「野戦の月を観た」THE MOON of FIELD OPERATION 現実は。音を伴って横を走り抜けてゆく。 現実は。むき出しの鉄筋と足場でカタチをなすつくりかけのビル。 現実は。得たいの知れぬ化学タンク群。 現実は。立入禁止の札と金網フェンス。 現実に包囲された地。 雑草呼ばわりの草々が一面に拡がる野。 時空と生死の交叉する原。 取り残された未整地の聖地。 ポツン。と。 しかし。 誇らしげに闇に浮かび闇に融ける半円球の三角砦。 境界線は曖昧だが結界に隙なし。 その夢は。楽団と共にケタタマシク揺さぶりをかけてくるのだった。 現実の方がよっぽど静かな夜だった。 起きろ! 夢なのに。そんなこと言っていいのか。 ところで。 この列車はわたしを何処に運ぼうというのだ。 出口は左側らしい。乗り換えのアナウンスが呪文を唱える。 が。 一体何に?現実に?夢に? 「月夜の晩ばかりじゃねーぜ」 大音量の静寂のなかで一人ただ突っ立ってる。 [99.11.07sun]