紙切れ。

まえがき  原型  成型

* 13.02.18
 およそ六年経った。久しぶりにサイトを眺めていると不思議な感じがする。まるで風化していない、腐食していない風景が広がっている。その一方で、巡回していた多くのサイトは、そのほとんどが消えてしまっている。悲しいとは思わなかった。消滅したこと、その事実をそのままの形で納得している。きっと六年前の僕、あるいは私なら、周りのサイトが消えていく様子を見て打ちひしがれたり悲しんだりしたことだろう。六年という年月は、そんな気持に、これっぽちもさせることもないほどに、長く、長いのだなと思う。
 きっとこの場所は、サーバーが稼働し続ける限り、サーバーの管理人が消去しない限り、このまま残るのだろう。自分で消去するつもりは、今のところない。壁に刻まれた文字みたいに、風化することも、すり減ることもなく、このままの形を維持しながら、この色を保ちながら残っていくのだろう。
 ほんの数本のネットワークしか繋がっていないこんな場所に、ほんの偶然にもたどり着く人がいるという奇跡を、僕は、あるいは私はまだ信じている。そしてそんな奇跡が、まぎれもなく実際に起こっていたという事実は、今でもこの心をときどき震わせている。


* 07.07.31 成型






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