誰もが夢見て
その全てに魅入られて
それでも
手には入らない
手に入れれないからこそ…
幻
幻の明日
「もぅ!ムヒョったら!!パジャマ脱いだらそのままにしてぇ!!ちゃんとたたんでって言ってるでしょ?!」
「ヒッヒうっせーな!人が起きた頭からぁ…それもおめぇの仕事だロ?」
「まったく〜ムヒョったらぁ」
「おいロージー腹減った」
魔法律を執行すると決まってムヒョは眠りにつく
それは深く
真っ暗な闇の中を漂う感覚だ
何も無い
ただ時間の流れだけを微かに感じる
それが当たり前の事なのだとムヒョは思っていた
そして
最低限の物しかない事務所のベットで目覚める
それでも
そこは闇のようにシンと静かで
変化の無い1人の日常がある
当たり前…当然
その現実をムヒョは悲しむわけでもなく
ただ受け止めていた
「あっそうだよねごめんムヒョ何か食べたいモノある?」
「あぁ?…何でも良い」
「何でもってそんなぁ」
「チッ…全く面倒だナ…」
それが
いつの頃からか
執行後の深い眠りの闇の中に
温かい何かが現れ初めた
得体の知れないそれは、最初ムヒョの安眠の妨げ以外何でもなかった
見返りを求めてこない優しい温かさ
闇が少しずつ遠くなっていくを感じながらも
それが決して嫌という事はなかった
それは
眠りにつく度に色濃くなり
心地良さを増していった
「面倒って僕はムヒョの好きな物を美味しく…」
「…ロ−ジー」
「?何」
「おめぇの作る飯はうめぇ」
しかし
ムヒョは眠りについても
しばらくその何かを理解しないままほったらかしていた
心地良い何かを手放したくなかったが
留める術を見出せなかったから
ツカノマノ
何か≠ノよる心地良さ
ソレハエイエンデハナイノナラ
俺は心を開くまい
「へ?」
「おめぇの飯はうめぇからナ何でも俺は食べれるんダ!!これで満足カ?」
「…」
「…」
でも今は違う…そうムヒョは思えた
「…ムヒョォォォ!!」
「なっ!!おい抱きつくナ!!」
「へへっ///だぁい好きぃ」
「ふんっ当然ダ…ヒッヒ」
あの温かい何かが現れたのはいつの頃からか?
満面の笑みで自分に好きと言ってくれる助手が来てから
事務所には物が増え目覚めると決まって助手がいて光が差した
眠りの中の深い闇でのあの温かい何かは?
眠っていても待っていてくれる心から心配してくれる助手の優しさ
喜怒哀楽…感情豊かな助手との毎日は1日とも同じ日は無い非日常
ロージーがムヒョに知らずのうちに与えた
夢のようで
誰をも魅入らす
温かい何か
それは
幻
にも近い
ムヒョに一番必要なモノ
その何かを…幻≠留める術は?
「美味しいご飯作ってあげるからね♪」
「ロージー」
「なぁに?」
心の底から
愛して
愛して
愛して
大切にする事
「愛してる」
ムヒョが手に入れた幻
彼が眠りにつく度に…最近思う事
幻の中で眠るなら
迎える明日は
幻の明日
それでもそれは
確実に現実で
幸せで
満ち足りる
永久に迎え続ける幻の明日
Fin
青桐候也
幻の明日。