【宿題のない夏休み】
児童、生徒、学生であった頃は宿題、課題、レポート等常に積み残しの何かに後ろめたさと切迫感に追い立てられていたように思う。
就職してもそれは変わらず、締め切り、期限、そして新しいアイディアをひねり出すことにせっつかれていた。大きな夏休みがない上に、日々宿題に負われてるようなものだった。
長い夏休みがありなおかつ宿題もない、などというものは「夢」であった。
紆余曲折の後、現在。カネもないが宿題もない生活。
4ヶ月以上に及ぶ夏休み。それはまぁただの無職期間なのだが。
いま夢は叶ったと言えよう。
で。念願の「宿題のない夏休み」に何をしてるかといえば、何もしていないに等しく。日々、映画を観たりうたを聴いて過ごす。海で泳ぐ。散歩がてら近所の図書館分室で本を借りてくる。たまに街やイベント事にも出かけるがたいていは部屋に巣ごもっている。
高知で暮らし始めて4年になるが近所の図書館に行くようになったのはこの夏が初めてだった。その4年間通っていれば全部の本を読み切ってしまっていたかもしれないほどの小さな図書館。受付のお姐さんは通ってくる全員と顔見知り?ってくらいの小学校の図書館みたいなところ。
ある日、借りる本を当てもなく探していると、小学生の女の子たちの大きめのひそひそ声が耳に入ってくる。静寂の緊張感でもなく雑音の鬱陶しさでもないゆんわりしたその声・空気の振動の感じはとても耳ごごちがよい。
二人でテーブルの本を囲んで性格診断のような項目を読み上げつつ一問一答を繰り返している。
「Q:ずっとこどもでいたい?」
「A:えー、あたしはやだな。だってお酒のみたいもん」
受付のお姐さんも思わず笑いながら突っ込みを入れてる。
わしも背中でそのやりとりを聞きながらにやにや。
さすが酒の国・土佐の高知と言うべきか。少なくとも彼女らの周りには酒で醜態をさらす大人はいないと考えればよいのか。
願わくば、よい人とよい場でよい酒と出会って欲しいものだな。
そのためにもわしはよい酒を仕込みたいものだな。
これは宿題だろうか。否、永遠の命題か。
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