もしもわたしが死んだら

あなたはわたしを忘れるのだろうか


もしもぼくが死んだら

きみは他のひとを愛するのだろうか




燃え上がる想い




想いが交錯する。
円を描くように、虹を駆けるかのように。

遠くでざわめきがする。
彼女と彼が愛し合った叫びが、こだまするかのように。


「どうしてだろうね。あなたにもわたしにも、恋人がいるのに」
「どうしてかな。なんだか可笑しいね」

二人は笑いあった。いつでもその合間に、永遠を見ることができた。

それなのに。

「わたしね、もしわたしが死んでも、あなたが悲しむ想像ができないの。どうしてかしら、わたし、あなたのこと、多分ほとんど知っているのに」
「やっぱりぼくたちは似ているね。ぼくもなんだ。ぼくが死んでも、きみはきっと泣きもせずに他のやつのところへ行くんだろうって、思ってしまう」

なぜ?

二人は口を揃えて言った。
彼女も彼も、お互いのことをよく知っていたし、二人はよく似ていた。だけれどいくら考えてもわかりっこない。


「いつか忘れてしまうのかしら」
「ぼくはきみを、きみはぼくを」
「そうなったらいやだわ」
「ぼくもだよ」

二人はきつく抱きしめあった。もはや二人の瞳に映るのは、お互いだけだった。

いくら抱きあっても厭きなかった。
いくらキスをしても離れるその瞬間が名残惜しかった。
いくら名前を呼んでも呼ばれてもまだ足りなかった。

それはまるで、二人がひとつであるように。


ひとつであるものが、ふたつであるときのことを想像するなんてできない。ましてやそれが離れてしまうことなど。


重ねた手のひらでお互いの頬に触れると、その温度はまるでおんなじだった。
彼女と彼は、またそこに永遠を見つける。




fin.



040605
10分もかからずに書けました。