「ヒーロー」hero  ヒーローへのあこがれは一体なんだったんだろう。華々しい登場のしかたか。 大活躍の場面か。始めはそうだった。確かにその恰好や動きをまねることでい つかヒーローになれる気がしたんだ。やっとうまくまねることができるように なる頃、最終回を迎える。ヒーローには誰も追い付けないような仕組みがある んだ。いくつものヒーローにあこがれているうちにヒーローのカッコ良さはそ の去り方にあったことに気が付くんだ。ヒーローは登場した時からすでに去っ てしまう宿命を背負っているんだ。  僕はいつしか頻繁に旅に出掛けるようになり、引っ越しを繰り返す生活をす るようになっていた。それはもしかしたら去り方を試行錯誤しているのかもし れない。僕はヒーローにあこがれ、ヒーローになろうとしているのかもしれな い。僕がヒーローになれたかどうかは僕が死んだときに初めて判る。 [96.04.21]