「アゲハ」swallowtail butterfly 夕刻。上り電車で西荻窪駅に滑り込む。 階段を降り切ったところ、改札の手前。 黒いアゲハ。 こんなところに蝶がいること自体珍しいのに。 とても綺麗な紫に透けるような黒いアゲハ蝶。 ひらひら。 ひらひらひら。 僕が指をそっと差し出す。 近づいては離れ離れては近づく。 でも決して指にとまることはなかった。 否。僕の根気負けなのだ。 別に急いでいるわけでもないのに。 帰宅途中の勤め人その他大勢の人々の流れが気になったのだ。 空腹のからだに耐えられなかったのだ。 ただそんなことにはお構いなしに。 アゲハはひらひらひら。ひら。・・・ 僕の頭の中ではアゲハという娘の映像とアゲハといううたが流れる。 [00.07.19wed]