「霧想家の夢」white out なぁーんにも見えない。でも明るい。月が裏側から照らしているから。真っ黒 い闇ではなく、真っ白い闇。自ら光を発している者だけが存在する世界。全て の境界線は拡散して曖昧。きっとこれが雲のなかを歩くときの視界。白い壁の 向こうから突然人が現れ、すれちがう。振り返ると既に消えている。本当にあ の人が存在していたのか、確信が持てない。この世界にはもう僕しか居ない、 のかも知れない。かと思うとまた誰かがふっと目の前に現れ、消える。なんだ かわくわくしてくる。前後左右上下すべてまっしろ。手をぐるんぐるん振って みてもなにも変わらない。ははははは。世界の終わりがこんなふうにホワイト アウトしていくんなら悪くない。 [97.12.22]