息抜きをしたのは / ギャグマンガ日和 (飛鳥)


今日の予定は太子の一言で狂った
妹子!!ピクニックに行くぞ!!
は!?
最近お前は働きすぎて私のことを全然構えてない!
はぁああ?!
私はそれに嫌気が差してる
ふざけないで下さいよ太子!まだ処理してない案件が山のように・・・それに昨日から引き続き会議も
摂政が行くったら行くんだぁあああ!!
そして、太子に手を取られ何故かお重を持たされピクニックに行く事が決定した



「太子ー!!余り遠くに行かないでくださいよー」
「遠くに行くなって私は犬か!!」
「犬とは言ってないですが、まぁ遠くはないですね」
「なっなんだとコラァ!!私は摂政だぞぃ!!」

爽やかな風が吹き新緑が綺麗な季節の野山に太子と妹子はいた。
太子はやたらと走り回ってはしゃがみ、時々オァマァ−と転んでいた。そんな太子を気にしつつ気にもせず
妹子はゴザを敷きツナおにぎりの入ったお重とお茶の用意をしながら、風が時折運んでくる季節の香を楽しんでいた。
朝のやり取りはあったものの、最近仕事詰だった妹子は、太陽が温かく身体が気持ちいいと喜んでいるなと感じていた。

「太子ー!用意できましたよー!!」
「待て妹子ーちょ、痛っ!何かチクチクするー」
「はぁ、何やってるんですかアンタは」

凄い勢いで転がる太子を見て、妹子は盛大な溜め息をつきながら太子のもとへ歩いていった。
がその足取りはどこか楽しそうで軽かった。

「痛くて死んでしまいそうだ私の肌がガサガサになってしまう」
「こんな、ひっつきむし位じゃ死にませんし、アンタの肌は元々ガサガサしてます」
「な!私は全身ツルンツルだぞ!!」
「あーもー動かないでくださいよ!!このノーパン!!」
「私の主義を愚弄するなコノヤロー!!」

こんなやり取りを続けること約6回。温かいと感じていた太陽は高く上がり少々暑い位になっていた。
疲れ果てた二人は寝転がり、草の香に包まれ近くの池に足を浸し涼をとっていた
妹子はぐでぇと本気で疲れた顔をしているが満足げな太子を見て太子に知られないように目を閉じて笑った
このような行為が太子の日頃の『太子』の疲れを癒す事を妹子は誰よりも・・・否、妹子だけが知っていた。
そして、同時に自分自身も仕事から少し遠ざかることができ、それを太子も分かっている事も…

「太子。陽も高いですしお昼にしませんか?」
「んー」

気持ちよさそうにしている太子も眼を閉じていた
妹子はソレを感じて暫く太子を待つ事にしたが、その考えはすぐに太子によって消されるのだが
妹子はもう一度眼を閉じた

「花をあげるよ妹子」
「何の花ですか太子?」

不意に言われたので妹子は何も考えずに起き上がった
珍しいことだなと妹子は考えた。何故なら太子は花を手折る事を良しとしなかったからである。
よく散歩と称してこうして、仕事をサボりに摂政権限で付き合わされる時は必ず野山や川辺などの自然が豊かな場所だった。
自然の中で生かされていると感じる瞬間、太子は身分を忘れて一人の人間として呼吸ができると言っていた。
人の都合で花を手折るものではない・・・そう常日頃言っているからだ。
そんな太子が花を?
て言うか太子がいない・・・

「妹子受け取れ!!」
「わっ」

一瞬にして妹子の視界が何色のも色に染まった







「君に花を贈るよ妹子」
「花びら?」

いつの間に集めたのか太子のジャージから花びらが出されては妹子に舞い落ちてくる
少し萎れてたり破れてたりしてる物が多いのは、それが自然に還ったものだからだろう。

「きれいですね太子」
「綺麗だろ?」
「えぇ・・・とても綺麗です」
「君にそう言って貰えると私は嬉しいよ」

池の辺に花びらが浮き漂う、草原に落ちては風に乗りもう一度舞う
妹子に贈られた花の先には

「太子」
「ん?」
「ありがとうございます」
「うん」

にっこりと笑った太子がいる
妹子が忙しい事を誰よりも知っていて、妹子よりもはるかに忙しい人
カレー臭するくせに、こういう所で優しい人

「さぁ、お昼にするか!!」
「そうですね」
「妹子」
「はい?」
「また来ような」
「・・・はい」

貴方が仕事をしたらと続けようかと思ったが、今日は素直にやめておいた。
たまには、ね。

written by 青桐候也(Tic Tac)