキを食べたいというから買って帰る。相談に乗ってくれてありがとう坂崎。じゃ、時間とらせてすまなかったな。」
ってええぇぇぇぇお帰りですか隊長さーん!?せめて俺の休みを返せ!