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Hello, my angel

「お父さんがね、来週から海外出張があってね」

春休みを目前に控えたある日の夕食時、お母さんからいきなりそんな事を切りだされた。

「今回はお母さんも付いて行こうと思ってるんだけど……」
お母さんが申し訳なさそうに言った。
「うん、たまにはいいんじゃない?」
おかず唐揚げに箸を伸ばしながら、何の気なしに言う。
お父さんの出張はそんなに珍しいことじゃないし、お母さんがたまについていく事もあったし、私も小さな子供じゃないからちょっとの間の一人暮らしを満喫できるかなぁ……なんて楽観的に考えていた。
「それで、何日くらいなの?」
そう言ってお味噌汁を口につけようとした瞬間。

「シンガポールに1年くらいかな」

そう言ったお父さんの言葉におもいっきりお味噌汁を吹き出してしまった。



・・
・・・


『長い間女の子一人だと心配でしょ。私達がいない間はお兄ちゃんの所にいきない』

両親にそう言われた私は、仕方なしにお兄ちゃんの住んでいるマンションに住むことになった。
いきなりの事に動じることなく、二つ返事でOKを出したお兄ちゃんは……流石というか何と言うか。

私のお兄ちゃんは大学生になった頃から一人暮らしをしている。
と言っても、実家から歩いて30分もかからない所に住んでいるから、しょっちゅう家に帰ってきているんだけど。
私もよくお兄ちゃんの所に勉強を教えてもらいに行ったりしてるけど、あそこに暫くの間住むっていうのは、何だか不思議な感じ。

そんな事を考えてながら歩いていると、お兄ちゃんの住んでいるマンションの目の前まで来ていた。
改めて、近い所に住んでいるなぁー…と感じた。


由宇!」
私を見つけたお兄ちゃんが、大きな声で私の名前を呼ぶ。
笑顔でぶんぶんと大きく手まで振ってる。
お兄ちゃん、なんだか大きな子供みたいだ。
それを見ていたら、なんだか私まで嬉しくなってきて、思わずお兄ちゃんにそばまで駆けていた。

「お兄ちゃん、わざわざ外で待ってたの?」
「んー…由宇が来るのが待ち遠しくってなぁ」

お兄ちゃんは本当に嬉しそうな顔で言う。
何と言うか……ちょっと大げさだなぁって思う。

「今日からお前と二人暮らしなんだよなぁ」

しみじみとしたようにお兄ちゃんが言葉をもらす。
あ、なんかちょっと涙目だ。

「これから兄妹仲良く、協力しあっていこうな」


満面の笑みでそう言ったお兄ちゃんに答えるように、私は大きく頷いた。