「漫画を文字だけで読んでみるの巻」from KAIJI 福本伸行「カイジ」(ヤングマガジン)より 『希望』 いつも・・・・一本の道を想像するのだ・・・・ 暗く・・・・視界を殺す濃霧の中 足元にほの見える一本の道 他に何もないので 仕方なくその上を行く・・・・ ふと・・・・・・周りを見渡すと・・・・ 虚空に無数の光りがあり 皆のろのろと前進している・・・・前進しつつ・・・・ ふ・・・となんの前触れもなくつい消えたりする・・・ その時・・・・ 理解する 直観的に・・・・ (そうか・・・・そういうことか・・・・) この道は死へと向かう一本道 周りの明かりはおそらく人・・・・オレの心にきっと届かない・・・・ 世界中の人・・・・57億の民・・・・ これが・・・・この状況がこのオレのいる世界だ 全ての飾りを取ればそういうことだ・・・・ 天空を行く一人一人・・・・ 57億の孤独 [あかり]・・・・!! 全ての人間に手は届かない 触れられない 離れている・・・・離れている・・・・全て・・・・ 遠く離れている・・・・ できることは・・・・ 通信・・・・ 通信だけ・・・・!! 闇の中を尽きることなく交差する言葉たち・・・・ 繰り返される通信 その無限のやり取り 不確かで・・・・ 心もとないその言葉たち いくら熱心に語りかけても それで相手が変わるとは限らない 通信は基本的に一方通行だ 本当に自分の心が相手に届いたかどうかは 誰もうかがいしれぬ 返信があったとしても どこまで理解しての返信やら・・・・ たぶん半分も理解していないだろう しかしそれで仕方がない 通信は通じたと信じること 伝達は伝えたら達するのだ それ以上を望んではいけない・・・・ 理解を望んではいけない・・・・!!   「大丈夫かっ・・・・・?」   「だ・・・・・大丈夫・・・・・大丈夫だっ・・・・・!」 そう・・・・ 理解は望めない 真の理解など不可能 そんなことを望んだら それこそ泥沼 打てば打つほど 焦燥は深まり孤独は拗 [こじ]れる そうじゃない・・・・そうじゃなく打とう・・・・! 無駄ばかりの誤解続き 人間不信の元 [もと]・・・・ 理解とは程遠い通信だが しかし・・・・ 打とう・・・・! あるからっ・・・・! 確かに伝わることが・・・・ひとつ・・・・!! 温度・・・・ 存在・・・・! 生きてる者の息遣い・・・・ その・・・・儚 [はかな]い点滅は伝わる・・・・!    「在 [い]るかっ・・・・!?    在 [い]るかっ・・・・!? そこに・・・・」    「在 [い]るっ・・・・・!    在 [い]るぞっ・・・! 在 [い]るっ・・・・・!    在 [い]るっ・・・・・!」 オレは・・・・ 奴を救えない・・・・・・ 奴もオレを救えない・・・・ 絶望的に離れ離れだ・・・・!  なのに・・・・ なんだ・・・・? この温もりは・・・・! 胸から湧いてくる・・・・この温かさ・・・・ 感謝の気持ちは・・・・ 奴が・・・・奴がただ・・・・そこに在 [い]るだけで・・・・ 救われる・・・・! 奴が目の前にいない その寒々しさを 考えたら・・・・ 今・・・・見えるその存在はまさに救い・・・・! 希望そのもの・・・・! (そうか・・・・ そういうことか・・・・!) 分かれてなかったんだ・・・・ 希望は・・・・夢は・・・・人間とは別の何か・・・・ 他のところにあるような気がしてたけど・・・・ そうじゃない・・・・! 人間が・・・・人間がつまり・・・・ 希望そのものだったんだっ・・・・!    がんばれっ・・・・・!    オレがここに在 [い]る・・・・・!    オレがここに・・・・・    ここに在 [い]るぞっ・・・・・!    同じ苦しみ・・・・・    同じ道程を行く者が・・・・・    ここに・・・・・!    ここに在 [い]るっ・・・・・! [98.02.14]