「闇と耳」Ears and Darkness 真っ暗。まぁーーーーっくら。 自分の手足すら見えない森の中。 目を閉じてるほうが明るく感じるほどの闇。 暗闇の主にあいさつしてから 缶ビール片手に山のてっぺんまで夜の散歩。 なぁーーんにも見えないから 耳と皮膚感覚だけを頼りにして歩くあるく。 てっぺんへはずっと段が続いている。 2歩あるくごとに段差を蹴飛ばしながら 位置と方向を確認する。 段差に直角に進んでゆけばよい。 音はすっかり闇に吸い込まれてしまっているから 耳の役目は空気の振動から場の密度を感じること。 密度の濃淡を選んでゆけばよい。 しゃがみ込んでビールをゴクリ。 ビールはのどに吸い込まれ、ゴクリは闇に吸い込まれる。 このビールがなくなる頃たぶん辿り着けるだろう・・・ [98.06.27]